マンション大規模修繕工事の「見積が高い!」に潜む落とし穴

マンションの大規模修繕工事についてのお問合せやお悩みで多いのが、予算書・見積書などその工事金額に関わるものです。

大事な修繕積立金を使うため慎重に進めたいものの、専門用語も多く、その内容や相場がわからないため「過剰な金額になってはいないか?」「金額は妥当なのか?不安が募る」という方もいらっしゃいます。

標準書式や国のガイドラインなどがなく、一戸建てのように一般的な修繕費用目安の情報もないことから、「マンションごとに異なる」という言葉から、提案された内容を鵜呑みにし積極的に比較検討を行わないマンション管理組合もあります。

ここでは、さくら事務所のコンサルタントが大規模修繕工事の見積書のチェックポイントと大規模修繕工事の費用を考える上での注意点をご紹介します。

大規模修繕工事の見積もりでよくある事例

大規模修繕工事の見積もり過去にさくら事務所で見てきた大規模修繕工事の見積もりから、まずはその注意点・落とし穴をご紹介します。

面積などの数量が異なっている

見積は各項目「数量×単価」で計算されますが、この数量が実際のものと異なっているケースがあります。

過去の事例では、足場面積が実際の数字と大きく異なっており、数量計算書を取り寄せたところ、足場費用が200万ほど高くなっていました。

下請けの会社が算出した数量が間違っているものの、見積もりチェックを行う人もその数量が正しく拾えない場合はこのような事態も起こり得ます。

資格はあるものの現場や実際の施工についての知識がない人がチェックを行っていたり、コストの問題や見積提出までの時間的な制約などからそもそもチェックしていないこともあるためです。

また、単価は他社と比較されたり、だいたいの相場を調べることも可能なため、自然と金額を大きく見せるために大幅に数量を大きくして計算するケースもあります。

諸経費の項目が不明

現場経費や諸経費などが必要で、総工事費の5%、8%といった出し方をするところが一般的ですが、各項目ごとに諸経費を載せ、更に総額にも重ねて諸経費が何%と計算されているケースもあります。

保証料という名目で別の経費が載っていることもありますが、保証するのは「元請け」として当然のこと。

名目立てて取られるべきものなのか、疑問があれば確認しましょう。

数量も単価も高い

管理会社と系列の修繕工事会社に見積もりを依頼する(その際、他社の合い見積もりは依頼しない)場合、単価も高く出てくる傾向があります。

工事会社も営利企業であり、ある程度の利益を見込むのは必要で、会社の規模により上乗せが必要な金額も違ってきます。

新築時のスーパーゼネコンに大規模修繕工事の見積もりを取ると、大手の改修専門業者の3~5割ほど割高になる傾向があります。

他の業界でもいえることですが、ユーザーの手元にそのサービスが届くまでには何段階も、また大きな会社を経ている場合、それなりに費用を乗っける必要があるのです。

大手になれば、販管費や本部経費など、おのずとどこかから回収しなければなりません。

談合の一歩手前・・・、単価が妙にそろってる

大規模修繕工事の施工会社選定において問題になっている「談合」。

あらかじめ、受注する会社が想定されているため、そのストーリーに上手に乗せるため、横並びに近い単価を出してきます。

受注予定の会社が1番もしくは2番目に安くなるよう、設定されているのです。

こうなると、単価での比較は難しくなります。

関連コラム・・・「設計監理方式ではマンションの大規模修繕工事の談合は防げない」

大規模修繕工事で大事なのは適正な施工がされること

塗装は下地が重要見積もりをしっかりと確認・精査して、適正な材料・工法で安い金額で発注できても、一番大事なのは確実に施工されるかどうか、という問題です。

いくら安く発注できても約束が守られないといけません。

例えば塗装工事の場合。

見積書では「今ある塗装の表面を処理し、下地処理して塗装を2回塗る」となっていても、現場でその約束が守られておらず、実際には「写真に残し、報告するところだけを予定通りに行い、他は1回塗りだけ」ということもあります。

塗装工事では下地処理が最重要といっても過言ではありません。下地処理がしっかり行われていないと、どれほど良い塗料を使ったとしても、その効果を発揮することができません。

施工の際に適した気温、湿度がありますし、本来の仕様通りに施行しないと本来の耐久性を大きく落としてしまいます。下地処理がしっかりしていないと、後々トラブルになることもあります。

過去にさくら事務所で工事チェックを行ったマンションでは、大規模修繕工事の施工直後に塗装の不具合がおき、塗膜を採取し電子顕微鏡で確認したところ、適切な施工がされていないことが判明しました。

適切な仕様・施工方法に基づき、適正利潤で発注する

大規模修繕工事でコストダウンの落とし穴大事な修繕積立金を使うことになるため、ちょっとでも安く・・・と考えるのは当然かもしれません。

著しく高い金額で契約しないようにすることは重要ですが、いたずらに値引きを迫ったり、安く発注すると施工会社の利潤を奪うことになります。

結果、当初の下請け会社から変更されていたり、工期を焦り仕様通りの工事がされなかったりと、工事品質の低下につながる可能性があります。

適正利潤を下回る金額で契約すれば、適正な施工はされないと思って間違いないでしょう。

適切な仕様・施工方法に基づき、適正利潤で発注することが重要です。

オンラインで見積書から単価のチェックも

また、「大規模修繕工事 オンライン予算書・見積書チェック」では、マンション大規模修繕工事における予算書、もしくは見積書からその工事項目ごとの単価の妥当性をチェックを行います。

(現地確認は行っておりません。現地確認の上、より詳細な見積書のチェックをご希望に方は、「大規模修繕工事 見積書チェック」をご利用ください。)

大規模修繕工事の見積もりに不安がある方は、さくら事務所にお気軽にお問合せください。

 

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