マンションの水漏れは、個人の問題ではなくほかの専有部分や共用部分が関係している可能性があり、少々厄介です。上の階から水が漏れてきていても、共用配管に問題が生じていることもあり、原因を追求するが難しいケースもあります。
さらに、対応が遅れるほど被害は拡大し、居住者間トラブルにもなりかねません。加害者になってしまうと、被害状況によっては百万単位の損害賠償を求められることもあるのです。
そこでこの記事では、マンションで水漏れが発生した際に被害を最小限に抑えられるよう、水漏れの原因や対処法、修理費用について解説します。
マンションで水漏れ発生!原因と責任の所在は?
マンションの水漏れの原因は「人的ミス」と「配管の不具合」の2つに分けられます。それぞれ具体的にどのようなケースがあるのかみていきましょう。
人的ミスの場合は本人の責任になる
水漏れの原因が人的ミスの場合は以下のケースが考えられます。
- 水の流しっぱなし
- 洗濯機のホース外れ
- トイレなどの配管詰まり
- 水道凍結
どれも注意していれば防げる水漏れです。人的ミスによる水漏れはすべて本人の責任になります。自分の部屋だけの被害であればまだよいですが、階下の専有部にまで被害が及んでいれば損害賠償が発生します。
すぐに気がついて対処すれば大事にはいたりませんが、長時間水漏れに気がつかないと当然被害は拡大します。とくに長期にわたり家を空けるときは、水回りをチェックするようにしましょう。冬は水道凍結による水漏れも多発します。寒冷地にお住まいの方は、気温に応じて適宜水落としをおこないましょう。
配管の場合は原因と場所により責任の所在が異なる
配管の老朽化や施工不良により、水漏れが生じることもあります。配管の接続不良や配管に空いた小さな穴などから水が漏れてしまうのです。
配管からの水漏れは、床下など目視できない部分で起きているケースが多く、原因特定に時間がかかります。さらに「配管の場所が専有部か共用部か」「水漏れの原因が経年劣化か施工不良か」によって責任の所在が異なるため、しっかり調査しなければなりません。
被害が拡大する前に、管理会社や管理組合と連携し解決に努めましょう。
原因不明の水漏れは管理組合の責任になる
調査をしても水漏れの原因が分からないケースも少なくありません。原因不明の水漏れは、管理組合の責任となり、管理組合が修理費用を負担し損害賠償します。
区分所有法第九条「建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定」をみてみましょう。
(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
第九条 建物の設置又は保存に瑕疵かしがあることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。
区分所有法では、そもそも、マンションの瑕疵(水漏れ)は共用部分から生じていると推定されることになっています。つまり、共用部分が原因でないことを証明できない限り、管理組合の責任になるのです。
管理組合は「原因がわからないから責任を負えない」と他人事になるのではなく、積極的に原因調査(調査依頼)をおこないましょう。
マンションで水漏れが発生した際の対処法
実際にマンションで水漏れが発生した際は、落ち着いて行動することが大切です。ここでは水漏れが発生したときの対策について解説します。
応急処置をする
水による被害を最小限に抑えるためにつぎの応急処置をします。
- 水の元栓を閉じる
- タオルで水漏れ箇所を押さえる
- 水受けを用意する
- 家財などを養生する
- 被害状況を撮影しておく
まず、自室の水の元栓を閉じておきましょう。根本的な解決にはなりませんが、不具合が起きている場所によっては一時的に水漏れを止められるかもしれません。水漏れ箇所がわかり手が届くようであれば、タオルで押さえておくのも有効です。
天井からポタポタと水滴が落ちてきている場合は、バケツなどで水を受けます。家財を水から守るために、ゴミ袋や耐水性のあるビニールシートなどで簡易的に養生しておくと安心です。状況が落ち着いたら、被害状況を写真に撮っておきましょう。
速やかに管理会社や管理組合に連絡する
水漏れが発生していたら、速やかに管理会社や管理組合に連絡します。水漏れの原因が共用部の可能性もありますし、ほかに原因があったとしても被害状況を確認しなければなりません。
また、自分が被害者・加害者どちらであってもほかの部屋の居住者とのやりとりが必要になります。自ら直接訪問し話そうとすると、新たなトラブルに発展するリスクもあるため、必ず管理会社など第三者を通して対応しましょう。
管理会社は夜間でも連絡できる緊急連絡先を設けています。水漏れに限ったことではありませんが、いざというときのために確認しておくとよいでしょう。
管理会社や管理組合に連絡すると、修理の手配など今後の動きを指示されるので従ってください。
保険会社に連絡する
マンションの水漏れは保険が使える可能性があります。応急処置や管理会社への連絡が済み、落ち着いた段階で保険会社に連絡しましょう。
自分が加害者のときは個人賠償責任保険、被害者のときは火災保険の水漏れ補償が適用されます。個人賠償責任保険は自動車保険やクレジットカードに付帯していることも。
保険の加入状況を確認し、該当する保険会社に水漏れの報告をしてください。
また、共用部からの水漏れなど管理組合の責任になる場合は、管理組合が加入する施設賠償責任補償特約が適用されます。
マンションの水漏れ時の保険については、下記記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
マンションの水漏れ時に適用できるのは火災保険!適用条件を徹底解説
マンションで水漏れが発生した際の修理費用
水漏れが発生した際の修理費用は被害状況によって大きく異なります。配管の不具合が水漏れの原因だったときの、配管修理費用の相場は、1mごとに5,000~10,000円です。
階をまたぐ水漏れの場合は、水漏れの原因となった部屋だけでなく下の階の天井や内装の原状回復費用も賠償しなければいけません。
その結果、トータルで100万円を超える費用になることも。容易に支払える金額ではないため、保険で備えておくことが大切です。
水道代は減額してもらえるかも
水漏れに気がつくのか遅れた場合など、大量の水が漏れてしまうと、その分水道メーターがまわり、通常通りに検針し請求されると水道代は高額に…。
しかし、水漏れの原因や場所によっては、水道代を減額してもらえることがあるため覚えておきましょう。
たとえば、水漏れの発生場所が目視できない場所で発見が遅れたときや、自然災害が原因で配管に不具合が生じたときは、水道代を減額してもらえる可能性が高くなります。
減額される条件は各自治体により異なるため、管轄の水道局に確認してみましょう。
マンションでの水漏れを放置するとどんな影響がある?
水漏れを放置するとカビ・ダニが発生します。家財が汚れるだけでなく、空気汚染により、シックハウス症候群やアレルギー症状に悩まされることも。さらに、床材や壁紙の剥がれ・建物自体の劣化の恐れもあり、災害時に、より大きな被害を招いてしまうかもしれません。
また、被害が拡大すると損害賠償額がかさみます。高額な水道代を請求されることもあるでしょう。マンションでの水漏れは個人の問題ではありません。水漏れを発見した場合は、早急に対応しましょう。
マンションの水漏れを未然に防ぐ方法
マンションの水漏れを未然に防ぐためには「水回りを整理整頓しておくこと」が有効です。とくに気を付けたいのが、洗面台やキッチンシンク下の収納部分。
シャワーホースがついている場合、収納内にホースを伝う水を受けるタンクが設置されています。通常、タンク内の水は自然に蒸発するものです。しかし、水栓本体に水がかかると大量に水が溜まり蒸発しきれないことも。タンクが見える状態に整理整頓されていれば、溢れる前に水を捨てられます。
ほかにも「配管に水滴がついている」「床部分に濡れた跡がある」ときは要注意。水漏れの可能性があります。こうした異常にすぐ気がつけるように、水回りの配管近くに物を置きすぎないよう、日頃から気を付けましょう。
第3者のプロ視点でマンション共用部の点検依頼も可能!
人的ミスによる水漏れは、水回りの整理整頓など意識していれば未然に防げます。それでも万が一、加害者になってしまった場合は、管理会社または管理組合と連携し、早急な解決に努めましょう。
一方、配管の不具合や共用部の経年劣化または施工不良による水漏れは、原因追及に時間がかかります。放置するほど被害は拡大するため、水漏れが生じる前に定期的にマンションを調査することが大切です。
さくら事務所では、共用部のアフターサービスを最大限に活用するアフター点検サービスを承っております。
第三者のプロ視点で、現地に出向き漏水調査を実施。共用部での水漏れもアフターサービス規準の保証対象であれば無償で補修工事できるかもしれません。アフターサービス以外にも、施工不良が見つかり分譲会社の費用負担で修繕したケースもあります。
理事会への出席や住民説明会のフォロー、補修工事完了時の検収検査なども全面的にサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。