コロナ禍で上がるマンション管理会社変更(リプレイス)の声とそのリスク

近年、マンションの管理会社変更(リプレイス)に関するお問合せが増えています。

国土交通省のマンション総合調査の結果でも、「管理会社変更を実施したマンション」は平成25年の18.3%から、30年には20.9%と増加傾向にありました。

ですが、今の時代において安易にマンション管理会社変更(リプレイス)を行うのは大きなリスクもあります。

ここでは、マンション管理会社変更の近年の傾向とその注意点について、さくら事務所のマンション管理士が解説します。

新型コロナウィルスも影響?管理会社変更を望む声

マンション管理組合が管理会社変更(リプレイス)を検討するきっかけとして多く寄せられるのが、以下のような例です。

・管理員の対応が悪い
・フロント担当者のビジネススキルが低い
・管理費が高い(削減の余地がある)
・清掃が不十分
・日常的な修繕の費用が高すぎる

更に近年では「管理会社から契約解除の申し出があった」と、管理会社変更をせざるを得ないケースも度々伺います。

また、新型コロナウィルスの感染拡大も少なからず影響しているようです。

外出自粛、在宅勤務などマンション内で過ごす時間も増え、「普段気にならないような管理会社の対応も気になるようになった」「(先々の見通しが明るくない中、)管理費などのランニングコストについても見直しを検討することになった」というケースもあります。

楽観的にコストダウン・業務改善が必ずできると考えている

多くの方が、管理会社を変更することにより「コストダウン」もしくは「業務改善」が可能になると考えています。

管理会社変更(リプレイス)において重要なのは、「サービスレベルを維持、もしくは向上させながらコストを抑える」ことです。

管理費が下がったところで、サービスレベルが著しく下がってしまっては、見た目の費用こそ下がってもコストパフォーマンスは落ちたことになるでしょう。

例えば、月々のランニングコストは従前の管理会社より下がっても、日常的な修繕費用が高かった、というケースもあります。結果として、こちらもコストダウンできたとは言えません。

住民の満足感が得られなければ、管理会社変更(リプレイス)にも意味がありません。

業務改善についても、住民と管理会社の間で鍵となる「管理員」がどんな人かによっても左右されるでしょう。

できれば事前に面談の機会などが持てればいいのですが、多くのケースにおいて管理会社は管理業務の受託が決定したあとに管理員などのスタッフを募集しますので、どんな人に来てもらえるかはわからないケースがほとんどでしょう。

成功報酬型コンサルティング会社の管理会社変更(リプレイス)に要注意

管理会社変更の成功報酬型は要注意マンション管理組合に管理会社変更(リプレイス)を勧めるのは、多くの場合、「成功報酬型」と呼ばれるコンサルティング会社です。

成功報酬型とはつまり、管理会社を変更し、削減できた年間管理費の50~100%をコンサルティング料に設定する手法です。

管理組合としても、成功報酬型であればリスクを背負うことなく、管理委託費の見直しをすることができます。

ですが、コンサルティング会社からすれば、管理費が削減できればできるだけその報酬になりますので、とことん削減の方向に進めようとします。

結果、管理組合にとってベストな結果には至らなかった、という例は多数伺います。

ありがちなのは、売主系列の管理会社から、ローコストが売りの独立系管理会社に変更するパターン。

更に、スペックダウンも含め清掃業務などを細かく見直し、管理委託費をどんどん削減していきます。

結果、コンサルティング会社は年間管理費削減分に応じて、数千万の利益を得ますが、管理組合は管理委託費こそ削減できてもそのサービスの著しい低下から、かつてのような快適な生活ができなくなってしまう可能性が高まるのです。

また、コンサルティング会社の中には、現行のマンション管理会社について、問題をあえて大きくし、混乱させ、本来必要のない管理会社変更を行わせて報酬を得ようとするところもあります。

管理会社変更によるデメリットを説明しないまま、変更することによるメリットだけを強調するようなコンサルティング会社は特に要注意です。

管理会社変更のリスクを追っているのは、コンサルティング会社ではなく、あくまで管理組合です。

時代の流れが生んだ「マンション管理会社変更」の大きなリスク

これまでも、不景気が続くと管理会社変更(リプレイス)のお問い合わせは増加する傾向にありました。

景気悪化に伴い、管理費などのランニングコストに目が向き、管理委託費のコストダウンの話から、管理会社変更(リプレイス)の話へと繋がっていくのです。

リーマンショック後でも、同様のことが起こりました。

当時のような「管理会社を競争させたら安くなる」といった風潮をいまだに信じている方もいますが、今はもうその時代とはマーケットが大きく異なっています。

年々増え続ける分譲マンションのストックに対し、管理業界は昨今のマンションで言われている「2つの老い(所有者・居住者の高齢化+建物・設備の老朽化)」に加え、「第三の老い(スタッフの慢性的な人手不足&高齢化)」が年々深刻化しています。

これは、定年延長や再雇用が進んできたことにより、 従来、管理員や清掃員を担ってきた年代の方が大きく不足していることが主な原因となっています。

管理会社各社は採用時の年齢規定をあげたり、定年を延長したり、 給料を改定したりと工夫をしているようですが、 なかなか効果が上がらないという話もあります。

1970年代以降「一億総中流」などといわれてきた影響もあって、 重労働やクレーム対応といった3Kのイメージのある管理員や清掃員の人材不足の問題は 、今後ますます大きくなることが予想されます。

これらの時代の変化を知らずに、成功報酬型のコンサルティング会社にすすめられるまま、リプレイスを検討したものの、引き受けてくれる会社がほとんどなく、やっと決まったところでも満足なサービスが受けられない、というケースもあるのです。

最悪の場合、現行の管理会社にも継続して引き受けてもらえずに、「自主管理」というかたちになってしまいます。

自主管理は組合の負担が大きいばかりか、既存の管理会社から新規の管理会社へのスムーズな引き継ぎが不可能になることから、一旦自主管理にしてしまうと、今後も管理会社に引き受けてもらえる可能性が厳しくなります。

高経年マンションの管理会社変更(リプレイス)はより慎重に

高経年マンションの管理会社変更は慎重に特に築年数が20年から30年ぐらいのマンションは要注意です。

なぜなら、このタイミングで安易に管理委託費の低額な管理会社に変更してしまうと、その管理会社に撤退された後の選択肢が自主管理しかないというケースに陥ってしまう可能性が高いからです。

低額な管理委託費だけでは利益確保が難しい管理会社は、高経年マンションでおのずと必要になる「修繕」で利益を確保しようとする傾向が強まります。

ですが、管理組合としては所有者の高齢化に伴い管理費や修繕積立金の見直し(増額)も難しくなり、適切で廉価な修繕を管理会社に求めがちになってしまいます。

これまで、マンション管理業界は、景気に左右されにくく、不景気になるほど優秀なスタッフが集めやすくなり、逆に好景気になると優秀なスタッフが辞めてしまうと言われてきました。

人手不足が叫ばれる今の時代、廉価な管理委託費で、適切な修繕が提案できる経験豊かで優秀なスタッフを抱え、担当者として配置することも難しくなっています。

そもそも、「営利を追及する企業である管理会社の利益」と「組合員から管理費を徴収して運営する管理組合の利益」は、この点では明らかに相反します。

結果として、「管理組合(適切なアドバイスと低廉な修繕提案を求める)」と「管理会社(低廉な委託費を工事費でおぎないたい)」間の期待ギャップが大きくなります。

「管理組合として当然の要望」も「管理会社としては過剰要求」とされ、管理会社から撤退通告を受けるという流れに繋がってしまいがちなのです。

マンションの管理会社変更(リプレイス)は最後の手段

さくら事務所でも、マンション管理会社変更(リプレイス)のコンサルティングは、単価固定の実数精算報酬というかたちでお受けしていますが、基本的に「マンション管理会社変更(リプレイス)は最後の手段」だと考えています。

上記のようなリスクがあることはもちろん、管理会社変更がコストダウンや業務改善につながるとは限らないからです。

リプレイスを検討する前に、今一度「現行の管理管理会社での改善は本当に難しいのか?」をご検討いただければと思います。

管理会社とのお付き合いにお悩みの方は、さくら事務所のマンション管理士にお気軽にご相談ください。

 

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