マンション住まいの場合、避けては通れない修繕積立金。どのような用途で使われるのかご存じでしょうか。
修繕積立金は、マンションを所有している限り支払い続けなければなりません。長期的に見ると多額の出費になるため、用途はもちろん、相場や値上げの可能性についても理解しておきたいところです。
この記事では、マンションの修繕積立金の概要、相場や値上げの要因について解説します。納得して修繕積立金を支払うためにも正しい知識を身に付けましょう。
分譲マンションの修繕積立金とは?
分譲マンションの修繕積立金とは、長期修繕計画に則った大規模修繕や自然災害による損害など、万が一の修繕に備え区分所有者が毎月積み立てる費用のことです。
マンションの修繕には多額の費用がかかるため、不具合が生じてから修繕費用を用意するのは現実的ではありません。修繕積立金があれば将来の修繕費用を用意しておけるのです。
なお、プランどおりに修繕費用を積み立てられなくなることから、一度支払った修繕積立金は、マンションを売却しても返金されません。
混同されやすいですが、修繕積立金と「管理費」は別物です。修繕積立金の用途は「修繕」ですが、管理費の用途は「維持」。管理費は、共用部分の水道光熱費や管理会社への委託費用、設備点検などに使われます。
マンション修繕積立金の相場
国土交通省の調査によると平成30年度のマンション修繕積立金の1戸当たりの月額平均は11,243円です。しかし、修繕積立金はマンションの築年数や規模、長期修繕計画の修繕費用などで差があるため、一概にいくらとは言えません。
そこで国土交通省では、建築延床面積に応じた専有面積の修繕積立金平均額の目安を以下のように提示しています。
建築延床面積(20階未満の場合) | 専有面積の月額修繕積立金(㎡・月) |
5,000㎡未満 | 335円 |
5,000㎡以上~10,000㎡未満 | 252円 |
10,000㎡以上~20,000㎡未満 | 271円 |
20,000㎡以上 | 255円 |
※20階以上の超高層マンションは建築延床面積に関わらず、一律で338円(㎡・月)です。
参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
修繕積立金の算出方法
修繕積立金の平均額が必ずしもご自宅のマンションに当てはまるわけではありません。ここでは「長期修繕計画から算出」する方法と修繕積立金に関係する「修繕積立基金」について解説します。
長期修繕計画から算出
修繕積立金は長期修繕計画から算出可能です。通常、長期修繕計画は25~30年で考えられており、その間に必要であろう工事内容や費用が記載されています。修繕積立金は、工事のタイミングまでに目標金額を達成できるよう設定しなければなりません。
具体的には以下の手順で算出します。
- 長期修繕計画で「いつまで(月数)」に「いくら(金額)」必要なのか確認する
- 必要な金額を月数で割り、月額の修繕積立金合計額を算出する
- 専有面積を考慮し1戸あたりの月額修繕積立金を決定する
修繕積立金は、同じマンション内でも一律ではありません。基本的には、専有面積が大きいほど積立金額は高額になります。
修繕積立基金で万が一の修繕に対応できる
修繕積立基金とは、修繕積立金の一部となる資金のことで、新築マンション購入時に支払います。始めにまとまった資金を集めておくことで、月々の費用負担を軽減する効果があるのです。
また、新築時から一度も見直しを行っていない長期修繕計画や、見直しを行ったけど、項目や金額に漏れがあるような長期修繕計画を運用しているため、本来備えておくべき金額に満たない修繕積立金の徴収にとどまるマンションは、予定外の修繕費用が発生した場合、余力がなく、即予算不足に陥ることが考えられます。とくに建設から数年間は修繕積立金が少ないため、修繕費用を支払えないこともあるでしょう。
修繕積立基金は、修繕積立金を補う役割があり、月々の費用負担を軽減しつつ、修繕費用に余力を持たせられる貴重な資金です。
修繕積立金が値上がりする可能性がある理由とは
分譲マンション購入後、修繕積立金が値上がりする理由として「段階増額積立方式が採用されていること」と「長期修繕計画で見積もられた金額と現在の見積金額がずれていること」があげられます。
修繕積立金の徴収方法が段階増額積立方式の場合、将来にわたって段階的に積立金額が増額されることになります。段階増額積み立て方式は、築年数が浅いほど修繕積立金が低額で、一見ランニングコストが抑えられるように見えますが、どこかのタイミングで増額しなければ2回目、3回目の大規模修繕工事の際に、費用が不足する事態に陥ります。
平成30年時点で、段階増額積立方式が採用されているマンションは全体の約43%。築年数の浅いマンションほど段階増額積み立て方式が採用される傾向が見受けられました。あなたは自宅のマンションの修繕積立方式をご存じですか?
このタイミングでいつ、いくら増額する予定なのか、事前に確認しておきましょう。
また、長期修繕計画が作成された当初と現在では、必要な修繕内容や工事見積りは少なからず変わっています。消費税や人件費、資材などの高騰により、当初の計画よりも修繕にかかる費用がかさむことは珍しくありません。
計画通りに修繕積立金を徴収していたとしても修繕費用が足りず、修繕積立金の値上げを余儀なくされるケースは多いのです。
値上げのタイミングに決まりはない
修繕積立金が値上がりするタイミングに、業界的な統一ルールは存在しません。
なぜならマンションの修繕箇所や期間、費用などはマンションごとに異なり、必要な修繕積立金もマンションごとに異なるからです。
築年数が古くなるにつれて修繕が必要になる箇所が増えていくため、修繕積立金を増額する必要が生じることがあります。
また耐震性を高めるために耐震補強工事を行う必要がある場合もあるでしょう。
その場合、修繕積立金を増額し、工事の費用をまかなうことになります。
修繕積立金が値上がりすると、管理組合員には少なくない負担が生じることになりますが、
修繕積立金が値上がりすることは長い目で見ると良いことなのです。
適切な修繕計画に基づいて積立金を設定し、適切な修繕工事を行うことは、マンションの資産価値と居住快適性を維持するために欠かせないからです。
修繕積立金が不十分である場合には修繕費用を捻出するために、急遽住民から追加負担を求めることになります。
急な出費に慌てるよりも、あらかじめ余裕を持って修繕積立金を準備しておく方が、安心できるでしょう。
均等積立方式でも値上がらないとは言い切れない
均等積立方式は、計画期間において修繕積立金を原則値上げすることなく均等に徴収する方法です。
段階増額積立方式と比べると値上がりする可能性は低く、家計の計画も立てやすいメリットがあります。しかし均等積立方式でも値上がりしないとは言い切れません。
なぜなら、修繕計画は計画時の予測に基づくものであり、実際に必要になる工事や費用は変動するからです。
例えば想定より早く劣化した箇所や新たに発見された不具合があった場合、追加工事や予算の見直しが必要になるかもしれません。
災害や法改正などで工事内容や費用が変わることもあり得ます。
このように修繕計画が変更される場合は、修繕積立金もそれに応じて値上げされる可能性があります。
修繕積立金が値上がりするタイミングは、決まりもなければ予想もできないのです。
そのためマンション所有者は常に、修繕積立金の値上がりに備えておく必要があります。
マンションの修繕積立金について理解を深めよう
マンションの修繕積立金を負担に感じる居住者も多いかもしれません。マンションの財務状況によって積立金額や増額の有無に違いはありますが、修繕積立金は、適切に修繕をおこなうために必要な資金です。修繕積立金の理解を深め、当事者意識を持ち向き合っていきましょう。
また、修繕積立金を適切に使うには、マンション工事の知識が欠かせません。しかし、知識不足が原因で、管理会社任せになってしまったり割高な工事を発注してしまったりする管理組合が多いのも事実です。
さくら事務所では、一級建築士やマンション管理士など、国家資格を持つマンション管理のプロが、日常修繕工事や長期修繕計画の工事内容および見積書の妥当性をチェックするサービスをおこなっています。プロへの依頼は、管理組合が適切な修繕積立金の見直しを図るきっかけになるでしょう。
さくら事務所は管理組合のミカタです。よりよいマンション運営に向けてサポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。