建替えか?延命か?マンションが決断すべきはいつか

築30年、40年のマンションでも「外壁や防水の補修を12年ごとに行っていけば、70年も80年も使っていけると思っていました」という方がいらっしゃいます。

「大規模修繕工事をお任せしていた管理会社も誰も、そのようなことは言ってくれなかった」とおっしゃる方もいます。

マンションも永遠ではありません。

いつかは終わるものとして「いつ終わるのか?どう終わるのか?」といった「マンションの終活」を、ある時期がきたら管理組合で話し合う必要があるでしょう。

マンションの出口戦略として、以下の2つの選択肢が挙げられます。

・建替え

・延命(建物の長寿命化)

マンションを解体し、敷地を売却その持ち分に応じて利益を分配する、という「敷地売却」も先進国ではスタンダードなマンションの終末ですが、日本では限られた一定の条件のマンションしか認められておらず、実現的ではありません。

残る、「建替え」と「長寿命化」、いつどちらに舵をきればいいのでしょうか?それぞれどのように備えればいいのでしょうか?

ここでは、マンション管理コンサルタントがマンションの終活の考え方を解説します。

建て替えvs 長寿命化、費用の違いは・・・

「建て替え」を考える際、一番のネックになるのがその資金です。

民間の一棟建てのマンション、例えば一世帯当たり1500万円くらいの建て替えの時に資金の調達が必要になるとします。

仮に60年間で1500万貯めようとしても、年に25万ずつ貯めなけらばなりません。

新築の時から毎月2万円ずつ建て替えのために積み立てていかないといけないということです。

計画的という意味では、大変理想的かもしれませんが、新築入居時からマンションの建て替えを考えて積み立てていくというのは、現実的には難しいでしょう。

「長寿命化」であれば、資金は建て替えの半分~約6割くらいを目安にするといいでしょう。(※規模や建物によります)

とはいえこれでもやはり、新築時から考えても修繕の費用の他、別途1万円を積み立てていく必要があるという計算になります。

建て替えか?長寿命化か?決断すべきはいつ?

だいたいどのマンションも三回目の大規模修繕工事をするころには、建て替えで行くのか長寿命化で行くのか、検討する必要があるでしょう。

築60年~65年まで36年なら残り30年弱、45年ならのこり20年で1000万を各々が積み立てないと、長寿命化の工事すら難しくなります。

しかも旧耐震基準で建てられたマンションであれば、耐震補強のための費用も追加になります。

「建て替えるのか?」「長寿命化を目指すのか?」この方針決定が遅れた場合は、建て替え・延命に必要な資金の調達が難しくなり、スラム化の道を進みます。

建物は丈夫でも給排水関係が完全に麻痺して使えなくなってしまう、ただ建物として残ってはいるがそこで生活はできない、という状態になるかもしれません。

そういった残された選択肢として「マンション敷地売却制度」などを利用し、敷地売却の道を選ぶことになるでしょう。

とはいえ、反対意見が強ければ敷地売却もできませんし、そこまで老朽化してしまったマンションですと、相続が発生していて相続人がわからない所有者不明の住戸も出てくるでしょう。

早期決断が、老後の年金生活を左右するかも

方針を決めたら、次にその資金の調達を考えなければいけません。

修繕積立金の他に、建替えのため、若しくは長寿命化のための積立金を決めていく必要があります。

仮に建て替えで50戸から100戸、150戸といった増床・増戸数がかなった場合、その分譲費用を建て替え費用の一部に充てることができますが、そういった特別な条件を満たした物件以外、建て替えの資金調達はかなり厳しいものになるでしょう。

出口戦略として、建て替えの実現の可能性を探る、無理だとわかった場合、長寿命化を目指すのか、もう60~70年経ったら敷地売却するのか、具体的に検討していくという流れになるかもしれません。

将来、年金生活になったとき、終の棲家と思っていたマンションにも住めなくなる・・・という悲劇を起こさないよう、なるべく早い段階でのマンションの終活を考えていきましょう。

自分たちだけで判断するのが難しい、プロのアドバイスを聞きたいという方は、マンション管理士にお問い合わせください。

管理規約の改正や管理会社さん変更など、そのジャンルに明るいマンション管理士さんはたくさんいらっしゃいますが、できれば、建物や設備に明るいマンション管理士に相談することをおすすめします。

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