老朽化マンションの出口戦略 -その4

前回までに、方針を決定する時期と長寿命化に向けた改修工事についてお話をしました。

今回は、マンションの出口戦略として区分所有を解消、土地を売却する選択肢について考えます。

まず、区分所有を解消して土地を売却するための決議方法ですが、現時点の区分所有法では全員の賛成が必要でとても高いハードルが立ちはだかっています。

この高いハードルは阪神大震災で被災したマンションで、建物が全壊判定されているのに解体できないという問題で浮き彫りとなりました。

この事態の解決を図るため被災マンション法を改正して5分の4の賛成で区分所有が解消できる様になりました。

また、耐震性が著しく不足しているマンションについても、マンション建替え円滑化法を改正して被災マンションと同様に、5分の4の賛成で区分所有が解消可能になりました。

これらは被災したマンションや耐震性不足のマンションを解体、除去するためのもので、一般的なマンションに適用されるには至っていません。

今後、マンションのスラム化防止に向け区分所有法の改正が望まれるところです。

早期の方針決定で解体準備金の積み立てを

「区分所有の解消・土地の売却」は、早い時期に方針を検討した結果として積極的に選ばれるケースと、方針を決定することができず結果的に他の方法について選択の余地がなくなったというケースが考えられます。

両者の違いは、早い時期に方針を決定した管理組合ではあれば、建物解体に要する費用を解体準備金として計画的に積み立てることができるということになります。

立地に恵まれたマンションであれば、土地の売却代金から建物解体費用を捻出することも可能で、買い手を探すにも苦労は少ないと思いますが、立地に恵まれないマンションでは買い手探しもさることながら、売却金額が建物解体費用を下回る可能性もあります。

このようなマンションでは、建物解体費用が計画的に準備できていない場合、土地を売却することもままならず建物が放置されスラム化する可能性が高くなります。

また、老朽化した建物を解体して土地を売却する場合、大きな障害となるのは新たな住まいを準備することができない居住者の存在です。

建て替え、長寿命化改修、土地売却、いずれも早めの方針決定と資金準備を

この問題を根本的に解決するためには、定期借地権のマンションで実施されているように長期修繕計画に建物解体費用の項目を設け、早い時期から解体費用を積み立てておく方法が最も現実的ですが、このような長期修繕計画が作成され運営されているケースは、ごく限られた管理組合であるというのが現状です。

ここまで、マンションの出口戦略として建替えの可能性から長寿命化改修、土地売却などについて考えてきましたが、建替えを含め何れの方針を選択する場合でも資金準備が肝要であることはご理解いただけたと思います。

お住いのマンションをスラム化から守るために、できるだけ早く方針を検討し準備を始めて頂きたいと切に願います。

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