マンション管理費コストダウンのポイント ~人件費編~

マンションにおける管理費のコストダウンは、多くの管理組合で関心のある話題でしょう。何しろ毎月必要なお金の話になりますので、組合の役員の方だけでなく、組合員の方も関心のある話です。

ここでは、他の管理組合での成功例や失敗例を踏まえて、管理費のコストダウンのためのテクニックについてさくら事務所マンション管理士が解説します。

マンション管理費の見直しは、委託内容の見直しから

管理費を見直す手法として「委託業務内容を変えずに委託費用を見直し」「委託業務内容変更を含めて見直し」「管理会社の変更も視野に入れた見直し」「外部の専門家を起用して見直し」などいくつもの手法があります。

業務内容を変えずに費用だけ変更するのは管理会社に負担が大きく、ハードルが高いでしょう。また、管理会社変更や外部専門家を入れた見直しは、劇的なコストダウンの可能性はあるものの、管理体制を根本から変更する大がかりなものとなります。

まずは、委託業務内容を見直すことでコストダウンを図るのがオーソドックスな方針でしょう。

更に委託内容を見直し業務の合理化を図るには、人件費の見直しが重要です。委託費用のうち、大きなウェイトを占めるのが人件費です。

具体的な人件費にまつわる管理費コストダウンの5つの手法をご紹介します。

管理費コストダウン①管理員の業務時間を短縮する

管理員が常駐していれば何かと便利なことがたくさんありますが、その反面で、勤務時間に応じて人件費が発生します。そこで、管理員の勤務時間を短縮することが考えられます。

例えば、8時間勤務している管理員を4時間にすることで、当然人件費はその分減少します。管理員の勤務時間削減のポイントを紹介します。

管理員の勤務時間と費用は連動しない

仮に勤務時間が半分になったとして、管理員業務費用が半分になるとは限りません。

これは管理員の人件費だけが業務費用ではないからです。管理員業務費用には、管理員の人件費のほかにも直接間接の経費などが含まれています。こうしたことから、管理員の勤務時間と費用がそのまま連動するわけではないことを覚えておきましょう。

管理員を複数名にするメリット

管理員業務が複数の担当者になると、1名あたりの労働時間が短縮されます。

その結果、管理員1名当たりの福利厚生費用などが免除される場合があります。こうした考え方を利用したコストダウンも可能な場合がありますので、管理会社に相談してみてもいいでしょう。

ただし、管理員が複数になると業務の引継ぎや理事会からの伝達事項に支障をきたす恐れや管理員の業務品質にギャップが生じる可能性があるというようなリスクもあります。

管理員の給与が上がるわけではない

最近は管理員業務費用の値上げを管理会社側から要求されることもあります。

それを了承しても管理員の給与が上がるわけではありません。「給料が上がってよかったですね」と管理員に声をかけたのに話がかみ合わなかった、というケースもありました。

管理員業務費用が値上げになった場合でも、管理員さんの給与が上がるということに直結していないこともあります。

管理費コストダウン② 定期清掃の回数を減らす

定期清掃

定期清掃は毎月実施の定期清掃を隔月に変更したり、年4回に変更したりするとコストダウンが図れます。

ですがその分、共用部などの汚れが放置される期間が長くなるというデメリットがあります。

定期清掃を減らす場合のポイントをまとめてみました。

清掃は実施時期も見極めよう

清掃の回数も重要な部分ですが、実施する時期も同様に大切なポイントです。

例えば、梅雨や台風シーズンを考慮してタイミングを決めるだけでも効果は変わります。

台風が来る前にきれいにしても、すぐに台風の風雨で汚れてしまいます。○カ月に1回実施という定周期にこだわらず、年○回の定期清掃をより効果的に実施する時期の見極めも重要です。

日頃から汚れない工夫も

例えば、エアコン室外機の天板が汚れていると、共用廊下も汚れやすくなります。

共用廊下を汚れ難くするために、エアコン室外機の天板などの清掃を日常清掃に含めることもできます。

これにより、共用廊下が降雨の影響などで汚れ難くなる半面、日常清掃料はアップする場合もありますので、その差額との兼ね合いにもなりますが、”汚さない工夫”も定期清掃の回数を減らすには重要です。

管理費コストダウン③ 定期清掃に必要な機材を組合で購入

定期清掃に必要な清掃機材を組合で購入、日常清掃のスタッフが実施するように変更する方法もあります。

外注費が減る分コストダウンになりますが、反対に機材の購入費や必要な業務スキルの問題があります。

清掃機材を組合で購入する場合のポイントは以下のとおりです。

汚れが放置される期間が短くなるのがメリット

専門の機材を購入すれば、定期清掃でしか行われなかった業務を日常清掃の合間に行うことが可能になります。

その結果、共用廊下やロビーなどの汚れが放置される期間が短くなるのです。

汚れが顕著な箇所をスポットで清掃することで、汚れが落ち難くなる前に精が行われるため、その成果が実感できるケースもあるでしょう。

機材や洗剤などに関する専門知識が必要

定期清掃の専門業者の使う機材には、相応のスキルが必要なものもあります。

清掃員の業務スキルが不足する場合には、清掃員の交替が必要な場合もあります。

そうした業務スキルを持っている人材は人件費も高くなります。

コストダウンのつもりが逆にコストアップになってしまうこともあるため、注意が必要です。

マンションの規模によっては導入できないことも

マンションの規模によっては、清掃機材の購入はハードルが高いこともあります。

機材のコストや原状の定期清掃の費用にもよりますが、少なくとも150戸程度以上でないと目に見える効果がでないこともあります。

小規模なマンションでは、購入コストを賄うことができないこともあり、マンションの規模や管理費の金額で導入が困難なケースもあります。

管理費コストダウン④ コンシェルジュの業務時間を短縮

大規模なマンションなどでは、コンシェルジュが常駐しているマンションもあります。

これを減らせばコストダウンになることは間違いありませんが、こうしたサービスを求めてそのマンションを購入している人もいます。個々の居住者によってニーズに差があるサービスを見直す際にはいくつかポイントがあります。

業務時間を減らしても連動して費用が下がるとは限らない

管理員の業務と同様に勤務時間が半分になっても業務費用が半分になるとは限りません。

コンシェルジュの場合は人件費自体も高いものですが、それに付帯する直接間接の経費も相当なものです。

コンシェルジュ業務を複数の担当者にすることで、1名あたりの所定労働時間が短縮され、管理員と同じように福利厚生費用などが免除される場合は、コストダウンになることもありますが、複数の人員となることで引継ぎなどに支障をきたす恐れがあることも管理員業務と同様です。

事前の意見集約がポイント

コンシェルジュのサービスは、個々の居住者によってニーズの強さが大きく異なる傾向があります。
このため、コンシェルジュサービスを見直す場合には、事前の意見集約が重要なポイントとなります。ホテルライクなサービスの提供には、コンシェルジュサービスは不可欠ですが、居住者の要望が多岐にわたるため、業務を減らせないというケースもあります。

管理費コストダウン⑤ 24時間有人管理

夜間常駐警備から機械警備+巡回警備に変更にすることで、警備業務の人件費が削減されコストダウンできる場合があります。

ただ、セキュリティに関しては、コストダウンするのを好まない居住者もいます。お金がかかっても安心、安全が最優先という人もいるのです。

この兼ね合いが重要となります。

セキュリティに関する意識調査が必要

コストダウンになるとはいえ、居住者のセキュリティに関する意識調査が必要です。

セキュリティのレベルを下げたくない人もいるでしょう。24時間有人管理から夜間は機械警備に変更すると不安に感じる人も少なくありません。

安心、安全は誰もが願うことですので、セキュリティに関する事項は理事会や委員会で慎重に協議を重ねていくことが大事です。

警備会社の選定

夜間に1回から2回、不定時の巡回警備は抑止効果が高いといわれています。

いつ巡回にくるかわからないほうが抑止効果は高いからです。こうした巡回警備を得意にしている警備会社もあります。

この他にも機械警備の仕様を十分に検討すべきです。仕様は警備会社ごと、プランごとに異なります。どれくらいの費用でどんなことができるか比較検討を行いましょう。

管理費の課題を明確にすることが重要

管理費用のコストダウンはどの管理組合にとっても共通の問題です。

今回ご紹介した方法も、マンションの総戸数などの規模を問わず取り組み可能なものから小規模なマンションでは導入が現実的でないものもあります。

解決すべき課題はマンションによっても異なりますが、自分たちのマンションのどこに課題があって、管理のコストと品質のバランスについて管理組合の方針を決定、管理組合に共有して、一部の理事や委員の独断になることがないよう丁寧な説明を繰り返すことが大切です。

マンション管理のプロがアドバイス! おすすめのサービスはこちら

関西圏 管理費見直し・管理会社変更サポート

お役立ちコラム 関連記事