大規模修繕2回目は資金不足に注意!成功させる6つのポイントを解説

築24年~30年目のマンションでは、2回目の大規模修繕工事が検討されているのではないでしょうか?

2回目の大規模修繕は、前回の経験があるため、スケジュール感や全体の流れをイメージしやすいです。しかし、1回目とは工事の内容や工事項目が異なるため、資金面で苦労するケースが多く見受けられます。

2回目の大規模修繕について理解がないと「修繕積立金が足りなくて必要な工事ができない」ということにもなりかねません。

そこで、本記事では1回目と2回目の大規模修繕の違いや2回目の大規模修繕を成功させるポイントを解説します。資金不足の対処法についても紹介するので、2回目の大規模修繕を控えている方はぜひ参考にしてください。

大規模修繕2回目は1回目より工事金額が増額する

2回目の大規模修繕をおこなうときは、1回目よりも10年以上築年数が経過しています。その分劣化が進み、工事個所が増えたり、ひとつひとつの工事がより大がかりなものになったりするため、2回目の大規模修繕のほうが、工事金額が増額する傾向です。大規模修繕の工事回数と金額について、以下のグラフをご覧ください。

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」をもとに作成

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、上記のグラフのとおり、大規模修繕1回目は「4,000~6,000万円」2回目は「6,000~8,000万円」3回目は「6,000~8,000万円」「10,000~15,000万円」の割合が多く、回数を重ねるごとに工事金額が高くなっていることがわかります。

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

大規模修繕2回目の工事内容

2回目の大規模修繕のおもな工事内容は以下のとおりです。

・屋上防水の撤去・新設

・外壁塗装の除去・塗装

・建具金物などの取替え

・給排水管の取替え

・貯水槽の取替え

・ガス管の取替え

・エレベーターのリニューアル

・立体駐車場の建て替え(自走式駐車場)

大規模修繕1回目に補修で済んでいた項目も、2回目になると新しいものへの取替えが必要です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」でも、2回目は1回目よりも外壁塗装・屋根防水・建具金物等などの費用割合が増えるといった結果がでています。

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

大規模修繕2回目はいつやる?

2回目の大規模修繕をおこなうべきタイミングは、マンションによって異なります。ここでは「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」をもとに「築年数」と「修繕周期」2つの観点から、2回目の大規模修繕がいつ実施されているのかみていきましょう。

築年数

工事回数ごとの築年数について、以下の表をご覧ください。

大規模修繕の回数 築年数の中央値 築年数の平均値
1回目 15年 18.2年
2回目 28年 29.4年
3回目以上 40年 37.3年

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査≪2≫マンション大規模修繕工事について」

2回目の大規模修繕が実施されるときの築年数の中央値は28年、平均値は29.4年という結果がでています。割合でみると、もっとも多いのが築26年~30年で47.2%でした。これらの結果から、2回目の大規模修繕をおこなうタイミングは「築30年を迎える前」が目安といえるでしょう。

修繕周期

工事回数ごとの修繕周期は以下の表のとおりです。

大規模修繕の回数 修繕周期の中央値 修繕周期の平均値
1回目 14年 15.6年
2回目 13年 14年
3回目 13年 12.9年
4回目以上 13年 13.1年

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査≪2≫マンション大規模修繕工事について」

大規模修繕2回目の周期は中央値が13年、平均値が14年という結果がでています。竣工から1回目の大規模修繕までの周期よりも、1回目から2回目、さらには2回目から3回目の大規模修繕までの周期のほうが短いのが特徴です。

周期が短くなるということは、修繕積立金を積み立てる期間も短くなることを意味します。単純に工事項目が増えることで資金不足が懸念されるだけでなく、周期が短くなることも資金面で苦労するひとつの理由といえるでしょう。

大規模修繕2回目を成功させる6つのポイント

大規模修繕2回目を成功させるポイントは6つあります。

・こまめにメンテナンスする

・長期修繕計画を見直しておく

・専門家の劣化診断を活用する

・大規模修繕1回目の経験を活かす

・居住者のニーズの変化に対応する

・マンション性能を向上させる

順に詳細を解説します。

(1)こまめにメンテナンスする

実は「大規模修繕工事」の定義はなく、一般的には、足場をかけて行う計画的な修繕のことを大規模修繕工事と言っています。

したがって、大規模修繕工事を待たずとも、日常生活に支障がでるような建築上、設備上の不具合があれば、必要な修繕は先送りせずに実施しましょう。こまめにメンテナンスしていれば、修理費用をおさえられる工事もあります。単独でできる工事は大規模修繕を待たずに実施することも視野に入れておきましょう。

築年数が経過すればするほど、修理箇所が増えて修理コストがかさむため、1回目より2回目、2回目より3回目と、資金繰りが厳しくなってきます。こまめなメンテナンスと先を見越した修繕計画が大切です。

(2)長期修繕計画を見直しておく

1回目の大規模修繕が終わった段階で、長期修繕計画を一度見直してみましょう。大規模修繕は計画通りに進むとは限りません。追加工事が発生するなど、計画よりもコストがかかっていることも。逆に、実際に工事を行ってみたことで、不要な工事が計上されていれば、見直しで省くこともできます。また、人件費や資材費は、毎年変わっていくものですので、微修正していかなければ、2回目以降の大規模修繕工事を迎えるころには現実的ではない長期修繕計画になっている可能性も高く、資金不足という形でしわ寄せがきます。

また、修繕積立金の徴収が段階増額積立方式になっているのに、徴収額が据え置きになっていることも少なくありません。長期修繕計画に見合った資金を確保できるのかも確認しておきましょう。

(3)専門家の劣化診断を活用する

大規模修繕の前に専門家の劣化診断を活用するのがおすすめです。できれば管理会社や施工会社とつながりがなく、客観的に調査できる第三者的立場の専門家に相談すると良いでしょう。第三者的立場の専門家であれば、大規模修繕工事は今必要なのか?といった工事実施のタイミングからアドバイスすることができますし、工事費用をもらって稼ぐ立場ではありませんので、不要な工事を省くなど適切な工事内容をアドバイスすることができるため、修繕積立金の倹約にもつながり、マンションにとってベストな大規模修繕になるでしょう。

劣化診断を実施することで、工事の優先順位も把握できるため、どの修繕工事を優先するか検討することができ、資金不足で悩んでいるときにも役立ちます。公平な視点で診断してもらうためにも、施工会社や管理会社と関係のない第三者の専門家に依頼するとよいでしょう。

(4)大規模修繕1回目の経験を活かす

2回目の大規模修繕は、1回目の経験から得たノウハウを存分に活用しましょう。工事の内容は1回目とは異なりますが、全体像がわかるため修繕委員の立ち上げから工事完了までのおおまかな流れは想像できます。

1回目の反省点を活かすためにも、改善の余地があったことについて洗い出しておいたり、1回目の修繕委員を務めた方にアドバイスをもらったりと、前回の経験を無駄にしないように振り返り、2回目の大規模修繕に活かしましょう。

(5)居住者のニーズの変化に対応する

2回目の大規模修繕は、新築時から30年近く経過しています。居住者の年齢層が上がるなど属性が変わっている可能性が高く、マンションに求められるものも変化しているはずです。

セキュリティ強化やバリアフリー化など居住者のニーズにあった工事ができれば、居住者の満足度を向上させられます。工事中は生活が制限されるなど居住者の負担が大きいですが、生活をよりよくするための工事があれば、気持ちよく協力してもらえるでしょう。

(6)マンション性能を向上させる

新築当初よりもグレードの高い設備に変更したり、耐震や省エネなどで付加価値をつけたりと、マンションの性能を向上させることも検討しましょう。

築年数が経過するほど、手を入れなければマンションの資産価値が下がっていくのは避けられません。マンションの性能が上がれば、資産価値の低下を防止でき、居住者の生活の質が上がるため、入居率の維持にもつながります。

大規模修繕2回目の費用が払えないときの対処法

資金不足が原因で必要な修繕ができない場合は、以下の方法を検討しましょう。

・助成金や補助金を活用する

・複数の業者に見積もりを依頼する

・見積額の妥当性を調べる

・修繕積立一時金を徴収する

・金融機関から仮入れる

特定の塗料を使用した外壁塗費用など、自治体によって助成金や補助金がでることもあります。申請まで時間がかかるものもあるため、気になる方は、自治体のホームページで確認しておきましょう。

また、複数の業者に見積もりを依頼したり、第三者の専門家に見積もりの妥当性を確認してもらったりすることで、工事項目を減らすことなく、金額を下げられるかもしれません。管理会社に、工事業者の選定を任せきりにせず積極的に関わっていきましょう。

修繕積立一時金を徴収したり金融機関から借入れたりする方法もあります。しかしデメリットやリスクも多いため、慎重に検討しましょう。

大規模修繕のコストについては、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

大規模修繕工事の費用相場!修繕積立金の算出方法や安く抑える方法を解説

マンションの現状を把握して大規模修繕2回目に備えよう

2回目の大規模修繕の周期は13年、築28年頃が目安です。1回目の経験を活かせるのは2回目の大規模修繕の強みですが、工事金額が1回目より高くなる注意点があります。

資金不足に陥らないためにも、事前に長期修繕計画を見直しておくこと、劣化状況に見合った過不足ない工事をすることが大切です。財政状況を把握し、余裕をもって2回目の大規模修繕に挑めるように備えましょう。

さくら事務所では大規模修繕に向けた、建物劣化診断をおこなっています。「マンションの劣化状況を把握しておきたい」「見積もりが高すぎたため工事内容を精査したい」といった管理組合の皆さまにおすすめです。マンションの管理・建築に精通した専門家が、第三者の立場で公平に診断するため、安心してお任せください。

そのほか、長期修繕計画の作成・見直しも実施中です。これまで、650組合のマンションをみてきた豊富な経験から、あなたのマンションの未来を正しく予見できるため、より実態に則した長期修繕計画を提案できます。

長期修繕計画を見直すことで大幅にコストを削減できる可能性がありますので、ぜひこの機会にご活用ください。

[建物劣化診断]マンション大規模修繕工事に向けた第三者調査

長期修繕計画の見直し・作成

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