マンション管理組合を運営する理事の方々は、日々さまざまな悩みを抱えながら業務に当たっていることでしょう。専門知識や経験がないことで、壁にぶち当たることも多いのではないでしょうか。
そこで頼りになるのがマンション管理士の存在です。本記事ではそんなマンション管理士の選び方を解説します。マンション管理士の契約形態や費用についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
相談するマンション管理士の選び方
早速、相談するマンション管理士の選び方を紹介します。マンション管理士を選ぶときのポイントは以下5つです。
(1)コミュニケーション能力が高い
(2)専門性が明確かつ専門外の人脈がある
(3)実務経験が豊富にある
(4)失敗体験を乗り越えている
(5)料金の目安が明示されている
順に詳しく見ていきましょう。
(1)コミュニケーション能力が高い
マンション管理士に的確なアドバイスをしてもらうためには、しっかり話が伝わり分かりやすく解説してくれるなど、スムーズにコミュニケーションがとれることが重要です。
また、単に話がうまいというだけでなく、場の空気を読んで話せるかどうかもチェックポイントになります。たとえば、議論が散漫して軌道修正しないといけない場合など、ここぞという時に割って入って発言できる人です。
マンション管理士はあくまでもサポート役です。意見を主張しなさすぎるのも困りますが、場を引っ張っていこうというリーダー的な存在になるのも違います。
マンション管理士としての役割をわきまえて、発言や立ち振る舞いができるコミュニケーションの高さが求められます。
(2)専門性が明確かつ専門外の人脈がある
マンション管理士資格を持っている方全員が、同じだけの知識を持っているわけではありません。これまでの職歴や経験などにより、マンション管理士によっても得意な分野が異なります。
専門としている分野が明確で、得意でないことはその分野に精通している専門家に繋げるネットワークがある方に相談しましょう。どの分野に精通しているかも大事ですが、できないことをできないと言えることが大切です。
マンション管理士への相談内容は、多岐にわたります。「一通り何でも自分でできる」という方は一見頼りがいがありそうですが、その分野に特化している専門家に比べると知識が浅く、間違った判断をしてしまうことがあるため注意しましょう。
(3)実務経験が豊富にある
マンション管理士は定年後に働ける仕事として、資格をとる方も少なくありません。マンション管理士試験に合格して登録すれば、誰でもマンション管理士を名乗れるのです。
業界での経験がなく資格だけ持っている方と業界経験が長い方では、マンション管理士としてできることがまったく異なります。実務経験が豊富にある方なら管理組合に寄り添った的確なアドバイスをしてもらえるでしょう。
ただ、業界経験がなかったとしても、自身のマンションで理事や修繕委員をやっていて、当事者として実際の現場を経験している場合は、親身になって対応してもらいやすいです。
(4)失敗体験を乗り越えている
頼りがいのあるマンション管理士か見分けるには、素晴らしい経歴や実績も大切ですが、多くの失敗を体験し乗り越えてきていることもポイントです。失敗を乗り越えた分だけ、マンション管理士としての活動に経験から得たノウハウを活かせます。
管理組合の定期総会では、区分所有者から手厳しい質問がくることも少なくありません。これまでたくさん悩んで考え抜いてきた方のほうが、うまく対応するスキルが身についています。
失敗体験を聞いたときに答えられない方は、運よく厳しい区分所有者にあたらなかった、または厳しい居住者としっかり向き合ってこなかった可能性もあります。
問題解決への糸口を見つけてくれるかどうかは、失敗体験をどれだけ乗り越えてきたかで判断できるでしょう。
(5)料金の目安が明示されている
マンション管理士を雇用する場合、契約形態に応じた料金が発生します。マンション管理士にかかる料金は、契約内容やマンション規模によって異なります。
希望の形態に応じて、その都度、見積もりを作成するケースが多いですが、目安となる料金が明示されているかホームページなどで確認してください。
目安の料金が明示されていると、見積額と比較してその金額が適正なのか判断するひとつの基準になり、金銭面で安心して依頼できるでしょう。
マンション管理士に依頼できること
マンション管理士には、マンション管理士にしかできない独占業務はありません。理事会の活動で悩んでいるときに専門的知見をもったプロが、管理組合側のアドバイザーとしてサポートするのが基本的な業務です。
おもに以下のような業務をマンション管理士に依頼できます。
・管理規約の作成や見直し
・管理委託契約の見直し
・長期修繕計画の見直し
・修繕積立金・管理費の見直し
・大規模修繕工事関連のサポート
・トラブル対応
実際にさくら事務所のマンション管理士がおこなっている業務の一部を紹介します。
管理会社の業務や提案が妥当なのかチェックしたい
管理会社の業務や提案が妥当なのかチェックしたい、とご相談いただくことが多いです。管理会社に不信感をもっていて、管理会社変更を前提にマンション管理士に妥当性を検証してほしい、といったケースもあります。
日常管理において、一定水準に達しているのかそうでないのかの精査は、マンション管理士として大切な業務です。
たとえば、共用部で清掃が不十分な場所がある場合、単に見落とされているのか管理委託契約に含まれていない場所なのか明確にすることで、管理改善に繋げられます。
理事会でアドバイスしてほしい
マンション管理に関して、詳しい方が理事にいないため理事会に出席してアドバイスしてほしい、といったご依頼もあります。
理事会に出席する場合は、事前に役員と打合せして「どういった議案を理事会に出すのか」からチェックして、スムーズで有意義な議論になるようにサポートします。
実際に、管理会社目線の提案になっているケースも少なくありません。マンション管理士の知見を活かして、管理組合の意向に寄り添ったアドバイスをしています。
月次の収支報告や収支決算案(予算案)を精査したい
管理会社から提出される月次の収支報告や収支決算案(予算案)の精査でもマンション管理士が活躍しています。
収支決算案(予算案)は、基本的に定期総会の1ヶ月前に開催される理事会で管理会社から提出されるため、わずかな時間で精査しなければいけません。
また、これまでの履歴を把握していないと予算の組み方もわからないため、管理会社から提出された案がそのまま通ることも多いです。しかし、案が本当に適正かは検証しないとわかりません。
長期的にそのマンション運営に関わっているマンション管理士なら、管理会社から出される収支報告書や決算案予算案を精査し、会計状況に応じて適切にアドバイスが可能です。
下記動画でもマンション管理士の仕事内容について紹介しています。
マンション管理士はどんな仕事してるの?現役のコンサルタントが教えます!
マンション管理士の契約形態と費用相場
マンション管理士を活用する方法として、以下の契約パターンがあります。
・アドバイザリー契約
・顧問契約
・第三者契約
・個別業務契約
それぞれ費用相場も合わせて紹介しますが、状況によっても変わるためあくまでも参考程度と捉えてください。
アドバイザリー契約
アドバイザリー契約は、中長期的に理事会のアドバイザーとしてマンション管理のアドバイスや指導をおこないます。
組合員だけで管理組合の運営はできているものの、マンション管理のプロであるマンション管理士を身近において、悩んだときに相談したり間違った方向にいかないようにサポートしてもらったりしたい場合におすすめです。
アドバイザリー契約の費用は月額25,000円~が目安になります。
顧問契約
顧問契約は、アドバイスや指導にとどまらず、理事会や総会の司会進行や質疑応答など、管理組合がおこなう業務を代行してもらえる契約形態です。
アドバイザリー契約よりも理事長や役員の負担を軽減でき、役員のなり手不足を軽減できる効果が期待できます。
顧問契約は数カ月から年単位の契約になるケースが多く、費用は月額30,000円~です。
第三者契約
第三者契約は、マンション管理士が管理者となり理事長の業務を代行します。完全に管理組合の一員となるイメージです。
管理組合が機能していなかったり高齢化により理事長のなり手不足が深刻化していたりする場合には、第三者契約でマンション管理の建て直しを図るケースがあります。
第三者契約の費用は月10万円~が目安です。
個別業務契約
個別業務契約はいわゆるスポット契約です。「管理委託契約を見直したい」「長期修繕計画を見直したい」など、単発で業務を依頼できます。
マンション管理に対する漠然的な不安や日常的なサポートというよりも、今まさに問題に直面しているときにおすすめの契約形態です。
費用は依頼する内容によって大きく異なりますが、1回の相談で30,000円~が相場になります。長期修繕計画を新たに作成するなどの一大プロジェクトになると百万円単位でかかることも珍しくありません。
マンション管理士を活用するポイント
マンション管理の主体はあくまでも管理組合で、マンション管理士は「サポートする立場」ということを忘れないことが、マンション管理士を活用するポイントです。
すべてをマンション管理士に任せるのはおすすめしません。マンション管理士の雇用は契約のため、ずっと活動できるとは限らないためです。
たとえば役員任期により管理の方向性に継続性をもたせられないから、外部のマンション管理士に継続性をもって活動してもらいたいという管理組合もあります。
しかし役員が変わるたびに、初めからすべて説明する必要があり、その業務をマンション管理士に託すのはリスクが高いです。役員が交代し「マンション管理士を雇用しない」選択をすることもあるため、管理組合で継続性を担保できる仕組みをつくることが大切になります。
経験豊富で頼れるマンション管理士を選ぼう
マンション管理士を選ぶ際は、高いコミュニケーション力・専門性と人脈・実務経験・失敗経験・料金の明示の5つがポイントになります。アドバイザリー・顧問・第三者・個別業務などさまざまな契約形態があるため、マンション管理士に求める業務に応じて検討しましょう。
マンション管理士はあくまでも補佐役です。マンション管理は、管理組合が主体であることを忘れず、マンション管理士の力を借りながら継続性ある運営体制を作ることを目指しましょう。
マンション管理にお悩みの方は、ぜひさくら事務所までご相談ください。さくら事務所は、一級建築士事務所であり、マンション管理士事務所でもあります。
マンション管理・不動産・建築など経験豊富な多方面の専門家が在籍しており、チーム一丸となり管理組合の相談や運営のサポートができるのが強みです。
管理組合の運営、長期修繕計画の見直し、大規模修繕工事などマンション管理のあらゆるご相談に「自分が理事だったら」の気持ちを常に意識しながら、最適なアドバイスをします。
マンション管理に関する幅広いサービスを実施しているため、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。
以下の動画でも、信頼できるマンション管理士の選び方を詳しく解説しています。