共用部分チェック 築5年未満分譲マンション編
共用部分を調査した結果、「特に問題となる不具合はない」とご報告できるのが理想的な建物です。しかし、風雨にさらされ、使用されることで建物は必ず劣化します。以下の事例はすべて、引き渡し後5年未満の分譲マンションの調査で確認された不具合です。全体的には丁寧に施工されていた物件でも、部分的に施工不良や早期劣化が見られることは多々あります。
屋上 防水の膨れ
防水層に空気が入り込んで膨れると、表面が割れて雨水が内部に入り込み、雨漏りが発生する恐れがあります。 なお、新築マンションの屋上防水に関するアフターサービス保証では、雨漏りが発生すれば10年目でも売主の保証が受けられますが、雨漏りが発生しなければ、防水に不具合があっても保証は2年で切れてしまいます。共用廊下 排水側溝の防水破断
雨水が流れる側溝にひび割れが生じ、防水材もひび割れていました。放置すると、コンクリート内部に雨水が染み込んで下階に水漏れがするだけでなく、内部の鉄筋が錆びる恐れがあります。屋内駐輪場 コンクリート壁のひび割れ
「耐力壁」という主要構造部の壁に、多数のひび割れがありました。緑色のテープは、ひび割れに沿って貼ったものです。 共用施設にコンクリート壁がむき出しの場所があっても、日常で使用しているときには不具合に気づかないことが多いようです。外壁 タイルの浮き
通行が多い場所の外壁で、大量にタイルが浮いていました(接着不良)。緑色のテープは、浮きが確認された部分です。 浮きは見た目にはわからないため、打診棒という道具をタイル表面に転がし、音でコンクリートとの接着状態を確認します。共用廊下 あげ裏のエフロレッセンス
廊下のあげ裏(天井)に、ひび割れからコンクリートに水が染みこんで発生する「エフロレッセンス」(白華)が発生していました。 補修においては、この部分だけでなく、水が入り込んだ原因箇所の特定も必要となります。排水管継ぎ目の漏れ
共用部分の配管は、管同士の継ぎ方が悪く、隙間から水が漏れていました。漏れを放置しておくと、臭いが発生したり、管の劣化が早まったりします。地下ピット コンクリート柱の欠損
地下ピット内にある柱に、一部大きく欠けたところがありました。新築施工時、型枠にコンクリートがしっかり充填できなかったことが原因と考えられます。 地下は、地上の建物の重量がかかる場所ですので、できるだけ早期に修繕しておく必要があります。地下ピット コンクリート壁の欠損・鉄筋切断
構造耐力上主要なコンクリート壁に、設計で設けられていない穴を開けて鉄筋を切断し、適切な処置をしないまま放置されていました。 放置された開口からコンクリートにひび割れが発生したり、鉄筋が錆びやすくなるため、補修が必要です。地下ピット コンクリート壁のひび割れ・エフロレッセンス
構造耐力上主要なコンクリート壁に大きなひび割れが発生し、エフロレッセンスが発生していました。 (エフロレッセンス:コンクリートに含まれる成分が、水分とともにひび割れを通ってコンクリート表面に出てくる現象) ひび割れから水がコンクリート内部に侵入すると、内部の鉄筋の錆びが進行しやすく、耐久性の低下が早まる恐れがあります。共用部分チェックご利用例と理事の感想
【築2年目の分譲マンション】
築1年目に見つかった共用部分のひび割れ等について、分譲会社(売主)から「すべて保証対象外」と補修を拒否されたため、理事会で2年目(24ヶ月目)のアフターサービス保証期限までに調査およびコンサルティングの依頼を検討。総会決議を経てさくら事務所に依頼。↓
調査結果より施工の初期不良や、補修対象となる事象があることがわかり、アフターサービス対象となる事象のすべてを、分譲会社に補修してもらう。
【理事からいただいたご感想】
共用部分の不具合について、これまで分譲会社から詳しい説明なしに「保証対象外」と返答され続け困っていました。第三者の客観的な調査結果やアドバイスにより、分譲会社から保証対象・ 対象外の根拠が明示され、多くの補修を申し出てもらえたのが大きな収穫でした。【築4年目の分譲マンション】
近隣分譲マンションで外壁タイルが剥落する事故があり、理事会にて、当該マンションの外壁タイル・アフターサービス保証期限までにタイルの検査実施を検討。総会決議を経て依頼。↓
タイルに不良がない階と、広範囲にわたり多数のタイルが浮き上がっている階があることがわかる。さくら事務所が継続して理事会のサポートにあたり、分譲会社・施工会社に原因究明を依頼。 結果、原因が判明し、分譲会社の費用負担ですべての施工不良タイルを貼り替える。