前回のコラムでは、新築マンションの2年目アフターサービスの有効活用のために必要なことについてお話ししました。
少しでも気になる事があれば、面倒がらずアンケートに書いて申告しましょう、という内容だったのですが、
今回は「なんとなくおかしい」と感じた違和感をマンションの住人の方が申告したことで、重大な不具合の発覚につながった具体例をご紹介します。
マンションの怪!人がいないのに開く自動ドア
都内のある物件で、2年目の定期補修が近づいた理事会にデベロッパーのアフターサービス担当者(以下担当者)が出席していました。
細かなトラブルが続いたこともあり、理事会メンバーと担当者は無償で補修できる2年目定期補修までに、問題を出し尽くしておこうと話し合っていたのです。
担当者は「この際だから、少しでも気になることは言ってください」と促し、それに促されるように理事の一人が「こんなことを言うのは恥ずかしいのですが・・・」と切り出しました。
「エントランスから駐車場に抜ける自動ドアが、人がいないのに開く気がするんですよ」
その理事は入居時から勝手に開く時があるような気がしていたが、オカルトちっくな話なので言い出しにくかったと言います。
すると理事長も含め他の数人の理事も「実は自分も思っていた」と言い出し、ほぼ全員が人がいないのに自動ドアが開くときがあると思っていたことがわかりました。こうなると気のせいでは済みません。
複数の目撃証言をもとに、再現してみると・・・
複数の目撃状況を整理すると、機械式駐車場に車を停めるときに目撃した人が多いことがわかりました。
機械式駐車場と自動ドアが連動していることはありえないのですが、それでも状況を再現してみることに。全員で駐車場に行き、理事長が自分の車を出します。
驚いたことに、理事長の車を載せたパレットが着床し正面のゲートが開くと、数十メートル離れたところにあるエントランスの自動ドアが開いたのです。
理事長は何度も車を出し入れしますが、ほぼ確実に自動ドアが開きます。
担当者は業者にこんな話をしても信じないだろうと考え、勝手に開く様子をビデオで撮影して各業者にメールで緊急の集合を求めました。
驚いてかけつけた各業者のみなさん
ゼネコン、設計事務所、機械式駐車場メーカー、自動ドアメーカーと施工店、鍵メーカー、警備会社が一堂に集まり、原因の検証が始まります。
長時間の検証の結果、機械式駐車場の電源やケーブルは絶縁されているのですが、それでもなんらかの電磁波を発していて、それが自動ドアのスイッチに干渉しているのだろうと推察されました。
機械式駐車場メーカーが、ケーブルの絶縁処理をすると勝手に開くことはなくなりました。
施工ミスはなかったのか
機械式駐車場の施工に問題があったのではないかと、誰もが考えました。しかし絶縁は適正で、配線にも問題はありませんでした。
そもそも自動ドアのケーブルは建物の中を通っていて、機械式駐車場のケーブルと電源は外にあります。
施工ミスと言えるほどのものは見つからず、この件はメーカーでも再度検証することになりました。
自動ドアも機械式駐車場も竣工検査の時に、ゼネコン、設計事務所、売主がそれぞれ検査をしています。
合計3回も行われた検査で、このような現象には誰も気が付かなかったのです。
定期補修では疑問を口にすることが大事
自動ドアメーカーによると、過剰な電圧に曝されていたのだから故障の原因になりえたかもしれないとのことでした。
この件は「オカルトみたいな話でバカにされそう」と考えていた理事が、思い切って口を開いたことから発見することができました。
もし理事の発言がなければ、なんとなく自動ドアがよく壊れるということになり、アフター期間を過ぎてから管理組合負担で修理することになっていたかもしれません。
また頻繁に壊れることで売主が責任を求められ、売主が負担して何度も自動ドアを工事することになったかもしれません。管理組合も売主も無駄な出費をせずに済みましたし、なにより住んでいる方の不安が払しょくされました。
気になることがあれば、それを口に出しましょう。それが結果的に全員を助けることになることもあるのです。