外壁タイルの施工不良が2005年~6年に集中、その背景には?

さくら事務所では、過去に多くのマンション管理組合さまからのご依頼で、外壁タイルの瑕疵トラブルの調査・コンサルティングを行ってきました。

残念ながら、その多くが施工時の不良に起因するもので、中でも下地になんらかの不適切な施工が見られるものがほとんどでした。

今回は過去にさくら事務所が行った調査から竣工年ごとの傾向を調査、その背景について技術的な面から考察しました。

調査を行ったのは、さくら事務所が2004年から2019年までに行った外壁タイルの調査60件(1998年~2012年竣工)です。

竣工年別のデータ件数がこちらになります。
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特に多くの外壁タイル不具合が見られたのが2005年と2006年のマンションで、この2年だけでも全体の調査件数の38%にも上ります。

その背景にはどんなことがあったのでしょうか?

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工期短縮、経済合理性を追い求めた施工へ

工期短縮の流れから下地モルタルの施工が省略されコンクリート直貼りへ

マンションの外壁タイルの施工には、主に湿式工法が用いられています。

タイル張りの下地としては長く、左官工事によりコンクリート面に全面的にモルタルを塗る「モルタル下地」が一般的でした。

ですが、外壁タイルを張るにあたっては、下地が十分に乾いていること、目荒らし(平滑だとしっかりくっつかないので表面を粗面状に加工)をすること2つが前提です。

下地モルタルは、乾くまでの養生期間(オープンタイム)が必要になるのが工期短縮のためにはネックとなります。

ここでしっかり乾かさないと乾燥収縮の問題から、上に貼るタイルの剥離や浮きの原因となります。

そこで、最近では接着材料の進歩や、剥離対策用の工法開発などにより、躯体コンクリートへのタイル張りを行う有機系接着剤貼りが普及しつつあります。

下地モルタルを施工しないため、養生期間の2週間から1か月、工期短縮が可能になるのです。

塗装合板型枠(パネコート)の普及

ですが、同時に「塗装合板型枠(パネコート)」という型枠の表面にウレタン塗装がされた型枠材が用いられるようになります。

これにより、コンクリートの表面の仕上がりが鏡のように平滑になり、型枠の脱型もしやすく繰り返し使用することができるなど施工性だけでなく経済性もアップしました。

ですが、タイルの下地として考えると、表面が平滑になってしまうと、接着強度が得られにくいためタイルがしっかりと接着しにくいという問題も出てきます。

確実な施工を行うためには念入りな目荒らしが必要になりますし、更に、型枠をコンクリートから外しやすくするための型枠剥離剤がコンクリートの表面に残っているとタイルの浮き剥離の原因になりますので、しっかりした表面の清掃も欠かすことができません。

多くのマンションでは、この目荒らしや清掃などの下地処理が問題で、後に外壁タイルの不具合を起こしているのです。

また、コンクリート直貼りで計画された場合でも型枠の継ぎ目などに発生する段差などを調整するために、ごく薄く(約1mm前後)下地モルタルがコンクリート面の一部に施工されることも多く、乾燥したコンクリート面にモルタルが硬化するために必要な水分が急激に吸収されることで発生するドライアウトによる下地モルタルの硬化不良など、下地の施工不良が原因となる外壁タイルの不具合はさまざまです。

2005年に建築学会によりマニュアルが改定される

2004年には、日本建築学会より陶磁器質タイル張り工事の建築工事標準仕様書(JASS19)において改定がありました。(※マニュアルの発行は2005年2月)

この改定により、これまではタイル下地についての記述はありませんでしたが、コンクリート面の処理方法について記述され、採用事例が増加していたコンクリート下地処理の記述も加えられています。

度重なる外壁タイル剥離の問題を受けて改定されていますが、反映されたとしても、以降に設計されたものになりますので、2005~6年に竣工した物件にはまだ活かされていないでしょう。

2012年でマニュアルは更なる改定へ

2012年、JASS19は更に改定され、吸水調整材の使用や目荒らしについても詳細に記載がされるようになりました。

また、コンクリート直貼り工法や外壁タイルの有機系接着剤張りについても記述され、タイル張り工事の品質管理について細分化された他、接着力を判定するための引張試験の判断基準も大幅に改定されました。

市場の影響を受け、施工会社には受難の時代に

では、2005年、2006年は不動産市場や建築工事市場ではどのような背景があったのでしょうか?

2003年から不動産ミニバブル、ファンドバブルとも呼ばれる時代に入り、土地価格が高騰。

2003年、2004年には専有面積を小さくする傾向も見られたが、2005年にはそれも元の状態に戻っています。

土地価格が上向きつつあり、高値で土地を仕入れたものの、在庫を抱えるリスクを恐れ、分譲価格には転嫁せられない状況が続き、そのしわ寄せが施工のコスト削減に向かい、施工会社は受難の時代でもありました。

大きなニュースになった姉歯事件もちょうどこの頃のこと。

このような背景から、上記のような効率化、工期短縮の動きが過剰に働き、外壁タイルの下地施工不良などが数多く発生する原因になったのかもしれません。

施工方法は改良されつつも、すべてのマンションで安全とは言えない

外壁タイルの施工方法については、度重なる剥落事故を受け、マニュアルも改定されてきましたが、それでもすべてのマンションにおいて安全であるとは言い切れません。

また、外壁タイルの施工不良はその修繕費用や修繕工事に伴う生活環境への影響も大きいのが、マンションの所有者や居住者にとっては大きな問題でしょう。

ほとんどのマンションでは、外壁タイルのアフターサービス保証期間は2年と設定されていますが、引渡し後10年間の瑕疵担保期間を過ぎてしまっている場合でも、調査によって新築時の施工に問題があることが確認された場合には、分譲会社や施工会社に補修費用を負担してもらえることは少なくありません。

第一回目の大規模修繕工事を迎える頃までには、外壁タイルの状況を一度専門家にチェックしてもらうことをお勧めします。

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