外壁タイルは経年劣化で剥がれるものなのか?
マンションの外壁タイルは、通常、コンクリート面に下地モルタルを塗り付け、そこにペタペタと貼っていきます。
特殊タイルでは1枚1枚貼るパターンもありますが、一般的によく見る小口タイルでは、30㎝角程度のシート状になっていって、計18枚を一度に貼りつけます。
そして、タイルとタイルの隙間(目地)に目地材を充填していきます。
タイルは、主に、このモルタル面(背面)とタイル間の隙間(側面)の接着力によって、壁に張り付いています。
タイルは背面と側面の接着力によって躯体に張り付いているのですが、側面の目地よりも背面のモルタル面との接着力がはるかに強く、この背面の接着力がなくなることで剥離がおこります。
例えば、防水や塗装の剥がれ、鉄部の錆などは、時間が経てば、いわゆる「経年劣化」で不具合が生じてしまうものであるのに対し、タイルの剥がれは、経年劣化で剥がれるものではありません。
上記のとおり、背面のモルタル接着力の低下によって剥がれるわけですが、その原因は様々です。
上記の写真のケースは、剥がれた部分を確認すると、タイルとコンクリート躯体との空隙が10㎜ほどあり、指が入る状態です。
これは、初めからこれだけの空隙があったわけではありません。
コンクリート躯体とモルタル面との接着力が弱まり、側面の目地で繋がったまま、壁から「浮いた」状態にあったもの。
それが、外がら見たときに壁が膨らんで見えるくらい、徐々に背面の空隙が大きくなり、最終的に目地の接着が切れ、最終的にはバラバラと剥がれることになったのです。
タイルの剥離は、「経年劣化」で生じるものではないものの、残念ながら剥離は少なからずあります。
中には剥離したタイルが通行人に直撃し死亡事故となったケースさえあります。
こうなると、たとえ施工不良により剥離したとしても、マンションの維持管理責任は管理組合ですから、区分所有者皆が加害者になってしまいます。
実は、剥離とまではいかなくとも、「浮いている」状態の外壁タイルは実に多く存在します。
浮いているタイルは必ず剥がれるというわけではありませんが、その危険度が表から見てなかなかわかりません。
また、写真のように、壁が膨らんでくるケースばかりではなく、突如として落下する場合もあります。
外壁タイルの落下事故の賠償責任はマンションの所有者全員に
剥離落下したタイルが第三者に危害を加えると、マンションの所有者全員(管理組合)が賠償責任を負うことになり、金銭的な負担だけでなく、マンション全体の評判をも下げてしまうでしょう。
現状全く問題ないように見えても、前触れ現象の「浮き」があるかどうか、打診検査を行い、剥離落下する前に補修をしておきましょう。
建築基準法上、3年ごとに課される定期検査に、外壁タイルの打診診断があります。検査としては、「手の届く範囲を打診、その他を目視調査、結果、異状が見られた場合は、全面打診調査」、さらに「竣工、外壁改修工事竣工後10年を経てから最初の調査の際に全面打診調査」となります。
なお、この検査が義務付けられる建物規模は、各行政により定められており、東京都の場合は、階数5以上、延床面積1,000㎡を超える規模となっています。
放置しておくと第三者やマンション住民にも被害を及ぼす可能性があるタイルの浮きや剥落。
法の順守はもちろんのこと、管理組合でもできるだけ早く補修できるよう、定期的にチェックをするようにしましょう。
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