マンション大規模修繕工事 での施工不良・瑕疵!着工後に発覚した事例ワースト5

マンションの建物調査の実施状況

マンション竣工後10年以内に、専門家による建物診断を実施するマンションは実はかなり少ないことがわかっています。マンション竣工後はじめて行われる診断が大規模修繕工事の前におこなう劣化診断であることも少なくありません。大規模修繕工事前におこなう劣化診断は、多くの場合診断が行われてもマンションに工事の足場が架けられていない状態でのチェックになるので、必ずしも足場が架けられたときに確認出来る瑕疵のすべてを見ているわけではありません。

マンションの大規模修繕工事の契約形態

マンションの大規模修繕工事における契約形態は「実数精算方式」と呼ばれる手法で契約となります。実際に劣化診断を行った結果、劣化診断を行った範囲で発生している瑕疵の確率をもとに、まず全体の不具合(外壁タイルの浮きやひび割れなど)の数量を見込んで見積もりを作成し、管理組合と工事業者のあいだで請負契約が結ばれます。

この「実数精算方式」では、大規模修繕工事の着工後、仮設の足場を設置し瑕疵に関する全面的な検査をして、そこで初めて実際の補修数量が確定します。

そのため、もし想定よりも瑕疵の不具合が多かった場合は、その分を別途追加で実数分を精算することになります。逆に想定より瑕疵の不具合が少なかった場合は、その分の差額は返金されることになります。

実数精算項目の例

  • 外壁タイルの補修工事
    浮き・割れ部分の張替え・エポキシ樹脂の注入など
  • コンクリート躯体(下地)補修工事
    ひび割れ・ジャンカ・鉄筋爆裂・欠損などの補修

大規模修繕工事の追加工事と実数精算項目に対応するために、マンション管理組合は予算に予備費を計上していることが多いですが、仮にマンションに不具合が発覚した場合は、予備費ではまったく対応できないぐらいの大きな費用が発生する場合があります。

大規模修繕工事で発見される不具合ランキング

マンションの大規模修繕工事では、どんな不具合がよく見つかっているのかをランキング形式で記載していきます。

5位:コンクリート打設不良

コンクリート打設不良とは、コンクリートが鉄筋のまわりに十分に回り込んでおらず、鉄筋が露出している場合があります。コールドジョイントと呼ばれているものは、打設の継ぎ目に脆弱性があり、梁や柱が当初の期待の強度を保っていない場合があります。ただしコンクリート打設不良はタイルや塗装などの仕上げ部分を剥がさなければ確認できない場合も多いので、非常に発見が難しい不具合です。

<事例>
所在:東京都
総戸数:約50戸
・竣工後13年目に大規模修繕工事着工
・複数箇所のコンクリート打設不良が発覚
・工事を一時中断して調査を実施
・補修費用全額を分譲会社/施工会社が負担

大規模修繕工事でコンクリート打設不良が発覚した場合、すでにアフターサービスや瑕疵担保保険が切れている場合があります。その場合にも大規模修繕工事で不具合が発覚した場合には、分譲会社/施工会社に申し入れ、そして調査結果を申し出ることで改修にかかる費用を負担してもらえる場合があります。

4位:鉄筋の配筋不良・かぶり厚不足

建物は何cmごとに何cmの鉄筋が格子状に組まれていると竣工図書で約束されているわけですが、これがしっかり守られていない場合があります。日本の建築基準法上の場合、コンクリートのなかに鉄筋が最低3cm鉄筋のうえにコンクリートが被さっていないといけません。これがしっかり出来ていない場合は、最悪建物の耐久性に重大な影響を与える恐れがあります。かなり極端な例の場合、あるはずの場所に鉄筋が入っていなかったことも・・・。

<事例>
所在:東京都
竣工年:1993年
総戸数:約40戸(投資用ワンルーム)
・竣工後20年目に大規模修繕工事着工
・鉄筋配筋不良・かぶり厚不足が発覚
・工事を一時中断して調査を実施
・補修費用全額を分譲会社が負担

この事例では補修費用全額を分譲会社が負担していますが、分譲会社によっては10年保証が切れたからと頑なに負担を拒むこともあり、しっかりと調査をすることで、分譲会社/施工会社に費用を負担してもらうための布石になります。

3位:コア抜き(鉄筋の切断)

建物ができあがったあと、配管や配線を通すための穴を開けるために鉄筋を切断してしまうことが時々起こっています。切断された鉄筋の種類によっては、耐震性や耐久性に深刻な影響を与えることがあります。

実際に鉄筋が切断されていることを確認する方法
・レーダー探査→レーダーを使った調査をすることで中に埋設された鉄筋の状態が3Dの状態でビジュアルとして確認できます。
・デジタルX線→もっと本格的に確認する場合。状況を確認を瞬時に確認することが出来ます。

<事例>
所在:東京都
竣工年:2003年
総戸数:約200戸
・竣工後16年目に大規模修繕工事着工
・外壁タイル/構造スリット/コア抜きが発覚
・工事を中断して調査を実施
・補修費用全額を分譲会社が負担
・工事の中断は一年半に及ぶ

2位:構造(耐震)スリットの未設置

現在マンションでは構造スリットを原則的に設置することが基本になっています。構造スリットは地震が起こった際、しなやかに地震の動きを受け止め、柱などが折れないように地震に対する施策として設けられています。構造スリットが設置されていない、かなりの箇所が未設置になっている場合は、調査・検証の結果、建築基準法の耐震基準を下回ってしまう場合もあります。つまり建築基準法違反の建物だったことが大規模修繕工事をする段階で判明するなんてことが起こりえます。ただ決して簡単ではありませんが、スリットは後設置することが可能です。

<事例>
所在:東京都板橋区
竣工年:2002年
総戸数:約30戸
・竣工後12年目に大規模修繕工事着工
・構造スリットの複数未設置が発覚
・工事を一時中断して調査を実施
・補修費用全額を分譲会社/施工会社が負担

1位:外壁タイルの浮き

分譲会社/施工会社と協議の結果、補修費用が負担される場合もあります。
一般的に1回目の大規模修繕工事では全体に3%~5%程度のタイルの張替えや注入などの補修工事が見込まれているケースが多いと言われています。しかし過去に全体の20%以上のタイル補修が必要なケースもありました。

<事例>
所在:東京都新宿区
竣工年:2002年
総戸数:約50戸
・竣工後14年目に大規模修繕工事着工
・外壁タイルの広範な浮きが発覚
・工事を一時中断して調査を実施
・工事期間延長による足場費用を含め6,000万円を越える追加費用が発生
・費用の一部を分譲会社/施工会社が負担

建物の保証期間について

大規模修繕工事で不具合が発見された場合、管理会社を通じて分譲会社/施工会社に申し入れをするケースが多くあります。

※アフターサービス10年間
※品確法10年間
※瑕疵担保責任10年間
※不法行為責任20年間

分譲会社や施工会社は、はじめから何とか負担を回避しようと、上記のような保証期間を盾に拒否してくる場合があります。外壁タイルの浮きや構造的な懸念により、身体生命に危険を生ずる場合があるような時間については、不法行為責任として弁護士などと交渉して無事に一部もしくは全部の費用負担を実現している背景があります。そのため保証期間10年を頭から信じ込まないようにしていただくことが大事になります。

不具合に関する調査の流れ

詳細な調査

調査・検証
工事の中断を伴うことが多いものの、短いもので3~7日、長い場合は3週間~1ヶ月程度時間がかかる場合がある

管理組合への報告
2、3週間~1ヶ月程度かかります。

分譲会社/施工会社へ補修・その他を要請

発覚した事象によっては学識経験者などの判断を仰ぐ必要が生じる場合もあります。

補修承諾

費用負担交渉

補修方法検討

補修工事着工

補修工事完了

<もし補修を否認された場合は>

補修否認

訴訟検討

裁判開始 and 自主工事

和解 or 判決

裁判になるとより長期化が予想されるため、自主工事に踏み切る場合もあります。

※裁判を起こした場合も和解で時期が早まることも

建物の不具合を隠されないために

  • 適正利潤の範囲内で工事を発注する
  • 施工会社との良好なコミュニケーション
  • 実数精算項目の数量表と施工図の作成
  • 理事/修繕委員が自ら確認するか、信頼出来る第三者に確認を依頼する
  • 不具合が発見された場合の対処手順などを施工計画書に明記する

大規模修繕工事後の不具合発覚を予防するために

  • 特定建築物定期調査は適正利潤を考慮して発注
  • 施工後10年以内に第三者による建物調査の実施
  • 大規模修繕工事前の劣化診断は竣工後10年以内に実施
  • 大規模修繕工事のコンサルタントは適正利潤とスタンスを考慮して発注

 

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