30年後に資産価値が急落するマンションと、下降が緩やかなマンション(または資産価値が上がる)マンションにはどのような違いがあるのでしょうか?
本記事では、築30年マンションの資産価値の値下がり率から、資産価値を維持して売却するコツまで詳しく紹介します。
マンション資産価値の30年後の値下がり率は?
マンションの資産価値を測る指標は色々ありますが、ここでは首都圏の中古マンションの成約価格を比較します。
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」
上記表によると、築0~5年と築31~35年の30年間では㎡単価が約35%、築6~10年と築36~40年では約50%の下落率です。30年前から考えると下落率は大きいですが、築30年頃を節目に価格の下落が落ち着いています。
マンションは管理状態によって価格を維持または上昇させ高く売ることも可能です。築30年のラインは管理力の差により売れるマンション・売れないマンションへの大きな分かれ道と言えます。
30年後も資産価値が高いマンションの特徴
30年後も資産価値が高いマンションには下のような特徴があります。
・立地がよい
・修繕積立金が不足していない
・古い設備が更新されている
(1)立地がよい
マンションの資産価値を決める最大のポイントは立地です。
再開発エリアや駅近といった好立地なマンションは、築年数が経過しても需要が高く、資産価値も落ちにくくなります。むしろ、周辺環境の向上によって資産価値が上がる可能性もあるのです。
(2)修繕積立金が不足していない
築30年頃は2回目の大規模修繕を終えているマンションも多いでしょう。1回目の大規模修繕と比べ、2回目の大規模修繕は管理組合の管理力が試されます。資金不足により、金融機関からの借入・修繕積立一時金の徴収・修繕積立金の大幅な値上げなどをしておらず、健全に2回目の大規模修繕を乗り越えたマンションは、管理力が高いと判断でき、今後資産価値も落ちにくいでしょう。修繕積立金の積立方式は、均等積立方式であることが理想です。
また、必要な工事を先延ばしにせず行っているか、不要不急な工事を行っていないかも重要なポイントであるため、修繕積立金の収支状況や修繕履歴を議事録などで確認しておきましょう。
(3)古い設備が更新されている
空調、エレベーター、照明などの共用部の設備は築年数の経過と共に古くなります。専有部だけきれいでも、その専有部に移動するまでには共用部を通らなければなりません。古くて型落ちした設備では、マンション購入を検討する人への訴求力に欠け、資産価値に影響するでしょう。必要に応じて更新(交換)しましょう。
築30年マンションにはメリットもある
築30年のマンションを売る際、アピールポイントになるメリットは下記の通りです。
・価格が安く価値の下落幅が少ない
・住宅ローン控除が適用される
・税金の負担が少ない
・新耐震基準を満たしている
価格が安く価値の下落幅が少ない
マンションの資産価値の下落幅は30年で一旦スローダウンします。そこから大きく下落する可能性は低いです。令和5年度マンション総合調査結果によると、永住意識は60.4%と前回調査より減少しており、いずれ住み替えを検討している人が増えているようです。ゆくゆくは売却を検討している層にとっても、価格の下落幅が落ち着いたマンションは、下落幅が大きな築浅マンションよりお買い得物件としてアピールすることも考えられるでしょう。
令和5年度マンション総合調査結果
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf
住宅ローン控除が適用される
2022年の制度改革によって、登記簿上の建築日付が1982年(昭和 57 年)1月1日以降の家屋であれば、住宅ローン控除を利用できるようになりました。
築30年のマンションでも住宅ローン控除が適用されるようになったため、マンションの購入検討者にとって選択肢が増えました。「住宅ローン控除が適用されないから」といって物件を見送る購入者は少なくありません。こちらも、将来マンションを売却する際のアピールポイントになるでしょう。
税金の負担が少ない
築浅マンションに比べて年数が経っているマンションは、税金が安くなるというメリットもあります。
固定資産税は物件の評価額で納税額が決まるため、建物の資産価値がほぼゼロと見なされる築30年マンションは安くなりますし、不動産所得税も築年数に応じた軽減措置が適用されて税負担が軽いのです。
新耐震基準を満たしている
築古のマンションで最重要なのは、新耐震基準を満たしているかどうかです。
新耐震基準とは、1981年に導入された新しい耐震基準で、震度6強~7程度の揺れでも家屋が倒壊・崩壊しないことを基準としています。これが満たされていないと融資が受けられず、将来的な不安も加わって買い手が付かない状態になりやすいのです。
築30年のマンションは新耐震基準を満たしているため安心です。価格も安いことからニーズがあるでしょう。
築30年マンションを購入するデメリット
メリットがある一方で、築30年マンションを購入する際にはデメリットも発生します。あらかじめ下記の場合を想定しておきましょう。
・リフォームやリノベーション費用がかさむ
・管理費・修繕積立金が高い
・大規模修繕工事が目前に迫っていることがある
・住宅ローンを組める期間が短くなる
リフォームやリノベーション費用がかさむ
築年数が古いマンションは、内装修理のほかバス・トイレ・キッチンなどの設備交換、給排水管の更新工事などが必要になる可能性が高いです。
安く売り出されていることもありますが、リフォームやリノベーションで最低限いくら掛かるのかを予想するのは難しく、工事をしてみないとトータル費用を把握しにくいというデメリットがあります。
管理費・修繕積立金が高い
修繕積立金の徴収方式が段階増額積立方式となっている場合、徐々に値上げが実施されるため、築30年の場合は購入時点から高い金額設定になっているでしょう。段階増額積立方式でなくても資金不足などの理由で値上げが実施されていることも。
国土交通省のマンション総合調査によると、完成年次が平成2年~平成6年までの管理費(使用料・専用使用料からの充当額を除く)は平均11,141円、修繕積立金(使用料・専用使用料からの充当額を除く)は平均13,519円です。合計すると、毎月約2万5千円ほどのコストが築30年マンションの購入によって掛かると予想できます。
参照:国土交通省「令和5年度マンション総合調査 管理組合向けの調査の結果」
大規模修繕工事が目前に迫っていることがある
およそ12年に一度行われる大規模修繕工事は、築30年マンションの場合、2回目が迫っている可能性もあります。管理組合が資金不足であれば修繕積立一時金が徴収されることもあるでしょう。
また、工事中には足場仮設によりバルコニーが使えない、日当たりが悪い、工事に伴う騒音悪臭など生活が制限されることも考えられます。
住宅ローンを組める期間が短くなる
マンションの法定耐用年数は47年のため、築30年マンションを購入する際に組める住宅ローンは最長で17年です。年齢などの制約によって組める人は限られてきますから、ニーズの幅は狭まるかもしれません。
さらに、法定耐用年数は税法上の減価償却の計算に用いる基準のため、賃貸収入を得る目的でマンションを探している人にとっては、築30年マンションの経費計上できる期間が短いと判断される恐れもあります。
築30年のマンションはいつまで住める?
国土交通省の調査によると、マンションの平均寿命は68年とされていますが、定期的なメンテナンスを行い適切に修繕していれば、100年以上住める可能性も十分あります。
築30年マンションの場合は、平均であと38年、管理状態によっては70年以上住むことが可能です。
参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」
寿命と法定耐用年数は違う
マンションの法定耐用年数は47年ですが、これは減価償却費を計算するために定められた年数であり、マンションの寿命を表す数字ではありません。築30年場合、残りは17年となりますが、資産価値がなくなる訳でも住めなくなる訳でもないのです。
法定耐用年数と寿命の違いについてさらに詳しく知りたい場合には、下記記事をご覧ください。
マンションの耐用年数と寿命は違う!何年住める?寿命を過ぎたらどうなる?
築30年マンションの資産価値を維持して売却するコツ
築年数が経ってもマンションの資産価値を維持するためには、専有部への対策だけでは限界があります。
築30年マンションの資産価値を維持しながら高値で売却するコツは、以下の4つが重要です。
・マンション全体の管理力を上げる
・ハザードリスクに備える
・設備や施設グレードアップを考える
・住宅情報履歴(いえかるて)を利用する
マンション全体の管理力を上げる
築年数が経っても資産価値が落ちないマンションはとにかく管理が徹底しています。
区分所有者全員がマンションは共有財産であるという意識を持ち、無駄なコストを削減することを念頭に置き、本当に必要な部分に修繕積立金や管理費を使うことが資産価値を維持するポイントです。
区分所有者の意識改革こそが資産価値を守ります。
ハザードリスクに備える
災害によるマンションへの急激なダメージを防ぐために、建物の防災設備が充実しているかも確認しましょう。災害想定エリアはハザードマップで確認できます。
想定されるリスクに対してきちんと対策し、近隣マンションとの差別化も図ることで、いざという時に安心して在宅避難ができる点も購入検討者へのアピールになります。
電気室への浸水対策や備蓄・非常用電源の確保、火災訓練の習慣化も取り入れたいところです。
設備や施設グレードアップを考える
専有部の設備交換はもちろん、将来的なバリアフリー化やニーズに合わせた設備の導入も、購入検討者へのアピールになり資産価値を維持する助けになります。
近年特に人気な設備としては、共用部は宅配ボックス、24時間利用可能なゴミ置き場、オートロック。専有部なら食洗器、ディスポーザー、浴室乾燥機などが人気です。
住宅情報履歴(いえかるて)を利用する
住宅情報履歴(いえかるて)はマンションの維持・管理を証明する資料であり、設計図書や修繕履歴などの情報によってマンションを適宜メンテナンスしていることが証明できます。マンションを売却する際に有利となるため、活用していきましょう。
参照:一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会「いえかるて」
30年後のマンション資産価値は管理で変わる
築30年マンションの資産価値は管理で大きく変わります。
そのためには、適切な時期に長期修繕工事を行い妥当な金額で工事を依頼することや、日頃からマンションの劣化や破損を早期発見し修繕していく必要があるのです。
さくら事務所では、マンションの長期修繕計画の見直しや作成をお手伝いすることで、管理力の高いマンションになるようサポートいたします。
また、マンション管理のプロが中立的な立場で行う「マンション管理ドック」によって、財務不良やリフォームトラブル、ハザードリスクに備えるためのアドバイスをさせていただきます。
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