大規模修繕工事の準備を進めるにあたって、多くのマンション管理組合では修繕委員会が設立されます。
大規模修繕工事はマンションにとって大きなイベントであり、修繕委員会の役割は重要ですが、設立や運営にあたっていくつかの注意点があります。
今回はさくら事務所のコンストラクション・マネージャーが大規模修繕工事を行うにあたっての修繕委員会の役割と注意点について解説します。
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修繕委員会は必要?適任者がいない場合は?
大規模修繕工事を実施するにあたり、マンションの規模に関わらず修繕委員会はできれば立ち上げたほうがいいでしょう。
通常の業務もあり、理事会で大規模修繕工事の計画を扱うのは業務量が増えすぎてしまいます。
設立のタイミングとしては、マンションの規模にもよりますが、通常、工事実施時期の1年前が望ましいでしょう。
尚、タワーマンションや200戸を超える大規模マンション、多棟型・複合用途型など特殊要因がある場合は、1.5~2年ほど準備期間を要しますので、早めに修繕員会を設立する必要があります。
とはいえ「適任者がいない」「応募もない」というケースもあるでしょう。
最近では、外部の専門家を修繕委員として起用するという手段もしばしばとられています。
(さくら事務所でも外部修繕委員というサービスでセカンドオピニオン業務を行っています)
とはいえ、外部者のみで運営するのは現実的ではありません。基本は住民で構成し、加えて外部者を活用するというかたちになります。
修繕委員会立ち上げの注意点
修繕委員会の立ち上げにあたっては、総会で承認される事が望ましいでしょう。
過去、あるマンションでは修繕委員会の設立にあたり、総会での承認を得なかったことでトラブルになったケースもあります。
そのマンションでは、理事会が大規模修繕工事の計画準備のため、管理組合内に候補者を募り、3名の応募者により修繕委員会を結成し活動を開始しました。
計画を進めるにあたり、参考書籍の購入やセミナーへの参加費用などを年度予算の予備費から拠出しましたが、「結成について総会で承認されていない修繕委員会への拠出は規約違反である」として管理組合が紛糾するという事態に陥りました。
スムーズに準備を進めるためにも、設立にあたっては総会の承認を得ておくことをお勧めします。
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修繕委員会(専門委員会)が行う主な業務
では、実際に修繕委員会はどのような業務を行うのでしょうか?
長期修繕計画の見直し・検証
大規模修繕工事を行うタイミング、過去に長期修繕計画を見直したタイミングによりますが、必要に応じて見直し・検証をする必要があるでしょう。
大規模修繕工事計画の立案
どのようなかたちで施工会社を選定するのか、コンサルタント会社にサポートを依頼するのか等、大規模修繕工事の進め方を検討します。
建物の劣化状況の調査(劣化診断)
劣化診断とは、大規模修繕工事の実施時期を見極めの参考として、修繕が必要な箇所等、建物の劣化状況を確認する調査です。
当初の予定通りに大規模修繕工事をやるべきという考えもありますが、状況によっては数年先延ばしでも問題ない可能性もあります。
タイルの剥落や漏水リスク、躯体の中性化抑制、足場が必要な箇所の局所的な劣化などのリスクを総合的に判断し、実施時期を検討します。
コンサルタント会社の選定
大規模修繕工事を進めるにあたり、サポートを依頼するコンサルタント会社と、その何をサポートしてもらうのか、その内容を検討します。大規模修繕工事の進め方によって、必要となるサポート業務の種類も異なります。
工事費用の概算予測
長期修繕計画や2回目以降は前回実施時の工事費から予算を推計し検証します。
施工業者の選定についてのアドバイス
施工業者の選定にあたっては、価格や実績など定量的に比べられるものだけではなく、現場代理人や経営者の人柄、熱意などといった定性的なところも総合比較して選定することが、結果として良い工事につながります。
実際、そのような定性的な部分まで比較して選定するためには、経験豊富なコンサルタント等、プロのアドバイスが有益になるでしょう。
住民アンケートの作成と回収、検証
足場が立つまではバルコニーに入れないことから、住んでいる方からの情報や意見が必要になります。
また、スポットでしか現場を確認できないコンサルや工事業者と異なり、居住していることで長期的な視点から気付けることもあり、そのような意見や情報を吸い上げるためにアンケートを行います。
修繕委員会運営にあたっての注意点①
修繕委員会を運営するにあたり意識したいのが、「修繕委員会は理事会の諮問機関である」という点です。
修繕委員会は決定する権限は持っていません。あくまで理事会の諮問機関です。
理事会から大規模修繕工事についてさまざまな諮問を受けるための組織です。
修繕委員会が独断専行でさまざまなことを決めてしまうと、トラブルに発展する可能性があります。
修繕委員会運営にあたっての注意点②
できれば、理事会の一部の方に修繕委員会を兼務していただくのが望ましいでしょう。
大規模修繕工事を進めるにあたって最もあってはならないのが「理事会と修繕委員会の対立」です。
一部理事が修繕委員を兼務することで、理事会との連携がスムーズになるため、両者の対立を防ぐ効果が期待できます。
あるマンションでは、理事会が大規模修繕工事の施工会社選定について修繕委員会に意見を求めたところ、修繕委員長が身内の施工会社(あとから身内の施工会社であったことが判明)を推薦しました。
ですが、結局その施工会社が選定されなかったことことから、修繕委員長が選定された施工会社の計画に難癖をつけ、選定作業に支障が生じてしまいました。
結果として、理事会と修繕委員会に亀裂が生じ、委員長を除く修繕委員が全員辞任するなど、マンション内の人間関係のトラブルに発展する事態に陥りました。
修繕委員会運営にあたっての注意点③
大規模修繕工事を進めるにあたり、修繕委員会がどのような準備を進めているのか、マンション内でできるだけ情報を共有しましょう。
理事・修繕委員等役割を担っていない一般の居住者に対して情報を共有し、「自由に参加もできるし意見も言える」ということを認知しておくといいでしょう。
過去には、マンション内での周知のために「大規模修繕工事だより」というお知らせを出しているという組合もありました。
広く情報を共有しておくこと、避けられるトラブルもあります。
あるマンションでは施工会社選定にあたり、大幅な追加工事費用が発生するとともに、今後、大幅な修繕積立金の見直しが必要になりましたが、施工を請け負った管理会社のアドバイスもあり、その年の総会議案書では見直しについて説明していませんでした。
翌年の総会で修繕積立金見直しについて議案を上程しましたが、住民から「見直しについては聞いていない」という意見が続出し、結果として見直しは否決されてしまいました。
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努力を無駄にせず、大規模修繕工事を成功させましょう
冒頭であげたように、大規模修繕工事はマンションにとって非常に大きなイベントであり、修繕委員会の役割も重要です。
自分たちの資産であるマンションを長く安心して暮らせる状態を維持するためにも、できるだけいいかたちで終わらせたいと、皆さんプライベートな時間を割いて尽力されます。
結果的にマンション内に大きな対立を生むような残念な結果にならないよう、これらの注意点を確認しつつ進められるといいでしょう。
また、大規模修繕工事に限らずマンションの管理組合運営全体にも通じる話ですが、管理会社や専門家に任せきりでは限界があります。
そのためには「任せきりにしてはいけない」と気が付いたあなた自身がぜひ(大規模修繕工事に限らずとも)マンションのために力を貸していただきたいと思います。
そんな方の積極的な参加が、何よりも今後の管理組合運営を順風に進めていくためのマンションの礎になります。
さくら事務所では、過去の実例や大規模修繕工事を進める上での注意点などの情報発信とともに、大規模修繕を円滑に進めるためのサポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。
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