数千万円~数億円、時には数十億円のお金が動くマンションの大規模修繕。
その裏で、管理組合をサポートするはずの設計コンサルタントが施工会社の談合を主導し、バックマージンを授受することが常態化しています。
そして知らないうちに管理組合が本来の工事費より高値で工事を発注、結果として数百万円から数千万円の単位で修繕積立金を無駄にしてしまうという不利益を被っているのです。
もちろん、修繕積立金はマンションの所有者の方が毎月コツコツ積み立てた大切なお金。
積立金が不足すると、将来的に本当に必要なマンションの修繕ができなくなり、資産価値の低下にもつながります。
この事態を重くみた国土交通省は2017年1月、異例の通達を出しました。通達をきっかけにメディアにも取り上げられ、社会問題となりつつあります。
大規模修繕をめぐる談合のシステム、背景、マンション管理組合が被害に遭わないための方策について、2回に分けて解説します。
なぜ大規模修繕工事は12年に1回なのか
公共建築物や賃貸向けマンションでは、20年以上も大規模修繕を行わないことが珍しくありません。
なぜ分譲マンションだけが、12年に1回なのでしょうか。販売時に売主が作った長期修繕計画が、12年に1回の割合で大規模修繕工事を行う前提で作られているからです。
必要になった時にすぐに大規模修繕を行えるよう、余裕をもって修繕金を積み立てることはもちろんよいことです。
しかし、いつの間にか「余裕を持った長期修繕計画=大規模修繕サイクル」となってしまっていることは問題です。
どれぐらいの周期で大規模修繕を行うかについては、建物の状態やマンションの所有者の考え方によって決められるべきことなのです。
マンションは住んでいる皆さんの財産なので、マンションをどのように維持したいかは自分たちで決められるはず。
しかし多くのマンションでは、最初に決められた12年目を目途に大規模修繕が行われています。
まだ悪くなっていない部分までも補修することで、より多くの利益を得ようという思惑が働いているのです。
修繕積立金の残高が消える
マンションの修繕積立金は、販売時に管理費や修繕積立金を安くした方が売りやすいので、低めに設定されがちです。
そのため大規模修繕工事を行うと、12年かけて貯めた修繕積立金がほとんどなくなってしまうケースがほとんどです。
しかしマンションの大規模修繕で、最もお金がかかるのは機械式駐車場やエレベーターの入れ替え、
給排水設備の劣化による配管の引き直しなどが必要になる 30年を過ぎてからです。
1回目の大規模修繕は、まだまだ設備が新しいので最もお金がかからない大規模修繕のはずです。
それなのに1回目で修繕積立金を使い切ってしまったら、その後は修繕積立金を大幅に値上げしないといけなくなってしまいます。
相見積もりでも工事費は安くならない
大規模修繕工事は、設計監理方式と呼ばれる方法で実施されます。
マンションの管理会社、または設計コンサルタントが劣化診断を行い、修繕工事の仕様を決めてから施工会社に発注する方式です。
管理会社や設計事務所が数社に声を掛けて相見積もり取り、最も金額が安い会社に大規模修繕工事を発注します。
問題になっているのはこの相見積もりで、管理会社や設計コンサルタントが主導して業者の談合が行われていると言われています。
管理会社や設計コンサルタントは落札業者を持ち回りで指名し、見返りとして工事費の10%から20%をバックマージンとして受け取っているといわれています。
1億円の見積が出てきたら、住民の皆さんが積み立てた1000万円以上が設計コンサルタントに渡るわけです。