「現実離れ」した長期修繕計画はこうして作られる

「現実離れ」した長期修繕計画

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分譲マンションの価値や機能を損なわないために、計画的な修繕は必須です。そこで、修繕の計画と、『将来的に何年目の時点でどのくらいの資金を準備しておく必要があるのか?』というシミュレーションをした管理組合のマネープランが「長期修繕計画」。しかし、この長期修繕計画は建物ができてすらいない、マンション販売前の段階で作成された計画。そのため、必要な項目が抜け落ちていたり、逆に負担する必要のない費用が計上していたりするなど、「現実離れ」した長期修繕計画となっているケースが非常に多いのです。今回は、「現実離れ」した長期修繕計画になってしまう理由と、その問題点についてご説明します。

新築マンション、着工までたったの4カ月

長計ができるまで

不動産業者は、土地を購入してから工事に着工するまでの期間を、なるべく短くしようとします。なぜなら土地の購入代金やマンションの建設費用は、銀行から借りているので借入期間が長くなればなるほど金利がかさむからです。一概に何か月と決まりがあるわけではありませんが、だいたい購入から4か月ぐらいで着工するところが多いようです。

この短い期間に、不動産業者は数多くのことをこなさなければなりません。

設計図の作成

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不動産業者は設計事務所と契約し、マンションの設計図を書いてもらいます。その設計図を役所に提出して「この土地に、こんな建物を建ててよいでしょうか?」とお伺いをたてます。これを「建築確認申請」といいます。役所から「建ててもいいですよ」と返事がもらえてから、ようやく工事を行えるのです。これを「建築確認下付」といいます。

ここで作成される設計図は、建物を建てるためというより建築確認を下付してもらうための図面ですので、「確認申請図」と呼ばれます。確認申請図には細かな部分は描かれていないことが多く、そのままでは建物を建てることはできません。そこで「実施設計図」という、より詳細な図面を描きます。

修繕積立金の決定

実施設計図が出来上がると、不動産業者は各戸の販売価格を決定します。実施設計図を元に同時に管理費と修繕積立金の算定を行います。販売時にはこれらは必ず必要なので、販売開始前には決めておかなければなりません。そして販売開始日のほとんどは、工事着工とほぼ同時になっています。

実施設計図を基に防水やタイルの面積、鉄部の量などが算出されて長期修繕計画が立てられます。その長期修繕計画を元に修繕積立金の額が決定します。

しかし、実施設計図では、実際に使う設備機器の記載もなければ、寸法も確定されていません。階段を例にすると、実施設計図では階段が完成した状態が描かれています。施工図はコンクリートの図、タイルや石をどうはるかを示した図、手すり金物の形状と設置の方法が描かれています。そしてタイルや手すりは品番や型番まで指定されています。

まだ不確定要素が多く、工事中に変更が起こる可能性もある中で、長期修繕計画が作られてしまうのです。

施工会社の決定

実施設計図を元に複数の施工会社が見積もりを作り、それぞれの施工能力や見積金額を比較して施工会社を決定します。決定した施工会社は、施工計画を立てます。そして実施設計図では実際の工事ができないので、実際に工事するための「施工図」と呼ばれる図面を描きます。この施工図は大工・鉄筋業者用、タイル業者用、防水業者用など、各業者が工事するために必ず必要な図面で、実施設計図よりも詳細に描かれています。

不動産業者は、その他にもモデルルームの用地探しから建設までを販売開始までに行いますし、マンション購入者からの設計変更を受け付けるメニューの決定や、販売人員の計画、広告宣伝の計画を決定しなくてはなりません。

短期間で作成されてしまう長期修繕計画

土地の購入から着工まで4か月だとすると、これら全てを4か月で行うわけですから、本来はじっくり時間を掛けて行いたい長期修繕計画の作成も、短期間で行わなければならなくなります。そしてその元になる実施設計図には描かれていない部分が多々あり、それらは施工図を描くことで補われます。しかし施工図は工事着工前から工事中に描かれるので、施工図を元に長期修繕計画の数量を算出していたら、販売に間に合わないのです。

長期修繕計画の見直し

屋上の防水面などは設計図と施工図で面積が異なることはほとんどないのですが、複雑な形のマンションではタイルの面積、吹き付け面の面積、鉄部の数量などが異なることが多々あります。ある物件では、長期修繕計画の数量と実際の数量が20%も違うことがありました。施工していく中で、実施設計図に描かれていない部分にタイルを貼ることを決めたので、面積がどんどん増えていったようです。

長期修繕計画はマンション販売前の計画ですので、完成後とは異なることが多くあります。建築費も変化しているので、管理組合で見直すことが重要です。

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