マンション大規模修繕の足場費用を解説!単価や計算式、5つの注意点を解説

マンションの大規模修繕工事では、作業員が高所での作業を安定して、また安全を確保しながら行えるよう足場を設置することがほとんどです。この費用は「足場費用」といって、大規模修繕工事の費用の一環として管理組合(居住者)の修繕積立金から支払うことになります。

わたしたちが足場費用の相場を知って費用の妥当性を考えることは、適切な金額で大規模修繕を行うための大事なポイントになるのです。

そこで本記事では、マンション大規模修繕の足場費用について、最新の相場・安くする方法・注意点などの役立つ情報をご紹介します。

マンション大規模修繕工事の足場費用

大規模修繕工事とは、マンションの経年劣化した箇所を中心に十数年に一度のサイクルで定期的に補修をする工事のことです。1回目の工事、2回目の工事、3回目の工事で実施する内容はそれぞれ異なりますが、一般的に大規模修繕工事において足場にかかる費用は2~3割程度と言われています。

しかし、より具体的に見ていくと、「何回目の工事か?」によって全体費用に占める足場費用の割合には若干の違いが出てきます。

ここでは「足場の費用相場」「足場の種類と㎡単価」「足場費用の計算方法」についてみていきましょう。

足場の費用相場

下記グラフは、マンション大規模修繕工事の回数別に「どんな工事にどの割合、費用がかかっているのか?」を示したものです。

・建築系工事…屋根防水、床防水、外壁塗装、外壁タイル、シーリング工事など

・設備系工事…給水設備、排水設備、ガス設備、空調・換気設備、電灯設備等、情報・通信設備、消防用設備、昇降機設備、駐車場設備など

・外構・付属施設…塀、門扉、舗装、フェンス、緑化施設、庭園など

・仮設工事…仮囲い、足場、養生、工事用電力、用水、仮設トイレなど

この中で、足場費用は「仮設工事」に入っています。

グラフによると、仮設工事の費用割合がもっとも高くなる時期は1回目だということがわかりますね。

足場費用を見直してもっとも得するタイミングは1回目大規模修繕工事の発注時といえるかもしれません。

出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査≪2≫ マンション大規模修繕工事について」

足場の種類と㎡単価

足場費用は、種類によって単価が変わります。

・枠組み足場…足場の中でもっとも使われている足場。地上45m(15階ほど)まで施工可能。足幅が広いため設置にはスペースが必要。外壁塗装や工事で使われることが多い。㎡単価1,000円〜1,500円

・くさび緊結(きんけつ)式足場…低中層建築や狭小地などで使用されることが多い。組み立て・解体が簡単でコストパフォーマンスも高いが、ハンマーを打ち込むため設置時と解体時に大きな音が出ることも。㎡単価800円〜1,200円

・単管(たんかん)足場…シンプルで簡易的な足場。狭いスペースに設置できるのがメリットだが、床が無いため強度と安全性が比較的低い。また、作業ペースの狭さからほかの足場使用時より工事に時間がかかる場合も。低層マンション向き。㎡単価500円~800円

・吊り足場…上から吊り下げて設置する足場。ビルの吹き抜けや橋などの高所作業で使われる。十分な広さが無くても設置ができる。高層建築で時短作業をするには有効だが、落下対策など、徹底した安全性が求められる。㎡単価3,500円~

また、必要に応じて追加される足場もあります。

・先行足場…(通常は、建物の高さが増すに従って段階的に足場を増やしていくが)あらかじめ建物の完成時の高さまで足場を組んでから作業をおこなう。速く工事を行いたい時に利用される。10m以下の低層建築で用いられ、転落防止の手すりを設置する。外部足場+㎡単価400円~

・移動式足場…下部にキャスターが付いている足場。天井、壁、空調、照明のメンテナンスで使われることが多い。費用は、1日あたり1段1,500~8,000円とメーカー・オプションによって大きく変わる。

さらに、足場を使った工事をおこなう際には、落下物の飛散を最小限にするため飛散防止シート(㎡単価150~200円)が必要です。

足場費用の計算方法

足場費用を具体的に算出するには、下のような計算式を使います。

足場架面積×平米単価=足場費用

※足場架面積=(マンションの外周+8メートル)×高さ

※足場架面積は、「足場設置面積」と表記されることもあります。

例えば、マンションの外周が80m、高さが10m、足場単価1,200円だとすると、足場費用は105万6,000円という見積もりになりますね。

(80+8)×10=880 ㎡  880×1,200=105万6,000円

マンション大規模修繕工事の足場費用を安くする方法

適切な工事を依頼しながら足場費用を少しでも抑えるためには、下のようなポイントで賢く業者選び・見積もりをおこなってみてください。

・管理会社に施工会社選定を任せきりにしない

・複数社に見積もりを依頼する

・足場が必要な修繕はすべてやりきる

順に解説します。

管理会社に施工会社選定を任せきりにしない

足場費用を安くしたいなら、大規模修繕工事の施工会社選定の段階から管理組合が積極的に参加しましょう。

管理会社に任せきりにしていると、割高な業者に依頼することになってしまったり中間手数料がかかる可能性もあります。

後々になって「もっと安くできたのに!」という事態になってはもったいないので、最初から管理組合が施工会社選定に関わって、足場費用の妥当性も確認してください。

複数社に見積もりを依頼する

大規模修繕工事は、施工会社によって単価が変わります。

また、足場費用については、飛散防止メッシュシートが含まれるかどうかなどによっても、計算方法に違いがでます。

そこで、大規模修繕工事の施工会社を選ぶときには、複数の業者の施工会社に見積もりをとって比較しましょう。

時間と手間はかかりますが、3社以上を見比べてみるのがおすすめですよ。

足場が必要な修繕はすべてやりきる

足場費用は、設置・解体の回数が多いほど費用が上がってしまいます。

工事をおこなう施工会社に対しては、解体後に再び足場が必要になる事態が発生しないよう、しっかり対応してもらいましょう。

そのためには、事前打合せの段階で管理組合側も「まとめて修繕工事できるところはないか」「最低限の足場の設置で、どれくらい時間がかかりそうか」などを業者と話し合っておくといいでしょう。

双方が納得した上で、実際の作業がスタートできることが望ましいですよね!

足場費用をかけずに大規模修繕できる?

そもそも足場を設置しない大規模修繕工事は可能なのでしょうか?

方法としては、ロープやゴンドラ・ブランコなどを使った「無足場工法」というものがあります。

メリットは、足場費用がかからないこと、足場設置分の作業時間が短縮できること、マンションの景観が保たれることなどです。
一方、デメリットは、足場と比較すると作業性が良いとは言えないことから、工事の品質が担保しにくい状況であるということです。また、マンションによってはロープやゴンドラの設置が不可能なことも多く、大前提として無足場工法をおこなってくれる業者も少ないというのが現状です。

無足場工法という選択肢もあるにはありますが、後のトラブルを防ぐためにも「大規模修繕工事では足場を設置するもの」と考えた方が良いでしょう。

マンションの大規模修繕で足場を設置する際の注意点

費用を安くするという目的以外にも、安心・安全な工事のために大規模修繕で足場の設置が決まったら気をつけてほしいことがあります。

・足場費用が無料のときはほかの項目をチェックする

・瑕疵保険に加入している施工会社を選ぶ

・隣接する土地に足場がかからないか確認する

・マンション居住者や近隣住民の理解を得る

・空き巣対策する

以下で詳しくみていきましょう。

(1)足場費用が無料のときはほかの項目をチェックする

キャンペーンなどと称して「足場費用が無料」と謳っている施工会社がまれにいることがあります。

純粋に無料になるならお得ですが、すぐに鵜呑みにはせず必ず詳細を確認しましょう。

もしも、ほかの項目で料金が割高になっているなら、例え足場費用が無料であっても総額はお得にはなりませんよね。

(2)瑕疵保険に加入している施工会社を選ぶ

大規模修繕工事における瑕疵(かし)保険とは、工事完了後の修繕箇所に欠陥や不具合があった場合に、その補修費用をカバーしてくれる保険のことです。

例えば、工事完了後、窓サッシから雨漏りが発生してしまった時、施工会社が瑕疵保険に入っていれば、保険法人が事故状況の確認後、支払いの判断がされれば、補修費用を払ってもらうことができます。

しかし、万が一、施工会社が瑕疵保険に入っていない場合は、施工会社の倒産などを理由に補修費用を払ってもらえない、責任逃れをされてトラブルに発展してしまうなどの恐れがあります。

瑕疵保険に加入している業者を選ぶことは、大規模修繕工事をスムーズに完了させるための大事なポイントと言えますね。

(3)隣接する土地に足場がかからないか確認する

足場を組み立てる際に、どうしても隣接する土地の敷地をまたがなければいけない場合があります。

隣地をまたぐ可能性があるかどうかはできるだけ早い段階で確認し、またぐ場合は隣接する土地の所有者らに相談をしましょう。

(4)マンション居住者や近隣住民の理解を得る

足場が隣地をまたぐ場合のみならず、マンションの大規模修繕工事をするならあらゆるケースを想定して近隣住民の理解を得ることが必要です。

例えば、足場の設置時に発生するかもしれない騒音や、日当たり・風通しが悪くなる可能性などは、事前に断っておくと後の苦情などを最小限に抑えることができます。

また、マンション居住者に対しても、足場設置に必要なスペース確保のため車やベランダの鉢植えを移動してもらう場合があることを、あらかじめ説明しておくといいでしょう。

(5)空き巣対策する

足場の設置や飛散防止メッシュシートを貼ることで、その間のマンションはどうしても景観が悪くなってしまいます。すると、それを悪用しようと空き巣や不審者が寄って来ることも……。

本格的な大規模修繕工事がスタートする前であっても、足場の設置がおこなわれたら居住者は戸締りを徹底するなどして防犯対策を強化してください。

さらに、近隣住民にも念のため空き巣対策をするようお願いしておきましょう。

大規模修繕工事で足場が必要な理由

ここまでたっぷりと足場費用の目安や注意点などをご紹介してきましたが、それだけ大規模修繕工事における足場は大切な存在です。

足場の大切な役割

①作業効率が上がる

②安心・安全な工事ができる

③近隣住民に配慮し、トラブルを未然に防ぐ

足場は、現場の作業員がより働きやすく安全に作業できるよう設置するもので、管理組合側からはその重要性や価値がわかりづらい部分かもしれませんね。

しかし、適切な足場費用をかけて確実な作業をしてもらうことで、施工の品質も担保されマンションの安全性や資産価値を保つことに大きく役立つということを、ぜひこれを機にご理解ください。

大規模修繕は費用相場を理解して無駄なコストを削減しよう

大規模修繕工事は、十数年ごとに高額な費用と時間をかけておこなう大掛かりな作業です。

修繕積立金の範囲で効率的な作業をおこなってもらえるよう、費用相場をあらかじめ理解し、無駄なコストを削減してくれる業者を選びましょう。

また、さくら事務所では、大規模修繕工事におけるサポートもおこなっています!

「管理会社からもらった見積・工事内容は、本当に妥当なの?」「そもそも今、大規模修繕をやるべき?」という入口段階から実際の選定に至るまで、一級建築士をはじめとする専任コンサルタントが一緒に考えアドバイスさせていただきます。

さらに、大事な修繕積立金を有効活用するために、現在のマンションの状況をチェックする「建物劣化診断」もおすすめです!

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さくら事務所では、本記事でご紹介した「足場費用」を含む大規模修繕工事の施工会社選定をサポートしています。

ぜひお気軽にご相談ください!

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