マンションの排水管の交換時期は?費用負担や相場、工事中の注意点を解説

排水の流れにくさや異臭など、排水管に不具合が生じていると「交換が必要?」と心配になる方もいるのではないでしょうか。高圧洗浄で解決するケースもありますが、排水管の寿命が近づいていたり破損していたりすると、新しい排水管に交換しなければいけません。

排水管交換は大がかりな工事で、費用も高額になるため、マンションの場合「誰が工事費用を負担するのか」も気になるところです。

そこで本記事では、マンションの排水管の交換時期や費用相場、費用負担について解説します。排水管トラブルに悩んでいるマンション居住者の方、排水管交換工事のタイミングが近づいている管理組合のみなさんは、ぜひ参考にしてください。

マンションの排水管交換時期の目安

マンションの排水管を交換するタイミングは「排水管が耐用年数に到達するとき」と「排水管の不具合が多発するとき」です。詳しく解説します。

耐用年数に到達するとき

排水管交換工事は大規模修繕工事のひとつです。竣工時から一度も長期修繕計画を見直していない場合、排水管の交換工事が計画されていないことがありますので、確認してみましょう。、排水管の交換工事時期は、排水管の耐用年数によって変わります。。マンションの排水管の耐用年数の目安は以下の表のとおりです。

排水管の種類 耐用年数
銅管 20~25年
硬質塩化ビニル 20~25年
鋳鉄管 30年

排水管の材質によって、耐用年数は異なります。メンテナンスの頻度や使い方によっても、多少前後しますが、築年数が古いほど耐用年数の短い排水管が使われているケースが多いです。

「排水トラブルがないから大丈夫」と過信せず、耐用年数に到達するまでには、排水管交換工事の実施を推奨します。

排水管の不具合が多発するとき

耐用年数に到達していなくても、排水管からの水漏れ・排水不良・排水の逆流などの不具合が多発する場合は、排水管交換のタイミングかもしれません。

とくに「同じ住戸で何度も排水トラブルが起きる」「複数の住戸で同時期に不具合が起きる」ときは、排水管が劣化している可能性があります。

高圧洗浄などで改善することもありますが、メンテナンスしても再発する場合は排水管の寿命が近づいていると判断できるでしょう。

マンションの排水管交換工事の費用負担

マンションの排水管交換工事の費用を負担するのは、施工不良でない限り「管理組合」または「居住者(区分所有者)」です。それぞれ詳しく解説します。

管理組合の負担

管理組合の負担になるのは、共用部分にある排水管の交換です。工事にかかる費用は長期修繕計画にも組み込まれています。

ただし、排水管はマンション全体で繋がっているので、専有部と共用部の区別について規約を見て費用負担を確認するなど、注意が必要です。
たとえば、専有部の排水管だとしても床のスラブ下にある横引き管は、自室からメンテナンスや点検ができないため、共用部と判断され管理組合の負担になります。

居住者の負担

専有部の排水管交換工事は、基本的に居住者の負担です。前述したとおり、スラブ下にある専有の横引き管は共用部分になりますが、スラブ上にある横引き管は専有部のため、居住者が工事費用を負担します。

専有部と共用部で費用負担者は異なりますが、無駄な費用をかけずに効率的に実施するためには、どちらの排水管も同時に工事するのが理想です。

専有部の排水管交換工事の留意点

専有部と共用部、同時に実施するのが望ましい排水管交換工事ですが、費用の負担がネックになり、工事に非協力的な居住者がいるのも事実です。

排水管交換工事を拒否し続ける居住者がいた場合、ほかの居住者の排水トラブルにも発展します。大きな漏水事故があればマンションの価値を下げてしまうこともあるでしょう。

そこで国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」のコメントが令和3年6月に改正され、以下の条件をクリアすると管理組合の負担で工事できると記載されました。

・専有部と共用部の配管の取替えを同時におこなうことで工事費用が減額する
・あらかじめ長期修繕計画に専有部分の配管の取替えについて記載する
・工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定する
・先行して工事を行った区分所有者への保証の有無等に十分留意する

排水管のトラブルを未然に防止するためにも、専有部の排水管工事について考えておく必要があるでしょう。

参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメントの改正点」

マンションの排水管交換工事の費用相場

マンションの排水管交換工事の費用相場は、以下の表のとおりです。

交換する範囲 費用相場
専有部の排水管(戸当たり) 40~70万円
共用部の排水管(戸当たり) 40~70万円

排水管交換工事の費用は、排水管の長さや作業の難易度などにより大きな差があります。壁や床を壊す必要があるときは、内装工事代もかかるため、100万円近くかかることも少なくありません。

上記費用はあくまでも目安です。決して安くはない金額なので、複数の業者に見積もりを依頼したり、専門家のセカンドオピニオンで見積もりの妥当性を確認したりと、業者選びは慎重におこないましょう。

排水管交換工事が高額になる5つのケース

排水管交換工事は費用相場の幅が広いため、ここでは高額になりやすい以下5つのケースを紹介します。

・縦管の本数が多い
・排水管が長い
・排水管がコンクリートに埋まっている
・排水管交換時の作業スペースが狭い
・内装のグレードが高い

順番にみていきましょう。

(1)縦管の本数が多い

縦管の本数が多いと、当然交換する排水管が多くなるため、工事料金が高くなります。キッチン・浴室・トイレなどの排水管がそれぞれ独立しているのか、まとまっているのか、排水管の設計を確認してみましょう。

(2)排水管が長い

交換する排水管が長い場合も、工事料金は高くなります。水回りが広めのファミリーマンションは、水回りがコンパクトなワンルームマンションよりも、床や天井に配置されている排水管が長いのが特徴です。

排水管が長いことで、作業量や交換工事に伴う内装修理の復旧範囲も増えるため、その分金額がかさみます。

(3)排水管がコンクリートに埋まっている

マンションの床下は、躯体コンクリートと床材の間にピットが設けられ配管をとおしているケースと、躯体とのすき間なく床材が貼られており、排水管がコンクリートに埋まっているケースに分かれます。

ピットがあれば、比較的容易に交換工事ができますが、ピットがない場合、コンクリートを壊さなければ工事できません。より大がかりな作業になるため、その分工事料金が高くなります。

(4)排水管交換時の作業スペースが狭い

排水管交換時の作業スペースが狭いと、そのままでは工事できないため、作業スペースを確保しなければいけません。壁を壊すなどの追加工事が発生し、作業時間も長引くため、工事料金が高くなります。

どの程度作業スペースがあれば、壁を壊さず工事できるのか判断するのは困難です。実際に工事業者に現場や図面で確認してもらいましょう。

(5)内装のグレードが高い

排水管を交換するときは、床や壁を剥がす作業が必要です。排水管交換後に内装は復旧させますが、グレードの高い内装材をつかうほど、内装工事費用は高くなります。

工事のタイミングで内装材をグレードアップさせたい方は、その分高額になることを覚えておきましょう。

マンションの排水管交換工事の注意点

マンションの排水管工事は、居住者の理解と協力が不可欠です。排水管交換工事をする際は、以下3つの注意点をよく理解し、進めていきましょう。

・専有部分への立入りが必要
・排水が使えなくなる
・作業中は大きな音がでる

順に解説します。

専有部分への立入りが必要

排水管交換工事では、作業員が専有部に立ち入るため、居住者の立会いが必要です。排水管交換工事は高圧洗浄などと違い、壁や床を壊したり修復したりと作業時間も長くなります。

居住者の負担が大きいため、排水管交換工事の必要性をしっかり共有し、スムーズに作業できるようにしておきましょう。

排水が使えなくなる

基本的に工事期間中は排水を使えません。夜間のみ排水を使えるように配慮してもらえる業者もあるため、事前に確認しておきましょう。

ただし、夜間に排水できたとしても、洗面台やトイレが取り外されていれば使えません。いずれにしても不便な生活を送らざるをえないことをよく説明・理解しておきましょう。

作業中は大きな音がでる

室内での工事はもちろん、パイプシャフトなどの室外での工事でも、作業中は大きな音が生じます。在宅ワークができなかったりテレビの音が聞こえなかったりと、精神的ストレスは大きなものになるでしょう。

立会いが不要なときは外出するなど、工夫しながら過ごしてください。管理組合の皆さんは、工事業者と連携しながら、なにかあったときの相談窓口を設けるなど居住者への配慮を心掛けましょう。

排水管交換工事でマンションの排水トラブルを防ごう

築年数の経過とともに、徐々に排水管は劣化していきます。材質にもよりますが、最近のマンションであれば40年前後使っている排水管は、交換の時期が近づいているといえるでしょう。

排水管の劣化は目視するのが難しく、トラブルが起きてから気がつくケースも少なくありません。長期修繕計画で適切な交換時期が設定されていればよいですが、なかには建設当初の長期修繕計画を見直していないことも。誤ったタイミングで交換工事してしまうマンションもあるのです。

さくら事務所では、マンションの劣化診断や長期修繕計画の見直しサービスを実施しています。これまで650組合を超えるマンションを見てきた専門家が、あなたのマンションに出向いて調査可能です。

長期修繕計画ありきではなく、マンションの実態から将来像を予見し「本当に今やるべき工事なのか」管理会社や施工会社と利害関係のない第三者として、的確にアドバイスいたします。優先順位をつけたうえで、時期を遅らせられる工事があれば、修繕積立金の無駄遣いを避けられるでしょう。

そのほか、大規模修繕工事の見積書チェックもおこなっているので、セカンドオピニオンとしてもご活用いただけます。

「長期修繕計画をずっと見直していない」「修繕積立金不足で悩んでいる」といった管理組合の皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

また、以下の動画でも詳しく解説をしていますので、気になる方はぜひご覧ください。
https://youtu.be/iRjmTXRHWqg

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