管理費・修繕積立金の用途は?支払義務や計算方法、滞納時の対応を解説

マンションを購入すると、毎月返済する住宅ローンとは別に「管理費」や「修繕積立金」が掛かります。
滞納する人がいると適切な修繕工事ができなくなるだけではなく、高額な一時金を徴収することになったり、住民同士のトラブルに繋がる恐れも…。

この記事では、健全なマンション運営に欠かせない管理費・修繕積立金について、その用途から滞納時の対処法まで解説していきます!

管理費と修繕積立金の用途

大きく分けて、管理費は日常的なマンション管理のために掛かる費用。修繕積立金とは、十数年に一度の大規模修繕工事などに備えて積み立てておく費用です。

どちらも共有部分の管理・修繕のために使われ、居住者は原則的に毎月支払うことになります。

管理費の用途

国土交通省が定める規約によると、管理費は以下の管理に要する経費に充てられます。

1  、管理員人件費

2  、公租公課

3  、共用設備の保守維持費及び運転費

4  、備品費、通信費その他の事務費

5  、共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料

6  、経常的な補修費

7  、清掃費、消毒費及びごみ処理費

8  、委託業務費

9  、専門的知識を有する者の活用に要する費用

10、管理組合の運営に要する費用

11、その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く)

出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

この中でも特に大きな割合を占めるのが「委託業務費」です。

マンション管理の業務は、管理組合が独自に各専門業者へ依頼することもできますが、実際には管理会社に委託するケースがほとんどです。そのため、管理費の大半は管理会社への委託業務費に使われます。

修繕積立金の用途

修繕積立金といえば、大規模修繕工事をイメージする方が多いかもしれませんが、実際の使用用途は多岐にわたります。国土交通省の規定されている用途は以下のとおりです。

1、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕

2、不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕

3、敷地及び共用部分等の変更

4、建物の建替え及びマンション敷地売却に係る合意形成に必要となる事項の調査

5、その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

上記4つをより具体的に説明すると、大規模修繕工事、突発的な災害・事故による破損の修繕、共有部分のリフォーム、マンションの建て替えや敷地売却を検討する際の調査費用ということになります。

管理費と修繕積立金の支払いは義務?

建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)によって、分譲マンションの所有者には管理組合の加入が義務付けられ、管理組合には区分所有法を基にした独自のルール(管理規約)があります。

管理規約には、管理費や修繕積立金を支払うことや、所有者が個人で負担する金額が定められており、区分所有者は管理規約を守る義務があるのです。

つまり、管理費・修繕積立金はマンションの管理規約に基づき、部屋を手放さない限り、一生払い続けなければいけないことを意味します。

管理費と修繕積立金の支払い方法は口座振替が基本

管理費・修繕積立金の支払方法は口座振替が主流です。

管理費は、管理会社から委託された収納代行会社を通じて金融機関が口座から引き落としを行います。

この時、口座振替手数料が発生しますが、通常の銀行振込手数料よりも安く管理組合が負担してくれることも多いです。

毎月発生する費用なので、所有者は指定口座に資金が十分あるかを常に確認しておくことが大切になります。もしも、残高不足になってしまうと一時的に滞納扱いとなりますから要注意です!

管理費と修繕積立金の計算方法

国土交通省によると、管理費・修繕積立金の費用負担については各区分所有者の共有部分の持ち分(専有部分の床面積)に応じて算出されると明記されています。(参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

同じマンションでも区分所有者によって費用負担に差があるのですが、目安として管理費や修繕積立金の相場を知りたい場合は、下記の記事を読んで参考にしてください!

マンション管理費と修繕積立金の相場とは?違いや節約方法も併せて解説

ここからは、管理費と修繕積立金それぞれの詳しい計算方法を説明します!

管理費

管理費は原則、専有面積に応じて算出されます。

同じマンションでも専有面積が広い部屋ほど管理費は高くなります。

また、マンションに有する設備やグレードによっても管理に必要な費用が増えてくるため管理費が高くなることがあります。

さらに、戸数が少ないマンションほど管理費を等分する所有者の数が少ないので一戸当たりの管理費用が高くなりがちです。

修繕積立金

修繕積立金については、基本的に長期修繕計画で必要な修繕工事費総額を基に、その期間中に積み立てられる金額を毎月設定します。また、計算方法は、管理費と同様に各住戸の専有面積に応じて算出されます。

目安として、国土交通省では月当たりの㎡単価を下記のように提示しています。

建築延床面積(20階未満の場合) 専有面積の月額修繕積立金(㎡・月)
5,000㎡未満 335円
5,000㎡以上~10,000㎡未満 252円
10,000㎡以上~20,000㎡未満 271円
20,000㎡以上 255円

※20階以上の超高層マンションは建築延床面積に関わらず、一律で338円(㎡・月)

参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

ただし、修繕積立金は途中で値上がりすることがあります。

そのような場合の相場や値上げの要因については、下記記事で詳しく解説していますので読んでみてください!

マンションの修繕積立金とは?相場や値上げの要因を徹底解説

管理費と修繕積立金を滞納したらどうなる?

管理費と修繕積立金を滞納したらどうなるのか、滞納時の対応や売却、滞納者の統計結果についてみてきましょう。

滞納時の対応

マンション管理費と修繕積立金を滞納した場合、まずは管理会社から督促の連絡が入ります。電話、書面、訪問、内容証明などの方法で届くでしょう。すぐに滞納額を満額支払えば、その後は大きな問題になりません。

しかし、そのまま滞納額の支払いを拒んでいると管理組合が裁判所に支払いを申し立てる可能性があります。承認されてしまうと法的効力が生じて、最悪の場合、競売を申し立てられ売却完了に伴い退去しなければいけない可能性も…。督促された時には直ちに滞納額を満額支払いましょう!

滞納したまま売却できる?

管理費や修繕積立金を滞納しても、マンションを売却することは可能です。しかし、売却したからと言って支払いの義務を免れるわけではありません。

また、区分所有法では、滞納額の支払い義務は新たな買主も負うことになっています。実際は売主が精算するケースがほとんどではありますが、これから中古マンションを購入される方は、滞納金の負担が無いか、あったとしたらいくら負担することになるのか、注意しましょう。

滞納者数の統計結果

国土交通省による「平成30年マンション総合調査管理組合向けの調査結果」によると、3か月以上の滞納住戸のある管理組合の割合は24.8%、6か月以上の場合は15.2%、1年以上の場合は16.4%です。

いずれも完成年次が古くなるほど滞納住戸がある管理組合の割合が高い傾向となっています。

参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」(平成31年4月26日公表)

管理費と修繕積立金の無駄遣いに注意しよう

マンション総合調査の結果によると「現在の修繕積立金が計画に比べて不足している」という回答が全体の34.8%、「現在の修繕積立金が計画に比べて余剰がある」が33.8%となっており、修繕積立金が不足している管理組合の方が多いのが現状です。

修繕積立金が不足すると、大規模修繕工事前の一時金徴収や修繕積立金の大幅な値上げも考えられます。

区分所有者の負担をできるだけ抑えるためにも、管理資金の不足が深刻になる前に、管理費と修繕積立金の妥当性を定期的に見直して早期対策を心掛けましょう。

さくら事務所では、管理費・修繕積立金を適正金額を検証し長期修繕計画を見直し・作成するサービスを行っています!管理委託費をもらう立場の管理会社には言いにくいファクトも、第三者の立場で客観的に申し上げることが可能です。

長期修繕計画の見直し・作成

また、大規模修繕工事の周期を見直すために、建物劣化診断もおすすめです!

「その工事、本当に今、必要ですか?」という視点で、マンションの屋上からエントランスまで共用部分を診断し、大規模修繕工事を行うべき適正なタイミングをアドバイスいたします。

[建物劣化診断]マンション大規模修繕工事に向けた第三者調査

今修繕すべき箇所を明確にして不要な工事を延期できれば、修繕積立金を賢く使い、数十年後も健全で資産価値の落ちないマンションを目指しましょう!

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