欠陥マンションとは?リアルな事例や見分ける方法を徹底解説

「自分の住んでいるマンションが欠陥マンションだったら・・・」考えただけで恐ろしいですよね。世の中には長きにわたり欠陥マンションに悩まされている方が多くいます。欠陥マンションの疑いがあっても認められず、日々被害が深刻化しているケースも。

この記事では、これまでさくら事務所がみてきた欠陥マンションのリアルな事例を紹介します。欠陥マンションを見分ける方法も解説するため、被害を最小限に抑えられるよう、ぜひ参考にしてください。

欠陥マンションとは?

欠陥マンションとは、施工不良や契約書との相違により、本来あるべき安全性・耐久性・機能性が得られないマンションのことです。

  • 契約書に違反がある
  • 契約書記載の設備と相違がある
  • 基礎工事や耐震構造に欠陥がある
  • 耐火性・断熱性・遮音性に問題がある
  • シロアリの被害にあっている

上記のような欠陥は、契約不適合責任にあたるため、買主は、損害賠償責任や契約解除権、補修を依頼できる追完請求権などの権利があるのです。

しかし実態は、売主が欠陥を認めず問題解決に至らないケースも多くみられます。建て替えや補修するにも、それまでの過程で時間がかかるため、住民は終わりの見えない不安なマンション生活を余儀なくされているのが現状です。

過去実際にあった欠陥マンションの事例

さくら事務所は、これまで多くの欠陥マンションをみてきました。ここからは、過去実際にあった欠陥マンションの事例を5つ紹介します。

  • 鉄筋露出・かぶり厚の不足
  • 外壁タイルの剥落
  • 構造スリットの施工不良
  • コンクリート内部の異物混入
  • 型枠の残存

順に詳しくみていきましょう。

鉄筋露出・かぶり厚の不足

鉄筋露出・かぶり厚の不足の事例

鉄筋の露出およびかぶり圧の不足から鉄筋の腐食が進んでいた事例です。通常、鉄筋はコンクリートのアルカリ性により、錆びから守られていますが、コンクリートは空気中の二酸化炭素と反応すると中性化が進みます。

コンクリート表面から鉄筋までの距離(かぶり圧)が不足していると、中性化が鉄筋まで到達し、コンクリート内部の鉄筋が錆びて、本来の強度を保てません。また、コンクリートの欠けや打設時の締固め不足により、内部にできた空洞で鉄筋が露出していることも。鉄筋が空気に触れている状況のため、この場合も錆びが生じてしまうのです。

鉄筋の錆びは耐震性を低下させます。中性化が懸念される場合は、早急に専門機関に調査を依頼しましょう。

外壁タイルの剥落

外壁タイルの剥落の事例

施工不良により、施工後10年余りで2度も外壁タイルが剥落していた事例です。発見当初、分譲会社に調査を依頼するも、しっかりと調査されずに「経年劣化によるもの」で、分譲会社に責任はないとされていました。

管理組合は、第三者機関による全面打診調査と原因調査を依頼。その結果、打継目地・伸縮調整目地の施工不良・タイル下地目粗し不足・張付けモルタル塗り厚不足など、多くの施工不良が明るみに出ました。

最終的に分譲会社が修理費用を一部負担。管理組合の費用負担は大きく減少しました。外壁タイルの剥落は、経年劣化や自然災害が原因とされるケースも多いため、しっかりとした調査で欠陥を証明することが大切です。

構造スリットの施工不良

構造スリットの施工不良の事例

構造スリットの設置忘れやスリット材のねじれによる施工不良です。構造スリットとは、地震の横揺れに対応するためのすき間のこと。構造上問題ない壁に、あえてすき間をあけることで、水平方向の揺れによる柱や梁への損傷を抑える役割があります。

構造スリットが正しく設置されていないと、十分な強度を確保できません。地震により強度の弱い部分に力が集中すると、コンクリートのひび割れやタイルの剥落につながります。

耐久性に関わる重要な構造スリットですが、適切に設置されていないマンションは少なくありません。構造スリットに関する知見がないコンサルタントも多く、大規模修繕工事の際に不具合を発見しても、報告せずに工事が進められることもあるほどです。

コンクリート内部の異物混入

コンクリート内部の異物混入の事例

コンクリート内部に異物が混ざっているケースもありました。信じられない欠陥ですが、施工時に使ったゴミのようなものがコンクリートと一緒に固められていたのです。原因は、工事現場のずさんな管理体制。整理整頓されていなかったことも容易に想像でき、ほかの欠陥も心配になる状況です。

異物の混入は、建物によい影響を与えるはずがありません。震災時の被害の拡大やコンクリート躯体の劣化につながるため、コンクリートから異物らしきものが確認された場合は、早急な調査をおすすめします。

型枠の残存

型枠の残存の事例

本来コンクリートが固まったあと撤去する型枠ですが、工事完了後も撤去されずに残されていました。単純に撤去するのを忘れていたのでしょう。型枠がついていることで、直接的に悪さをするわけではありませんが、二次被害に見舞われるケースもあります。

今回の場合、型枠が残っていたのは、地下ピットの天井スラブ。湿度の高い場所のため、型枠で使われている木材が腐食しカビが発生する可能性もあります。悪臭の原因にもなり不衛生です。原因不明の悪臭がある場合は、普段目につきにくい地下ピットなどに型枠の残存がないか確認しておきましょう。

ここまで5つの事例を紹介しました。それぞれの事例について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

マンションで発覚するコンクリートの施工不良事例

マンションに潜む深刻な瑕疵 「構造スリットの施工不良」に泣き寝入りしないために

マンション外壁タイルトラブル事例

欠陥マンションを見分ける方法

ここでは欠陥マンションを見分ける方法を8つ紹介します。

  1. 経年劣化の度合いを確認する
  2. 建物や床・柱の傾きがないか
  3. 雨漏りがないか
  4. コンクリートのひび割れはないか
  5. 鉄部の錆・外壁タイルの剥がれはないか
  6. 窓やドアの建付けに問題はないか
  7. 内装クロスなどに亀裂やしわがないか
  8. 配管に異常はないか

被害を最小限に抑えるためにも、ぜひ参考にしてください。

経年劣化の度合いを確認する

どんなマンションでも築年数の経過とともに劣化は避けられません。しかし、経年劣化の度合いがあまりにも早い場合は、欠陥が潜んでいる可能性もあるでしょう。

経年劣化の度合いは、これまでに行った大規模修繕履歴から判断できます。また長期修繕計画では、今後予定されている修繕もわかるため、計画よりも経年劣化が進んでいたり計画にない修繕が必要になったりした場合は、見えない欠陥が隠れているかもしれません。

建物や床・柱の傾きがないか

床の壁の傾きを確かめることで欠陥マンションである可能性が高いか低いか判断可能です。とはいっても、傾斜があるから欠陥だ!と断定できるわけではありません。そこで参考になるのが、国土交通省が公表している「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」です。

構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性の目安

勾配の傾斜 壁または柱・床
1000分の3未満 低い
1000分の3以上~1000分の6未満 一定程度存する
1000分の6以上 高い

参照:国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」

瑕疵の可能性が高い場合は、専門機関に調査を依頼しましょう。

雨漏りがないか

経年劣化が原因のケースも多い雨漏りですが、発生時期や程度によっては欠陥の可能性もあります。とくに気を付けて確認すべき部分は次の4か所です。

  • 外壁
  • ベランダ
  • 屋根

防水シートや外壁、シーリングなどの施工不良が考えられます。雨水が流れ出ていなくても、壁にシミがついていれば雨漏りしている可能性が高いため調査が必要です。

コンクリートのひび割れはないか

構造上の欠陥はコンクリートのひび割れとなって現れることもあります。深いひび割れ・広範囲にわたるひび割れ・短期間でのひび割れの増加は、施工不良の可能性も否めません。

事例でも紹介した、中性化による鉄筋の錆びはひび割れからも生じます。ひび割れ部分に雨水が侵入すると、錆びにより鉄筋が膨張し内部で爆裂することも。大変危険な状況のため、早急に対策しましょう。

鉄部の錆・外壁タイルの剥がれはないか

外階段や手すりなど錆びも確認しましょう。一度錆びてしまうと錆びの進行をとめるのは困難なため、錆びが発生する前にメンテナンスすることが大切です。また錆びを放置すると、見た目がよくないだけでなく、腐食が進み危険が及ぶこともあるでしょう。

また、事例にもあったとおり、外壁タイルの剥がれは、伸縮調整目地の施工不良や構造スリットの不具合など、施工時の欠陥が考えられます。

窓やドアの建付けに問題はないか

窓やドアの建付けの悪さも欠陥を見分けるポイントです。玄関ドアや室内ドアが開けにくかったり、窓枠がゆがんだりしている場合は、施工不良の可能性があります。

また、はじめはスムーズに開閉できていた窓やドアが徐々に開閉しにくくなってくるケースも注意が必要です。

内装クロスなどに亀裂やしわがないか

マンションの躯体や構造の不具合は、内壁にも余計な力が加わり、内装クロスに影響します。クロスに不自然な亀裂やしわが発生していないか確認しましょう。一部屋だけでなく複数の部屋で同様の現象が起きている可能性もあります。

配管に異常はないか

配管の施工不良は漏水被害にもつながります。壁の中で漏水しているケースもあるので、天候に関わらず湿度が高かったり原因不明の異臭がしたりするときは調査したほうがよいでしょう。

目視できない漏水は、気がつかないうちに被害が拡大している恐れもあります。実際に水を流してみて、問題がないかも確認しましょう。

そもそも何故欠陥マンションは生まれるのか

欠陥マンションが生まれる原因として考えられるのは「下請け多重構造」と「丸投げの品質管理」です。

建設にかけられる費用は決まっていますが、下請けが増えるほどお金はかかるため、どこかで帳尻を合わせなければなりません。そのしわ寄せをうけるのが下層の下請け会社。厳しい予算で何とか請け負うため、品質面で無理が生じてしまうのです。

また「青田売り」も欠陥マンションの増加を助長させています。工事完了の期日が決められているため、ミスや不具合を見逃しているケースも少なからずあるのです。

それでもディベロッパーが下請けに丸投げせず、しっかり品質管理していれば施工不良は免れます。しかし、請負契約という枠組のなかで、下請けに任せきりになっているマンションが多いのが現状です。

第3者のプロ視点からの診断をいれることが大切

マンションで考えられる欠陥は多岐にわたります。なかでも外壁に関する不具合は、経年劣化や自然災害によるものとの区別が困難なため、売主や分譲会社が欠陥を認めず、対応が遅れることも。しかし、外壁タイルの剥落や鉄筋露出などの欠陥は表面的な不具合に留まらず、マンション躯体の劣化を進行させるため、早期に対処しなければなりません。

さくら事務所では、マンション工事に精通した建築士などの専門家と連携し、中立的な立場でマンションを調査します。分譲会社からの改善策が適切かチェックしたり、施工会社との協議に出席し管理組合の方針や要求事項を折衝したりすることも。

希望に応じてさまざまなご支援パターンを用意しているので、瑕疵調査や欠陥トラブルに関してのお悩み事はどのようなことでもご相談ください。

欠陥マンションを証明するには、第三者機関にしっかりチェックしてもらうことが重要です。状況が悪化する前に早めの対処をご検討ください。

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