コンクリートがひび割れする原因と対策!危険性を見極めて正しい補修をしよう

建物や道路など身近で多用されているコンクリートは、固くて丈夫なイメージがありますが、実はひび割れが生じやすい性質をもっています。ひび割れは、外観を損ねるだけでなく、建物の劣化を早め強度を低下させてしまうことも。なかには、早急な対応を要するひび割れもあるため、危険性を正しく見極め、対処する必要があるのです。

この記事ではひび割れの原因と対策、危険性について解説します。コンクリートのひび割れ防止や補修の参考にしてください。

コンクリートがひび割れする原因・対策

コンクリートのひび割れは、ヘアクラック(幅0.3mm未満、深さ4mm未満)と構造クラック(幅0.3mm以上、深さ4mm以上)の2種類に分類されます。ヘアクラックと比べ、程度の大きい構造クラックはとくにリスクがあるため注意が必要です。

ここではひび割れの原因と対策について、次の11項目で解説します。

  1. 乾燥
  2. 凍害
  3. 中性化
  4. 温度変化
  5. 型枠のはらみや付着
  6. 地盤沈下や地震
  7. 塩害
  8. 劣化・疲労
  9. 支保工の沈下
  10. コールドジョイント
  11. 不等沈下

以下で順に説明します。

ちなみに、マンションのコンクリートのひび割れで悩んでいる場合は下記記事をご覧ください。

マンションのコンクリートのひび割れ、その原因と注意ポイント

【原因と対策①】乾燥

乾燥によるひび割れは、コンクリートの引張応力(ひっぱりおうりょく)の弱さが原因です。

コンクリート内部の水分が乾燥により蒸発すると、体積が減少し収縮します。このとき、コンクリートと接地している柱や壁から引張力を受け、耐えきれなくなると、ひび割れが発生するのです。

以下3点の対策方法があります。

  • 収縮低減剤・膨張材を使用する
  • 水分量を少なく配合する
  • 周囲の鉄筋量を増やす

収縮低減剤は、水分が蒸発する際のコンクリート内部の表面張力を抑え、膨張材は膨張により強い圧縮力をかけ、引張応力に余力をもたせることで、ひび割れを防ぎます。

【原因と対策②】凍害

凍害によるひび割れは、水分が凍結する際の膨張圧が原因です。コンクリート内部の水分が凍結すると体積が増加し膨張することで、ひび割れが発生します。

ひび割れ部分に雨や雪が侵入し、その水分が凍結し膨張する悪循環に陥ることも。寒冷地以外でも、寒暖差の激しい地域や日当たりがよい建物は注意しましょう。

凍害は、表面がフレーク状に剥がれる「スケーリング」やクレーター状に剥がれる「ポップアウト」も引き起こします。

対策方法は、以下2点です。

  • 適切な空気量を確保する
  • 水分の収集率の低い骨材を使う

水分が少なければ、凍結による膨張を最小限に抑えられ、コンクリート内の空気は膨張圧の逃げ場となり、凍害による損傷を防ぎます。

【原因と対策③】中性化

中性化により錆びた鉄が膨張し、さらなるひび割れを発生させます。

中性化とは、コンクリートがアルカリ性から中性に変わること。硬化したコンクリートは強いアルカリ性で、アルカリ成分がコンクリート内部の鉄材の不導体被膜となり錆を防止します。

しかし、ひび割れなどでコンクリートに大気中の二酸化炭素が侵入し、鉄材まで中性化が進むと、不導体被膜が壊れ、錆を防止できません。

対策方法は以下3点です。

  • コンクリートの表面を塗膜防水材などで覆う
  • コンクリート内部の空気を減らす
  • コンクリートを厚くし鉄筋までの距離を充分にとる

空気を減らすことで二酸化炭素を抑制でき、コンクリートを厚くすることで鉄筋までの距離を遠くなり、中性化を防げます。

【原因と対策④】温度変化

長さ10㎝のコンクリート部材の場合、10度の温度差で1mm膨張収縮することから、気温変化により、地盤の引張力が影響し、大きなひび割れに発展することも少なくありません。

また、コンクリートの中心部と表面部では、熱の放出量が異なり温度差が生じます。中心部は温度が高く膨張するため、表面部のコンクリートにより圧縮力がかかり、表面部は温度が低く収縮するため、引張力に耐えられずひび割れが発生します。

対策方法は以下3点です。

  • 温度上昇率の低いセメントを使う
  • 混和材料を使い発熱量に直接影響するセメント量を減らす
  • 膨張材で収縮を抑制する

施工の段階では、材料を予め冷却や打込み後にシートなどで保温し急激な温度降下を防ぎましょう。

【原因と対策⑤】型枠のはらみや付着

コンクリートは型枠に材料を流し入れて固めますが、その際、枠がはらみひび割れが発生することがあります。また型枠への付着もひび割れの原因です。

軽微なはらみの場合、型枠の外側から抑え込み補強したり、再度コンクリートを締め固めたりすることでひび割れを解消できます。

しかしはらみが大きい場合は、コンクリートを取り除きもう一度型枠を組み直さなければなりません。

対策方法は以下2点です。

  • 頑丈で変形しない型枠を使う
  • 型枠剥離剤を使う

【原因と対策⑥】地盤沈下や地震

地盤沈下によるひび割れは、建物などの荷重により、地盤の水分が抜け出す圧密沈下がおもな原因です。圧密沈下に伴う地盤のゆがみにより、ひび割れが発生します。

また、地震によるひび割れも多くみられる現象です。引張応力の弱いコンクリートは地震の揺れによる引張力に耐えられず、ひび割れが発生します。

とくに地盤沈下している場合は、建物が地震に耐えられず、倒壊する危険栓もあるため、地盤沈下によるひび割れがある場合は注意が必要です。

以下2点の対策方法があります。

  • 地盤調査の徹底
  • 耐震性の強化

【原因と対策⑦】塩害

アルカリ性のコンクリート内にある鉄や銅は、不導体被膜により錆などの腐食から守られていますが、コンクリート内の塩化物イオンが増加すると、不導体被膜は壊れ錆が生じます。錆はコンクリートを膨張させるため、ひび割れの原因となるのです。

塩化物イオンは、コンクリートに内在しているほか、海水や凍結防止剤などの外部から侵入するものもあります。

対策方法は以下2点です。

  • 表面を塗膜防水材などで覆う
  • コンクリートを厚くし鉄筋までの距離を充分にとる

【原因と対策⑧】劣化・疲労

劣化は、おもに「アルカリ骨材反応」によるものです。アルカリ骨材反応とは、コンクリートが硬化する際に発生するアルカリ性水溶液と骨材の化学反応のこと。アルカリ骨材反応は、コンクリートを膨張させ、ひび割れや変色などの劣化を助長させます。

効果的な対策は、アルカリ骨材反応を起こさない骨材選びをすることです。

疲労は、コンクリートの強度より低い荷重作用を長期に渡り繰り返し受けることにより、徐々に劣化が進みひび割れが生じること。コーティングなどの補強工事で対策できます。

【原因と対策⑨】支保工の沈下

支保工(しほこう)とはコンクリートの型枠を支えるためのものです。支保工自体の強度が弱かったり、地盤の強度が不十分で支保工が沈下したりすることで、コンクリートに余計な力が加わり、ひび割れが生じます。

一般的には、コンクリートを打設してから24時間以内に、規則性のある構造クラックが発生するのが特徴です。数十日をかけて、ひび割れが発生するケースもあります。

対策方法は以下3点です。

  • 強度のある支保工を使う
  • 支保工の位置や数を計画通りに配置する
  • 地盤の強度を確認する

【原因と対策⑩】コールドジョイント

コールドジョイントについて、JISでは「先に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートとの間が完全に一体化していない継目」と定義しています。

コールドジョイントは、打ち重ね部分で層になっていたり変色していたりするため、目視でも判断できるでしょう。

対策方法は以下2点です。

  • 打ち重ね時間を短縮する
  • 適切に打設する

打ち重ねの目安時間は以下の表の通りです。

外気温 時間(混ぜ込みから打込み終了)
25度未満 120分
25度以上 90分

参照:建築工事標準仕様書 JASS5 鉄筋コンクリート工事(2009年版)

バイブレータを使って打設する際は、前の層に10㎝垂直に挿入するか、50㎝以下間隔を開ける必要があります。

【原因と対策⑪】不等沈下

不等(不同)沈下とは、地盤が均等ではなく片方に偏って沈下することです。不等沈下している土地に建設されている建物が傾斜することで、コンクリートにかかる力にずれが生じ、建物の基礎や外壁にひび割れが発生します。

建物の荷重バランスや基礎の問題など、原因はさまざまですが、不等沈下は起きてしまってからだと対処が困難なため、以下の対策が必要です。

  • 徹底した地盤調査
  • 支持層の確認など

このような事前の対策が重要なため、信頼できる専門家に調査してもらいましょう。

ひび割れしたコンクリートの補修方法

ここではひび割れしたコンクリートの補修方法について解説します。補修方法は大きく分けて以下4つです。

  • 注入工法
  • 充填穂工法
  • 被覆工法
  • 連続繊維シート接着工法

以下で順に解説します。

注入工法

注入工法は、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などをひび割れ部分に注入し、防水性と耐久性を高める工法です。

注入には専用の注入機を利用するのが一般的で、わずか0.05mm程度の狭いひび割れにもピンポイントで注入できるため、軽微なひび割れの補修に適しています。施行者の技術レベルにより仕上がりが左右されず、施工しやすい工法です。

また、注入工法は単にひび割れを埋めるだけでなく、躯体を一体化させられるため、広範囲にわたるひび割れの補修工法として使われることもあります。

充填工法

充填工法は、1mm以上の大きなひび割れの補修に適した工法です。ひび割れ部分を取り除くようにひび割れに沿ってコンクリートをU字やV字にカットし、シーリング材などの補修材で充填します。

このとき、ひび割れだけでなく、内部の鉄材に腐食がみられる場合は、鉄材が露出するようにコンクリートを取り除き、錆取りや防錆処理もしなければなりません。鉄材処理の完了後に、セメントモルタルなどを充填します。

注入方法よりは大がかりな作業になりますが、塩害や中性化などで鉄材まで被害が及んでいるときに有効です。

被覆工法

被覆工法は、コンクリートの表面に被覆材を塗布することで、劣化やひび割れの原因となり得る外部の物質の侵入を防ぐ工法です。注入工法をするまでもない微細なヘアクラックにも対応できます。

劣化を抑制できる水系材料の含有率が高いエコな塗装剤と、塩害や中性化も抑制できる有機系の塗装剤があるため、状況によって使い分けましょう。

被覆工法は、大きなひび割れに対応できませんが、作業工程が少なく短期間で施工できるのが特徴です。

連続繊維シート接着工法

4つの補修方法のなかで最も高い効果を発揮するのが、連続繊維シート接着工法です。炭素繊維やアラミド繊維などの連続繊維シートに、樹脂を浸透させ、コンクリート表面に接着します。湾曲面にも接着できるため、施工部分の形状を問いません。

樹脂の浸透した連続繊維シートは、鉄と比べ1/4~1/5の重量で約10倍の強度でコンクリートを補強可能です。さらに腐食しない特性があるため、連続繊維シート自体の耐久性も問題ありません。

連続繊維シート接着工法は、軽作業で施工できるにもかかわらず、高い効果を発揮する工法です。

コンクリートの危険なひび割れを見極めて早急に対策しよう

コンクリートは引張応力が弱いため、体積の変化や不自然な力が加わると、ひび割れが生じやすい特性があります。

乾燥・温度変化などの自然現象や型枠のはらみやコールドジョイントなどの施工不良など、ひび割れの原因はさまざまです。しかし対策することでひび割れの防止や最小限の被害に抑えられます。

微細なヘアクラックは早急な補修は不要ですが、構造クラックは補修が遅れると鉄材の劣化などさらなる被害が避けられません。緊急性の高いひび割れか、正しく見極め建物の劣化を防ぎましょう。

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