大規模修繕工事のプロはここを見ていた!マンション劣化診断ツアー同行記

先日のお打ち合わせに続き、マンション劣化診断ツアー当日の様子をご紹介します。

今回のツアー参加者は6名様。総戸数28戸という規模から、募集も理事会に閉じず、管理組合の皆さまから募ったそうです。

まずは、先日の打ち合わせにも伺ったコンサルタントが、今日のツアーの主旨と流れを説明します。

マンション劣化診断ツアーマンション劣化診断ツアーは、マンションに明るいコンサルタントが皆様と一緒に、立入り可能な共用部を周りながら、劣化の状況や大規模修繕工事のポイントについて解説するサービスです。

実際に建物のどこがどんな風に劣化しているのか自分の目で確認し、わからないことがあればその場でコンサルタントに質問し、解説してもらいます。

次に、コンサルタントが、劣化の際にチェックしておくべきポイントを解説します。

「ここが劣化しているな」「ここは大丈夫かな」とただ漫然と劣化ポイントを見ていくのではなく、以下のことに留意しながらチェックしていくのがお勧めとのこと。

①修繕するのに足場が必要な箇所か?足場なしでも修繕が可能な場所か?

大規模修繕工事=足場が必要な箇所の工事 とざっくり考えておくといいでしょう。

足場が必要ない場所であれば、修繕積立金と相談して、「今回の大規模修繕計画では見送り、また別の機会に行う」「日常修繕のついでに行い、大規模修繕工事とは別に分けて考える」という判断もできるからです。

もちろん、場合によっては一度にまとめて行うことで安くなることもあります。

②美観から直したほうがいいものなのか?安全性から直したほうがいいものなのか?

劣化の影響として主に2つが挙げられます。

それは、「放っておくと見た目が悪い」と「放っておいたら生活する上で危険」

どちらに関係する劣化なのかも、都度きちんと考えましょう。

③雨風や太陽光などの影響を受ける場所なのかどうか?

太陽光の当たる、雨が掛かる場所、というのはその分、劣化のスピードも早まります。

内廊下の雨のかからない場所であれば気にしなくていいヒビ割れも、雨風の当たるところであれば、補修の緊急度が変わってくるでしょう。

まずは、屋上で防水の状態をチェック

さて、チェックリストと、打診棒、ヘルメット内臓キャップを皆さんにお配りして、いよいよマンション劣化診断ツアーのスタートです。

屋上は、通常は立ち入りができず、管理会社で梯子や鍵を保管していることが多いでしょう。

今回も、日曜日ということもあり管理員さん不在のため、事前に梯子と鍵は理事長が準備してくれました。

安全に考慮し、危険のない範囲で防水の状態を確認していきます。

ぱっと見、表面が劣化しているところも、防水層まで傷んでいるのか?表面の塗装が劣化した状態か?その程度はどれほどか?それぞれ修繕の方法も異なります。

1か所で表面の塗装に劣化が見られましたが、防水層にまで至る劣化はなかったようです。

現段階では経過観察で良い状態と思われ、又この部分は足場が無くても安全対策を取り工事が可能です、とコンサルタントはコメントしていました。

廊下でチェックするのはタイル、塗装

外壁タイルの調査屋上から降りたら、次は共用廊下です。まずチェックするのは、タイル。

打診棒という道具を使い、先端の丸い鉄の部分を外壁タイルの表面でガラガラと転がすようになで、その音の変化でタイルの「浮き」がないかを調査するのです。

浮いているところは、そこだけ「からから」と軽い音をたて、しっかりとタイルが密着していないことを意味します。

そのままにしておくと、剥離や落下の可能性もあり、住民に危険が及ぶ可能性もあります。

1枚2枚のタイルの浮きであれば、大きな問題ではありませんが、広範囲に渡って浮いてしまっている箇所があれば危険信号。

通常、外壁タイルの浮き率は3~5%くらいを想定して大規模修繕工事の費用を見込んでいるところが多く、数枚の浮きであれば大きな問題ではありません。

ただ、広範囲に渡ってタイルが浮いてしまっているようなケースは、施工の仕方に問題がある可能性も考えられますし、高所などの足場をかけてみないとわからない箇所でも、広範囲で浮いている可能性もあります。

その場合、当初、大規模修繕工事で見込んでいるタイルの補修費用を大きくオーバーしてしまうことも。

参加者の皆さんも、各自打診棒で調査しました。

結果、数枚の浮きが何か所で発見されましたが、広範囲での浮きは確認できませんでした。

「タイルの状態は大変良好です」とコンサルタントも関心していました。

エフロレッセンスやひび、その補修の緊急性は?

エフロレッセンス

次に、廊下の床や天井、手摺壁をチェックしました。

天井にひび割れエフロレッセンスを発見しました。

ひび割れからコンクリートの成分が染み出したものです。

住戸の上下なら気になりますし、数多くあちこちにあるわけでなくここ1か所だけ。

早めに対応するのがベストかもしれませんが、安全性を考えると足場があったほうがいいということもあり、3年後の大規模修繕工事でも特に問題ないのではないか、ということになりました。

別フロアの廊下では、手すり壁にひび割れを発見しました。

管理会社さんの劣化診断でも報告されていたものですが、参加者から「これは補修した方がいい?このままで何か悪さはしませんか?」という声。

確かに見た目は少し悪いのですが・・・でも、実際ここはほとんど生活する上で目立たない箇所。又手摺壁は主要な構造体ではないので、緊急性はありません。

美観に対する感覚は人それぞれですので、ここまでならOK、これは直してほしい、等意見はさまざまかと思います。

難しいところですが、大規模修繕工事の際は、予算とのも相談してその優先順位を考えて決めていくのもいいでしょう。

最後は、地上階に降りて外観を地上から観察します。

ここではコンサルタントが、望遠鏡で外壁の状況などをチェックしました。

マンション劣化診断ツアー、もう1つの狙いは?

エントランスホールにて、参加者の皆さんにコンサルタントが今日の総括。

今回の調査で、経年に準じた小範囲の劣化事象や経過観察が必要な箇所はいくつか見られましたが、緊急を要するような箇所は見られませんでした。

当初の予定から先延ばしして、2022年に大規模修繕工事をおこなう事を検討中ですが今回の調査で工事を先延ばししても、問題が無さそうとの事で皆さん一安心でした。

ご自身で住んでいるとはいえ、お住まいのフロアや動線以外のエリアはなかなか目にすることもないようで、皆さん終始、熱心にコンサルタントの話に耳を傾けていました。

また、皆さん「いいマンションだねえ」「住んでいる人がいいからね(笑)」と声を掛け合っていたのも大変印象的でした。

マンション劣化診断ツアー

本サービス、劣化の有無だけではなく、その補修を要する緊急レベルや、その劣化部位が建物や普段の生活にどんな影響を及ぼすものか?をみなさん自身の目で見ていただくことが目的ですが、「皆さんにお住まいのマンションについて知ってもらう」ことも、実は大事な裏テーマ。

分厚い報告書で劣化状況を報告されるよりも、自身の目で確かめるほうが建物への理解もずっと深まります。

大規模修繕工事で修繕積立金を無駄にしないためには、「皆さん自身でマンションを知ること」が最も有効な対策なのです。

マンション管理のプロがアドバイス! おすすめのサービスはこちら

お役立ちコラム 関連記事