管理計画認定制度は、国の基本方針に基づき、地方公共団体が適切にマンション管理を行っているマンションを認定する制度で、マンションの管理状況を確認するための重要な指標です。認定されなかったからといって、ペナルティがあるわけではありません。
しかし、認定を受けるためにマンションの管理状況を把握し改善していければ、マンションの価値を向上でき、住みやすさが向上したり、マンション購入者に選ばれ続けるマンションであり続けられたりして、有利な条件でマンションを売却することも考えられるなど、たくさんのメリットがあるのです。
本記事では管理計画認定制度の認定基準や認定を受けるまでの手順を解説します。メリットについても詳しく解説するので、「マンションの管理力をあげたい」「マンション管理これで大丈夫?」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
管理計画認定制度は管理力を把握する指標
管理計画認定制度は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)が2020年6月に改正され2022年4月から地方公共団体により推進されてきました。対象は、マンション管理適正化推進計画を作成している都道府県にあり管理組合が存在するマンションです。
管理組合が申請し、地方公共団体がマンションの管理規約・経理・長期修繕計画などを審査。一定の基準を満たしていれば、認定を受けられます。マンション管理に問題があれば、助言や指導、勧告をされることも。
認定の有効期間は5年。認定にかかる料金自治体によって異なります。
管理計画認定制度と似ている制度「マンション管理適正評価制度」については、下記記事を参考にしてください。
管理計画認定制度の認定基準
管理計画認定制度の5項目17基準が定められています。認定基準の詳細は、下記の表をご覧ください。
項目 | 認定基準 |
管理組合の運営 | ➀管理者等が定められていること |
②監事が選任されていること | |
③集会が年1回以上開催されていること | |
管理規約 | ④管理規約が作成されていること |
⑤マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること | |
⑥マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(又は電磁的方法による提供)について定められていること | |
管理組合の経理 | ⑦管理費、修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること |
⑧修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと | |
⑨直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること | |
長期修繕計画の作成及び見直し等 | ⑩長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会(総会)にて決議されていること |
⑪長期修繕計画の作成又は見直しが7年以内に行われていること | |
⑫長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が 30 年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること | |
⑬長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと | |
⑭長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと | |
⑮長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること | |
その他 | ⑯管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること |
⑰都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること |
参照:国土交通省「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」
認定を受けるために、各認定基準をクリアしていることを証明できる書類も用意しなければいけません。
認定基準ごとに異なりますが、総会の議事録写し・管理規約の写し・管理組合の貸借対照表および収支決算書・長期修繕計画の写し・組合員名簿などが必要になります。
また、上記の認定基準は国が指定しているものです。地方公共団体によって独自で追加の基準を設けているケースもあるため、確認しておきましょう。
管理計画認定制度の認定までの手順
管理計画認定制度を受けるための手順は以下のとおりです。
【手順】
(1)総会にて管理計画認定制度に申請の旨を決議をする
(2)マンション管理士等や管理委託先等に事前確認を申請する、または、地方公共団体へ直接申請する
(3)地方公共団体に審査を申請する
地方公共団体に審査してもらうためには、まずはマンションで管理計画認定制度の申請について決議します。次に、マンション管理士や管理委託先の管理会社等へマンション管理センターへ事前確認を依頼します。管理組合から地方公共団体委へ直接申請するパターンもあります。地方公共団体への審査にあたって、申請書類を提出します。特段の問題が無ければ、認定を受けられるでしょう。
マンション管理センターでは、管理認定制度の手続きの円滑化を目的とした「管理計画認定手続き支援サービス」を実施中です。インターネット上で手軽に申請書類を作成できるため、活用すると良いでしょう。
管理計画認定制度で認定されたマンションは、同意するとマンション管理センターの認定マンション閲覧サイトで管理状況が公開されます。
管理計画認定制度のメリット(管理組合)
ここでは、管理計画認定制度にはたくさんのメリットがあります。ここでは管理組合側のメリットを解説します。
・マンションの管理状態を客観的に把握できる
・管理における問題点を可視化し改善できる
・資産価値および居住価値を向上できる
・共用部リフォーム融資の金利が年0.2%下がる
・マンションすまい・る債の利率が上乗せされる
・管理計画認定制度で固定資産税を減額できる
順に詳しくみていきましょう。
(1)マンションの管理状態を客観的に把握できる
管理計画認定制度を活用することで、マンションの管理状態を客観的に把握できます。
ほかのマンションの管理状態を知る機会はあまりないこともあり、自分のマンションの管理が優れているのか劣っているのか、客観的に判断するのは難しいでしょう。
管理計画認定制度には明確な認定基準があり、基準を満たしているのか否かは明らかです。認定の有無が管理状態を確認する指標となるでしょう。
(2)管理における問題点を可視化し改善できる
管理認定制度は、マンション管理における問題点を可視化し、改善しやすいのもメリットです。
認定基準をひとつひとつチェックし改善点を洗い出すことで、今やるべきことを明確に理解できます。
問題点がわかりやすいため、区分所有者間で共通認識をもちやすく、スピード感のある対応がしやすくなるでしょう。
(3)資産価値および居住価値を向上できる
「管理計画認定制度の認定を受けているマンション」というのはそれだけで、ほかのマンションと差別化でき、強みになります。
この先長く安心して住めるマンションを探している方にとっては、購入決定の背中を押す理由の一つになるでしょう。
また、管理組合が一丸となって、認定を受けるために管理面に意識を向けていくことで、住みやすさ、居住価値の向上にも繋がります。
マンションの管理状況を外部に向けてアピールするだけでなく、居住者や区分所有者にとっても管理組合運営の関心が深まるなどのメリットにもなるのです。
(4)共用部リフォーム融資の金利が年0.2%下がる
管理計画認定制度の認定を受けているマンションは、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が年0.2%引き下がります。
マンション共用部分リフォーム融資とは、マンションの共用部分をリフォームしたり、耐震改修する場合に工事費用を融資する制度のことで、屋上防水や外壁塗装などの外部工事のほか、廊下の補修やオートロック設置などの内部工事も対象となる融資です。
上記の工事に際して徴収する区分所有者負担の一時金も対象になります。工事金額が大きい大規模修繕工事などを控えており、融資を検討しているマンションは要チェックです。
(5)マンションすまい・る債の利率が上乗せされる
管理計画認定制度の認定を受けているマンションは、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率が上乗せされます。
マンションすまい・る債とは、修繕積立金の積み立てをサポートするための利付10年債権です。1口50万円から、最大10回まで連続で購入できます。
国の認可を受けて発行されているため信頼でき、途中換金や残高証明書発行などの手数料もかかりません。
2023年度は、通常の税引き前の10年満期時平均利率は0.475%、上乗せ後は0.525%の利率でした。次回募集は2024年4月中旬から10月中旬の予定です。気になる方は、チェックしておきましょう。
(6)管理計画認定制度で固定資産税を減額できる
管理計画認定制度は固定資産税を減額できる可能性があることもメリットです。
2023年度の税制改正により「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」(マンション長寿命化促進税制)が創設されました。
マンション長寿命化促進税制では、管理計画認定制度で認定を受けたマンションなどを対象に、長寿命化工事がおこなわれた場合、工事が実施された翌年の建物部分の固定資産税が6分の1~2分の1減額されます。対象の工事完了期間は令和5年4月1日から令和7年3月31日です。
そのほか以下3つの条件があります。
・築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること
・長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること
・長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること
参照:国土交通省「マンション長寿命化促進税制が創設されます!~マンションの長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を支援します~」
管理計画認定制度のメリット(購入予定者)
管理計画認定制度はマンション居住者や区分所有者だけでなく、購入予定者にもメリットがあります。
・マンション選びの判断基準になる
・フラット35(維持保全型)の借入金利が年0.25%下がる
順にみていきましょう。
(1)マンション選びの判断基準になる
管理計画認定制度の認定を受けているか否かは、マンション選びの判断基準のひとつになります。
後悔のないマンション選びをするには、マンションの立地や価格、設備など目に分かりやすく目に見える条件だけでは不十分です。現状はなにも問題ないように見えたとしても、管理が不十分だと、将来的に修繕積立金が不足するなど、厳しい状況に陥るでしょう。
管理計画認定制度は2020年に創設されたばかりです。これまではマンションの管理状況を購入者が判断するのは難しく、マンション管理については、あまり注目されていませんでしたが、これからは、購入する際の判断基準として活用できるでしょう。
(2)フラット35(維持保全型)の借入金利が年0.25%下がる
管理計画認定制度で認定を受けているマンションの購入者は、フラット35(維持保全型)が適用され、借入金利が通常よりも年0.25%下がります。
フラット35(維持保全型)とは、維持保全や維持管理に配慮した住宅を購入する際に適用される融資です。対象となる住宅はいくつかありますが、管理計画認定を受けているマンションも該当しています。
予算金額に達すると受付は終了です。随時公式サイトで公表されますので、利用予定のある方は確認しておきましょう。
管理計画認定制度で管理力向上に努めよう
管理計画認定制度によりマンションの管理力を上げることで、資産価値・居住価値の向上だけでなく、減税などの金銭的な恩恵も受けられます。
認定を受けたマンションは、マンション購入を検討している方からも「管理面での意識が高い」「安心して長く住めそう」などと評価されることでしょう。
マンションにとってよいこと尽くしのため、まだ認定を受けていないマンションは、認定に向けて動き出すことをおすすめします。
管理計画認定制度で認定を受けるためには、まず認定基準に則り、自分のマンションの管理状況を把握し、改善していくことが重要です。認定基準は、一般的な管理組合であれば、すでにクリアしている基準が多いですが、長期修繕計画については、作成または見直しから7年を超えていたり、一時金の徴収が予定されてたり、修繕積立金の平均額が著しく低額であったりと、クリアが難しい状況にある管理組合が多いようです。
長期修繕計画の作成または見直しや、修繕積立金の増額改定サポート業務はさくら事務所の得意な業務の一つです。管理組合向けのサービスについては、これまで650組合の実績があります。実力のあるマンションコンサルタントが第三者的な立場でマンションの長期修繕計画もチェックさせていただきます。あなたのマンションの現状から未来を予見し、適切な計画をご提案させていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。