マンションの管理費用をコストダウンする方法のひとつに建物や設備の管理費見直しがあります。そこに存在するだけで維持管理費がかかる建物や設備。そのコストを見直すことができれば、コストダウンが図れるのです。
ここでは、他の管理組合での成功例や失敗例を踏まえて、建物や設備に関する管理費コストダウンのためのテクニックをマンション管理士が解説します。
目次
管理費コストダウン① ミニショップの廃止
大規模なマンションではミニショップを併設しているところもあります。
このミニショップは住民の方にはとても便利なものですが、その反面、コストも大きくかかっています。
考えられるコストダウンの方法として、ショップの委託先を変更したり、管理組合がショップオーナーに委託したりする方法があります。
このほか、ショップそのものを廃止したり、自動販売機コーナーに変更したりして経費を節減することもできます。
ミニショップの契約内容をまずは確認
マンション内のショップ運営に関する契約内容はさまざまです。契約内容によっては、すぐに解約できないこともあります。
ミニショップについて議論する際には、契約内容のチェックをしっかり行いましょう。特に解約条項や運営費用の変更に関する条項は要注意です。
管理組合がミニショップに年間どれくらい負担しているか?確認
管理組合が1年間でどれほどの負担をしているかチェックしましょう。
例えば、ショップオーナーを誘致してスペースを無償貸与すれば管理組合の収入はなくなるものの、支出も抑えられます。
ショップオーナーも光熱費以外の負担がなくなり、お互いの負担が少なくなります。
管理組合の負担がどれくらいあるのかによって対策を考えてもよいでしょう。
自動販売機コーナーへの変更
ミニショップを廃止して自動販売機コーナーへ変更するマンションが相次いでいます。
コスト面から考えれば自動販売機コーナーは優秀ですが、住民からの不満や反対の声が予想されます。
もし自動販売機コーナーへの変更を検討するのであれば、住民に丁寧な説明が必要です。
管理費コストダウン② 機械式駐車場の点検

機械式駐車場も管理組合にとっては頭痛のタネのひとつです。
点検実施回数を減らす、点検会社をメーカー系から独立系に変更するといったことで、コストダウンを図ることができます。
ただ、相手は機械でもあるため、点検を減らすことが最善とはいえないのが問題です。
また、機械式駐車場の構造が複雑で特殊な場合などは独立系点検会社への変更が現実的ではないというケースもありますので注意が必要です。
機械式駐車場の設置場所や環境を考慮
点検実施回数は機械式のタイプや設置環境により判断が異なります。
例えば、昇降型か昇降横行型かでも変わるのです。一般的に昇降横行型のほうがコストはかかり、反対に昇降型のほうがシンプルな構造で不具合が少ない傾向があります。
屋外か屋内かの設置環境も考慮する必要があります。風雨にさらされるので屋外型のほうが傷みやすいものです。こうした点を踏まえつつ、点検業務について検討しましょう。
不具合による緊急出動で費用がかさむ場合も
段数の多い機械式駐車場は、不具合の発生が多い傾向にあります。やはり、構造が複雑で機械に負担がかかるからです。
安易に点検を減らすと不具合が発生する可能性が高まります。
緊急出動が増えて結果的に費用が増えてしまったマンションもあるくらいです。
契約形態の選定
いわゆるフルメンテ契約かPOG契約かの問題です。
もちろん費用の面ではフルメンテのほうが高くなります。修繕の履歴等を確認して検討しましょう。
契約先がメーカー系か?独立系か?の問題もあります。
メーカー系から独立系に変更し、再度メーカー系に戻す場合、一度オーバーホールをすることが条件になることがあります。独立系が使った汎用部品を純正部品に戻さないとメーカー系の会社と契約できないこともありますので、事前に十分な確認が必要です。
管理費コストダウン③ 駐車場利用率を改善
駐車場の利用率低下に悩むマンションも多いでしょう。
積極的に駐車場使用料の収支改善に取り組むマンションでは利用率が低下すると、駐車場の一部を外部へ賃貸し、やがて一部使用停止の流れとなります。駐車場の利用率は管理組合の収入にも影響を与える問題です。
駐車場を外部貸しするには?
立地や地域の状況によっては、外部貸しによって大幅な収支改善が見込める場合もあります。
ただし、駐車場の需給動向は地域によって異なります。
もし、大規模に外部貸しを行おうとすると、管理組合と管理会社だけでは手に余る場合もあります。
コンサルタントなどの外部の力を借りることも念頭に置きましょう。
駐車場サブリースの功罪
サブリースはまとまった台数を一括で借りてくれるため、利用率は改善します。
ただし、サブリースを利用すると、賃料の額によっては大幅な収支改善が困難です。相場の30%から40%程度の賃料で非常に割安な場合もあります。
サブリースを利用する際にはこの賃料のほか、解約条件や賃料の変更条項にも気を配る必要があります。
また、外部貸しの契約書の内容によっては管理組合の駐車場運営が収益事業であると看做され、駐車場全体の使用料収入が課税対象になってしまうということもありますので注意が必要です。
セキュリティに関する懸念
駐車場への出入口の動線によっては、セキュリティ上の懸念が生じることもあります。
また、外部の人がマンション内に立ち入ることを好ましく思わない人もいるでしょう。
高度なセキュリティシステムが構築されている場合、そのシステムの変更に思わぬ費用がかかることもあります。
管理費コストダウン④ エレベーター保守点検

エレベーターの保守点検を見直す手法はコストダウンの王道です。
具体的には契約内容の変更やメーカー系から独立系への変更です。
独立系だと不安を感じる人もいますが、独立系でも優秀な業者はあります。エレベーター保守点検に関するポイントは次のとおりです。
独立系は対応できないケースも
メーカー系から独立系への変更はコストダウンの効果は大きいものです。
一般的な速度のエレベーターなら維持管理に関するリスクも大きくありません。
ただし、タワーマンションに設置されているような高速エレベーターは部品も特殊な仕様です。
独立系だと部品供給やメンテナンスが自分たちの力ではできない場合もありますので注意しましょう。
災害時の対応は?
災害時のレスキューなどでは、状況によりリスクが過大になる可能性もあります。
一般的には、メーカー系のほうが有事に強い傾向です。
かご内閉じ込めなどの場合、メーカー系に比べ独立系ではマンパワーの違いなどから、レスキューまでの時間がかかるという懸念があります。
復旧までの時間も同様です。災害時では消防署の救助も期待できません。とはいえ、地震などの災害時にはメーカー系、独立系を問わずスタッフの方々も被災しますので交通機関の被災状況などを考えた場合、どこまで保守点検の会社が動いてくれるかは不透明です。
住民に十分な説明を
このメーカー系と独立系いずれが優れているかといった議論は古くからなされているものです。
無難な選択としてメーカー系を選んで安全をとるか、それともコスト重視の独立系にするか。
それは管理組合やマンション居住者の考え方次第です。
いずれにしても十分な説明を行い、認識や方針を共有することで住民の理解を求めることが大事になります。
管理費コストダウン⑤ 植栽管理の委託先変更

植栽管理は、管理会社が手配する造園会社に委託することが一般的です。
ただ、これを管理組合が造園会社へ直接発注すると、流通経路が簡素化された分コストダウンをすることができる場合や、コスト以外の意外な効果が見込めるケースもあります。
緑の多いマンションでは効果が高い
新しいマンションでは緑地の割合も高く、樹木の種類も豊富です。
管理する樹木の種類や量が多いマンションでは、大きなコストダウン効果を得られることもあります。
反対に植栽が少なく手入れも簡単なマンションだと、せっかく委託先を変更しても効果が乏しいこともあるのです。
地域のコミュニケーションにもつながることも
一口に造園業者といってもさまざまです。
提案力に優れたコンサル系造園会社もあります。また、地元の植木屋さんに依頼されていることも多いものです。地元の業者に依頼することはコストもさることながら、地域のコミュニケーションにもつながります。
実際に地域とのコミュニケーションが醸成され防災対策などが改善されたという、コストには代え難いような効果が得られたというケースもあります。
お住まいのマンションにあった手法を
建物や設備には維持管理費がかかるものです。サービスとコストの両立は難しいものですが、不可能ではありません。
管理費にお悩みのマンションでは、ここにあげた方法をもとに、お住まいのマンションにあったコストダウンの手法を考えてみてもいいでしょう。