今回のコラムでは、実際に大規模修繕工事など長期修繕計画のコンサルティングを行っているプロが、3つの視点から大規模修繕工事に関して考えておきたい点についてお知らせいたします。
いつ大規模修繕工事をやるか決めよう
通常定期的に行うマンションの大規模修繕工事の期日は、長期修繕計画に記載されています。しかし長期修繕計画に惑わされてはいけません。
長期修繕計画はあくまで資金計画を適正にシミュレーションする目的で作られています。そのためマンションの管理状況に応じて計画は是正されるものなので、何がなんでも12年周期を守らないといけないわけではありません。
じゃあ、いつ大規模修繕工事をするの?
- まずマンションの劣化状況を把握する必要がある
※そもそも大規模修繕工事の計画を立てるために必要なのは、まずマンションのコンディションを調べる必要があります。 - ただし通常薦められる劣化診断も疑ってみる必要があります。
- そもそも劣化報告の診断書が、長期修繕計画の予定どおり大規模修繕工事を行うことを後押しするようなツールになっている可能性があります。
※劣化診断のなかには、コンクリートの中性化の確認や、タイルを引っ張る機械を使って精密に調査するなど、不要と思われる調査が含まれている場合があります。
※コンクリートの中性化の確認やタイルを引っ張る機械を使う精密な調査は、劣化診断調査では必要ないと考えられます。
これらの不要な調査を例えて言えば、若者に対して人間ドックへ行けと言っているような状況と言えます。無理やり精密検査をやるような印象と捉えていただければと思います。
☆マンションの状態を確認するためには、本当に修繕が必要かどうか、マンションに居住している自分たちの目で確かめる必要があります。
さくら事務所では劣化診断ツアーを行っていて、実際に居住者の目でマンションの状況を確認し、もし不具合があった場合は、状況に応じたアドバイスを行っています。
大規模修繕工事の予算を決めよう
通常、マンション購入時に設定されている修繕積立金はあらかじめ低く設定されています。(これは販売側が戦略的に設定しているケースが多い)
考えてみれば当たり前ですが、修繕積立金の設定が低いほうがオトクだと購入側が考えるのが必然なのでこのようになっているケースが多い。
そのため居住後は、3年・5年ごとに修繕積立金を値上げしないといけないシミュレーションになってしまうことが多くなります。しかもマンションによってはあまりにも実態と乖離しているため、値上げしないと破綻するようなところさえあります。
通常の長期修繕計画の場合、今後実施される予定の大規模修繕工事の3回目以降の計画については開示されていないケースが多いので、実態がよく入居予定側で分かりません。
徐々に修繕積立金を値上げしていく場合、1回目の大規模修繕工事はクリアすることが出来ます。しかし2回目の大規模修繕工事はギリギリな計画になり、3回目以降は不明になっている。
ここで考えておきたいことは、
積み上がった金額 ≠ 予算
だという認識です。積み上がった金額をそのまま全額投入するぜ!と考えてはいけません。
そのため、たとえば1回目の修繕積立金を2割ぐらい残せると、2回目以降のシミュレーションが健全化できる場合があります。どうすれば積み立てた修繕積立金を1回目の大規模修繕工事でぜんぶ使わないように努力できるか。が重要なポイントになります。
大規模修繕工事の進め方を決めよう
大前提として管理組合が主体となって大規模修繕工事に取組む必要があります。もし仮に管理会社などにすべてを任せてしまうと、本当はやらなくて済む工事やまさかの不正など、余計な出費が発生する可能性があります。
そのためにも主体的に管理組合で決めるべきことは決めていくことが大切です。
また実際にリサーチについては検索だけではなく、実際の知見を聞き判断するべきです。
3つの決め事を基本に大規模修繕工事についてはしっかりと計画を立てることは、今後重要になってきます。