建築における「ピット」とは│存在する意味
マンションの地下には、『地下ピット』という空間があります。簡単に言うと、排水管などを修理・交換するための作業スペースです。
一般的には、地下ピットが主流ですが、中間階にピットを配置することもあります。上階と下階で配管が分けられているマンションの場合、境目となる中間階にピットを設置し、配管の設備をまとめて管理するケースがあるのです。
また、免震構造のマンションでは、地下に十分なクリアランスを確保できないなどの理由から、中間層に免震ピットを設けている事例もあります。
(かなり前に建てられたマンションだと、ピットが無かったり、あっても土で埋められていることがあります)
『うちのマンション、地下なんてないですよ?』と思う方がいるかもしれませんが、共用廊下のどこかに下記写真のようなフタがあったら、地下ピットがあるとお考えください。
ピットの役割・必要性
ピットのおもな役割は、配管をメンテナンスしやすくすることです。また、配管の多い大規模なマンションでも、ピットにまとめることで、複雑な連結が可能になります。
ピットがなければ、メンテナンスのたびに、土に埋まった配管を掘り起こさなければなりません。点検するにも、余計に費用と手間がかかるのです。さらに、土中にある配管は、地震の揺れをダイレクトに受けるため、破損の可能性が高まります。
ピットの設置は義務ではありませんが、管理していくうえで、メリットは大きいといえるでしょう。
ピットの高さ・構造について
ピットは、配管を通してメンテナンスするのに、充分な高さが必要です。また、多くのピットは地中梁で区切られているため、ピット間を人が移動する場合、人通孔を設けなければいけません。人通孔の設置を考慮すると、地中梁の高さは1,800mm程度となります。
ピットは、基本的に鉄筋コンクリート造です。地盤が弱ければスラブ、強ければ土間コンクリートなど、使い分けられています。ピットの高さや構造は、マンションやその地盤の状況に合わせて、適切に設計されているのです。
「地下ピット」の入口はどこ?
頻繁には入らないスペースのため人が長時間滞在することは想定されておらず、換気扇・換気口などがありません。
ピット内には稀に人体に良くないガスなどが発生していることもあるため、住民が立ち入れないよう、専用の工具を使わないとフタが開けられないようになっています。
また、地下ピットでの作業は危険を伴うため、労働安全衛生法第14条の規定に基づき、危険性のある場所の作業において、作業方法を正しく決定したり換気装置の点検を行う等をするための技能講習である「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」を受講した人間が、作業責任者として1名いる必要があります。
入る時は、下記写真のように工具でフタを開け、降りて行きます。
写真のホームインスペクターは、埃などで汚れやすいので防汚服を着用しています。
なお、進入口の下は1メートル以上の高さがあることが多いため、転落しないようハシゴなどを中に入れて慎重に降りて行きます。
地下ピットの中はコンクリートの世界
地上部分の柱や壁は、外壁にタイル、室内は内装材でコンクリートが覆われていますが、ピットはコンクリートのまま。
そのため、施工不良や経年・地震などによるひび割れの有無が容易にわかります。
ただし、地下ピットに照明器具はなく真っ暗な空間ですから、コンクリートの施工状況を確認するときには広範囲を照らせる照明器具を持って入らなくてはいけません。
また、高さも1.5メートル程度など、大人が直立できない高さのことが多いため、調査・点検時はかがんだり伏せたりしながら移動します。
ピット内を調査・点検するとき、コンクリートの状態以外に排水管(グレーの管)の状態や雨天後に水が大量に長期間滞留していないかなどをチェックします。
2年、10年のアフターサービス期限のタイミングでチェックしてみると、さまざまな不具合が進行していることや鉄筋の切断を伴う不正なコア抜き(穴あけ)が発見されることもあります。
また調査ではコンクリートのかぶり厚さを測定することも可能で、建築基準法に則って建てられたかどうかの目安にすることも出来ます。
アフターサービス期限前に瑕疵や不具合が見つかれば、補償で修繕することも可能です。当社では専門家による調査サービスを行っておりますので、ぜひ不安がある方はご検討ください。
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稀に建築資材が置き忘れになっているケースも散見される場合もあり、地下ピットで発見される不具合に関しては、民法上の契約不適合に該当する場合が多く、分譲会社・施工会社が法律上の責任範囲で直すことが望ましいため、竣工後10年以内までに1度チェックすることが望ましく、一度も調査をしたことがないマンションについては、専門家の調査をお勧めいたします。
一度も調査したことがないというマンションは、専門家に調査してもらうことをお勧めします。