約99%のタワマン・内廊下型マンションで見受けられる防火区画の施工不良

防火区画とは、火災の延焼を食い止めるために必要な区間です。火災が発生したときに、防火扉や防火シャッターが作動することで、炎や煙を一定区間内に留めておけます。しかし、防火区間内にある貫通孔の多くで不具合が発生しており、火災が発生したときに防火区画が確実に機能するのか心配なマンションも少なくありません。

そこで本記事では、多くのマンションで発生している防火区間の不具合について解説します。

3月は火災に要注意!

総務省消防庁から発表された「令和4年(1月~9月)における火災の概要(概数)について」によると、3月は1年の中で火災が発生しやすい月です。

引用:令和4年(1月~9月)における火災の概要(概数)について

3月に発生した火災は全体の14.9%を占めており、他の月よりも多いことがわかります。3月は空気が乾燥しやすく風も強いため、火災が発生しやすい条件が揃っているためです。1年を通して火災が起こりやすくなる時期に入る前に、徹底した防火対策が必要といえるでしょう。

見落としがちな防火区画の貫通処理

防火区間は火災の延焼を防ぐ役割があるものの、貫通孔の処理がうまくできていないマンションも少なくありません。そこで、まずは防火区間の役割を確認しましょう。

マンションの防火区画とは

防火区画とは、火災の被害を最小限に抑えるために建物の区画を制限したものです。例えば、マンションの5階で火災が発生したとき、他の階に炎や煙が広がらないように防火扉や防火シャッターが設置されています。

防火扉や防火シャッターがうまく作動しなければ、炎や煙がマンション全体に充満するでしょう。防火区画があることで炎や煙の広がりを抑え、避難する経路や時間を確保できます。

防火区画の貫通孔で不具合が発生しやすい

防火区画は火災の被害を最小限に抑える役割がある一方、貫通孔での不具合が発生しやすい傾向があります。貫通孔とは、防火区画内を貫通している穴のことで、ケーブルや配線などを通しています。

建築基準法施行令第112条の防火区画では「貫通する場合においては、モルタルその他の不燃材料で埋めなければいけない(引用)」と定められています。なぜなら、火災が発生した場合に、穴がしっかりと塞がっていないと炎や煙の延焼を防げないからです。

しかし、タワーマンションや内廊下型マンションでは、防火区画の貫通処理が十分に行われていないことが非常に多くなっています。

防火区画貫通処理の不具合事例

防火区画貫通処理がうまく行われていない場合の事例です。

出典:さくら事務所

防火区画に配線や配管などが通っている場合、隙間を埋めるための耐火処理が行われていなければいけません。しかし、隙間がきちんと埋められていなかったり、経年劣化によって亀裂が生じていたりといった不具合が非常に多く発生しています。隙間を埋める、耐火パテや耐火シールといった耐火処理が、経年劣化によって収縮・脱落してしまい、貫通孔に隙間が生じるためです。

なかには、未施工のまま放置されているケースもあります。

さくら事務所が2011年~2023年現在までに検査を実施したマンションの検査結果を見てみると、タワーマンションと内廊下マンションのうち、防火区画貫通処理の不具合が約99%のマンションで確認されているのが現状です。

防火区画貫通処理で不具合が見つかりやすい理由

防火区画貫通処理で不具合が見つかりやすい理由は、主に以下のとおりです。

  • 新築施工時の確認や検査が徹底されていない
  • 建築基準法に基づく定期報告制度である、特定建築物定期調査において、調査項目にあるにも関わらず、しっかりと確認されていない
  • 長期修繕計画にも、貫通処理部の点検や補修などは予定されていない

また、貫通孔の耐火処理には多種にわたる素材や工法を用いて施工しており、それぞれの耐久性が明確になっていないことも不具合が生じる要因といえるでしょう。

マンション共有部9年目チェックサービスを活用しよう

防火区画貫通処理の法定点検は、短期保証項目にも10年の長期保証項目にも該当しません。特定建築物定期調査報告では、目視検査を行うと定められているものの、確実に調査されていないケースも見受けられます。

そのため、マンションの管理組合としては、竣工から10年目のアフターサービス期限内に何らかの不具合が生じていれば申し出をしておくことが大切です。

なお、さくら事務所では10年目の保証が切れる前に基礎や屋上といった共有部をチェックする「マンション共有部9年目チェックサービス」を提供しています。管理会社や売主、施工会社と利害関係を持っていない第三者として確認作業を行うため、安心して任せていただけます。

アフターサービスを確実に活用しながら安心して暮らせる環境を整えるためにも、ぜひマンション共有部9年目チェックサービスをご利用ください。

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