建物(劣化)診断とは?劣化状態を把握して適切にメンテナンスしよう

建物劣化診断とは、建物の劣化状況を調査することです。

一般的に大規模修繕に向けて実施することが多いですが、有効な使い方はそれだけには留まらないんですよ!

本記事では、建物診断や当社が実施する劣化診断をおこなうことのメリット・具体的な内容・費用・注意点について詳しく解説します!

建物(劣化)診断の目的

物劣化診断には、おもに以下2つの目的があります。

・劣化状況を把握する

・地震などの災害に備える

(1)劣化状況を把握する

建物劣化診断をして劣化状況を正しく把握することで、今やるべき工事と過剰な工事を見極められます。

また、工事項目ごとの緊急度も明確にわかるので修繕計画の優先順位をつけるための判断材料としても活用できるでしょう。結果、大規模修繕工事の時間短縮や費用削減に繋げられるのです。

(2)地震などの災害に備える

地震が起こった時にどの程度の揺れに耐えられるかをチェックできるのも、建物劣化診断のメリットです。

耐震性に問題があるとわかれば、診断書をもとに素早く補強工事を依頼できます。

建物(劣化)診断のおもな調査内容

建物劣化診断は、建築士などの専門家が、竣工(しゅんこう)図面や改修履歴・アンケート調査・現地調査(目視・触診・機械調査)から診断します。おもな調査内容は、以下のとおりです。

・共用部

・外壁

・屋上防水

・鉄部塗装

共用部

居住者が共同で管理する共用部(バルコニー、廊下など)の建物劣化診断では、竣工図面や過去の修繕履歴を確認して劣化が発生しやすい箇所を把握する予備調査をした後、実際に専門家が現地入りして外観や廊下などを直接診断します。

また、理事会関係者と日程調整をおこなったうえ、バルコニーの立ち入り調査することも。さらに、居住者に対してアンケートを実施して、専門家が診断した個所以外にも、日常生活で感じた問題点も確認します。

外壁

外壁の塗装や接着の劣化状況を診断します。まず、目視や打診棒でタイルを叩き塗料やタイルの剥がれをチェック。次に、専門器具を使って接着強度を確認します。

とくに、タイルの落下事故が懸念される場所を重点的に、足場・高所作業車・ゴンドラ等を使って調査するのが一般的です。

最後に、目視や打診が難しい箇所を赤外線調査によって劣化状況を診断します。赤外線調査とは、赤外線映像装置で外壁の表面温度を測定する調査です。遠隔から実施するので、高所でも安全に信憑性の高い調査ができます。

屋上防水

屋上の防水加工の劣化状況を診断します。防水加工にはおもにアスファルト防水・塗布防水・シート防水などがあり、加工方法によって調査の仕方も変わります。

また、場合によっては目視や打診調査に加えて屋上防水に穴を空けてボーリング調査することも。防水加工以外には、排水口の詰まりをチェックするなど、屋上排水の機能なども診断範囲に含まれています。

屋上の防水機能が低下すると、建物全体の劣化に繋がりやすく大規模修繕時に高額な費用が発生する場合があるので、建物劣化診断でできるだけ早く不具合を発見することが大切です!

鉄部塗装

鉄部とその塗装の劣化状況を診断します。建物の鉄部は、さびや剥がれが起きやすく劣化が進みやすい部分です。耐用年数は3~6年と言われています。

マンションの鉄部塗装は、おもに以下のような場所にあります。

・鉄骨の外階段、手すり

・非常階段の扉、手すり

・エレベーターの扉、枠

メーターボックス

・駐輪場、駐車場

・給水管

鉄部塗装はさまざまな個所で用いられており、各所の不具合を放置していると劣化が拡大し、大規模な工事や交換作業が必要になることも。建物の安全性にも関わってくる重要な部分ですから、劣化診断による正確な調査はマンション管理においてとても重要です。

建物(劣化)診断の費用相場

建物劣化診断の費用相場は、建物の規模によっておおよそ以下の通りです。あくまでも目安なので、実際にいくらかかるかは業者に見積り依頼して確認してください。

建物の規模 費用相場
小規模 20~40万円
中規模 30~80万円
大規模 50~100万円

建物劣化診断には無料なものもありますが、費用がかからない代わりに調査方法が目視や打診のみにとどまる簡易的な方法となります。

無料診断で発見できる不具合は限定的ですので、正確に建物の劣化状況をチェックするためには専門機器を使って精密検査をしてもらえる有料診断がおすすめです!

建物(劣化)診断するタイミング

建物劣化診断をするベストなタイミングは、大きくわけて2回あります!

・大規模修繕の修繕委員の発足後

・長期修繕計画の見直し・作成時

大規模修繕の修繕委員の発足後

大規模修繕の修繕委員発足後すぐに建物劣化診断をおこなえば、結果をもとに工事内容を決められます。

ポイントは、工事実施を前提に劣化状況を確認するのではなく、「工事の必要性の有無」を判断するために建物劣化診断を実施するということです!

施工業者による建物診断の後のセカンドオピニオンとして利用してもよいでしょう。工事資金が足りないときには過剰な修繕項目を削除することで、一時金の徴収を避けられるかもしれません。

長期修繕計画の見直し・作成時

建物劣化診断は、大規模修繕のときだけではなく、長期修繕計画を作成・見直すときにもおすすめです!

今の建物の劣化状況を正しく把握することで、直近の大規模修繕からの期間を元に、どれくらいの周期で修繕工事をおこなえばよいかがわかります。

一般的に大規模修繕は約12年に1度と言われていますが、建物のタイプや劣化状況によって必要な頻度は変わりますから、自分のマンションのベストな修繕頻度を明確に出すことが費用削減のポイントです。

また、修繕積立金も管理組合によって違いますから、事前に建物劣化診断をすれば、大規模修繕のコストを抑えられ、修繕積立金の値上げを防げます。

建物(劣化)診断を依頼するときの注意点

メリットの多い建物劣化診断ですが、依頼時には以下のポイントに気をつけましょう!

・第三者の専門機関に依頼する

・過剰な調査を提案されることがある

第三者の専門機関に依頼する

建物劣化診断を施工会社や管理会社に任せきりにすると、工事の追加はあっても、削減はされにくいというケースがあります。結果として、建物劣化診断を有効活用できないことも…。

施工業者や管理会社と利害関係のない第三者機関に建物劣化診断を依頼すれば、損得勘定なしで公平に診断してもらえます。

また、業者選びを管理会社任せにせず、修繕委員が積極的に関わることで、過剰な工事を延期できるなど、建物劣化診断の有効活用が可能です。

建物劣化診断は、出来るだけ第三者の専門機関に依頼しましょう!

過剰な調査を提案されることがある

大規模修繕工事に向けて行われる建物劣化診断では、過剰に調査されることも珍しくありません。たとえば「コンクリートの中性化試験」や「タイルの引張力試験」は1回目の大規模修繕工事を迎える築年数のマンションではほぼ不要な調査なのですが、提案・実施してしまう業者も…。

調査項目が増えると料金も増額されるため、築年数に関わらずフルパックの調査を提案されたときには要注意です!

診断内容や結果に疑問があるときには、セカンドオピニオンを利用することも検討してください。

建物診断を有効活用して大規模修繕を成功させよう

建物劣化診断は、マンションの今の劣化状況を知ることで大規模修繕のコスト削減、災害への備え、収益性の確保などに役立てる有効なサービスです。

一方で、多くのマンションでは大規模修繕を実施する前提で行われていますが、そもそも建物劣化診断とは「今、大規模修繕が必要か?」をチェックすることが一番大切ということをぜひ知ってください!

さくら事務所では、工事を受注・斡旋しないため、第三者として建物の劣化診断が可能です。

大規模修繕ありきではなく、本当に工事を実施すべきタイミングをアドバイスし、不要な調査・提案をせず、無駄な費用をかけない、公正な立場のサービスを提供しています。セカンドオピニオンとしてもぜひご活用ください。

[建物劣化診断]マンション大規模修繕工事に向けた第三者調査

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