国内で増加している「空き家」。
老朽化し、放置された空き家は、防犯・防災面でも近隣への悪影響が懸念されています。
マンションの場合、マンション内の住戸が空き家になっていても、ぱっと見ただけではわからないため、防犯面・防災面で直ちに問題視されることはありません。
ですが、マンションは一戸建てとは異なり、個人で所有するものではありません。
空き家となった住戸はマンションという資産を共有する、マンション管理組合、マンション居住者に大きな影響を与えることがあります。
実際に、マンション内で空き家が増加した場合、どのような影響があるのでしょうか?
さくら事務所のマンション管理士がマンション内空き家の増加の影響と、管理組合でできる対応策について解説します。
1、管理費・修繕積立金の不足がマンションスラム化を加速させる
マンション管理組合でまず大きな問題になるのが、管理費・修繕積立金の滞納です。
特に修繕積立金は、計画通りに積み立てても将来的な不足が懸念されるマンションが多い中、徴収すべきものも徴収できない事態は大きな痛手です。
建物の修繕計画にも大きく影響してきます。
戸数の少ない小規模マンションにとってはわずか数戸の滞納でも大きな影響をおよぼすことになります。
空き家が増え、滞納額が膨らんでいけば、マンションの修繕に必要な資金が集められず、進みゆく劣化を前に何もできず途方に暮れる状態になります。
修繕しないと危険を及ぼすような最低限の補修すらできなくなりやがては、スラム化への道をたどることになるでしょう。
建物の老朽化や居住者の高齢化で将来的な修繕資金不足が懸念されるマンションに、空き家の増加は、追い打ちになるかもしれません。
管理組合では長期に渡る管理費や修繕積立金の滞納があった場合、最終手段として当該住戸を競売にかけることもできます。
区分所有法により、他の所有者に著しい迷惑をかける区分所有者に対して、集会の決議に基づいて、この区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができるとしています。多くのケースではこの時点で支払いに応じてくれます。
また、管理費の滞納は5年で時効と考えられていますので管理組合としては放置せずに、迅速に行動することが肝心です。
2、人が住まなくなってまず傷むのが設備。マンション内に悪臭が・・・?
人の手が入らなくなると、住まいの劣化のスピードは早まります。特に、不具合や劣化が出やすいのが設備関係(水回り)です。
専有部内の劣化であれば、管理組合としてまだ被害は少ないのですが、問題は「封水切れ」。
排水管は通常、下水から臭気が上がってこないよう、S字型、P字型などカーブ部分に水をためており、これを封水といいます。
長期に渡り水が流されないと、排水管の中で蓋の役目をしている水が蒸発してしまい、下水からの臭気がダイレクトに上がってきてしまうのです。
近隣住戸にも下水の臭いが広がってしまう恐れもあります。
3、不具合に気がつくのが遅れ、気がついたころには大きな修繕が必要に
住んでいれば気がついてすぐ対処・修繕できるような不具合も、人が住んでいないとなかなか気づくことはできません。
雨漏りや漏水など、放置しておくことで被害が広がってしまうような不具合は特に要注意です。
劣化した排水管から漏れ出た水が階下や共用部に漏水被害をもたらすことも。
最上階や角住戸であれば外壁からの雨漏りに気が付かず、知らない間に劣化が進行しているかもしれません。
気がついたときには高額な修繕費用が必要になる事態になっているかもしれません。
マンション管理組合でできる「空き家」の対策
いかがでしたでしょうか?
これまで、マンション内の空き家が及ぼす可能性のある影響について触れてきましたが、このような事態を防ぐためにもマンション管理組合として、マンション内の空き家の増加を抑えることはできるのでしょうか?
また、空き家の増加を抑えることは難しいとしても、「所有者不明」という事態を減らし管理費などの滞納を防止することはできるかもしれません。
空き家になるきっかけとして多いのが「相続」です。
その部屋の所有者が亡くなり、相続が発生しても「相続登記がされない」「そもそも相続が放棄される」といった事情で所有者が特定できなくなってしまいます。
使われないまま管理されない「空き家」が放置されてしまうのです。
マンション管理会社や管理組合は各住戸の区分所有者を把握しておく必要がありますが、修繕積立金や管理費が滞納されてない場合には、所有者の死亡(相続の発生)になかなか気がつかないということもあります。
居住者の高齢化とともに、今後こういったケースはますます増えていくでしょう。
まずは「所有者不明」を防ぐ、居住者名簿
マンション管理組合は、万が一のために「本人以外の緊急連絡先」や「近隣にお住まいの親族」を把握できるような、居住者名簿を作成しておくことをおすすめします。
もし、その部屋の所有者と連絡が取れなくなった際にも、関係者に連絡が取れるようにしておくといいでしょう。
名簿作成の際は、個人情報が多く含まれますので、その取り扱いにも十分お気をつけください。