高級マンションでALC外壁は安っぽい?
最近、タワーマンションで、ALCパネルが採用されているのをよく見かけるようになりました。それと同時にこんな声も聞かれるように。
「高級マンションといわれているのにバルコニー面の壁がALCなんです。躯体の造りとしてはどうなんでしょうか。」
ALCパネルとは、Autoclaved Lightweight aerated Concrete の略で、高圧高温下で空気を混合させて形成されたコンクリートパネル。
内部には小さな気泡があり、なんといっても軽いというのが最大のメリットです。
見えるところにALCパネルを採用しているといっても、構造体すべてがALCというわけではなく、バルコニー面や共用廊下側の外壁、いわゆる雑壁(耐力壁でない壁)に用いられているケースが多くみられます。
一部の方に“安っぽい”という印象を与えているのは、一般的にコンクリート造に比べてコストが安く、鉄骨造の外壁材として用いられることと、工場生産された既製品が現場で短時間のうちに施工されるため簡単に作られているといった印象などからコンクリートのどっしりした構造体よりも、少なからず“安っぽい”という印象を与えているようです。
タワーマンションで採用されることが多いというのは、コスト面だけでなく建物の総重量を軽くすることが最大の目的。
総重量が軽いということは、すなわち柱や梁の断面を小さくできるメリットがあるためです。
面積の割に狭いと感じるのは、柱や梁が面積に対して大きな割合を占めているということになります。
単にコストを下げたいという作り手側だけのメリットばかりではなく、スッキリと広々した空間を住み手側に提供するというメリットも合わせて考えられているのです。
ALCパネルにタイル貼りする際の注意点
ALCパネルにタイルを貼っているのを時々見かけます。 実はALCパネルにタイルを貼ると、パネル自体の劣化を早める危険をはらんでいるため注意が必要。
マンションでよく使用されるタイルは、通常湿式工法といって貼り付け面にモルタルなどを塗りつけ、タイルを貼っていく施工が一般的。
モルタルはセメントと砂に水を練り合わせたものなので、いわばALCパネルに水を与えているようなものです。
ALCパネルは内部に気泡を含んでいるため、パネルが水分を吸収し建設の初期段階から常に水に晒されている状態になってしまいます。
吸水調整剤などの水分を吸収させない措置は欠かせません。
吸収した水分の逃げ場がなく、裏面も断熱材などでびっしり覆われているとなるとALCは窒息状態になります。
高い保水状態にあるパネルはそれだけ劣化の進行が早くなってしまい、ひどい場合はボロッと砕けてしまうことさえあります。
塗装の場合も同様で、どんな塗装をしても早かれ遅かれいずれ剥がれてしまいます。すると、そこから水が浸透しパネルに吸収されていきます。
ALCパネルはコンクリートよりもこまめなメンテナンスが必要
水が浸透してもちゃんと逃げ場があるため、タイルや塗装などを施さないほうがパネルの寿命を延すことができるでしょう。しかし、見た目の問題からタイルや塗装などの仕上げをしないということは難しく、現実的ではありません。
何らかしらの仕上げを施さなければならないALCですが、少しでも劣化を防ぎ寿命を伸ばすにはやはりこまめなメンテナンスが欠かせません。
水を吸収してしまうという性質上、仕上げに完全な防水が要求されますが、タイル貼りでも塗装でも劣化は避けられず、どこかしらに水道(みずみち)ができてしまうものです。
状況によってはコンクリートよりもこまめなメンテナンスが必要になることもあるので、該当する箇所は定期的に観察をしてみて気になる箇所があった場合は診断の上、補修を検討しましょう。