台風・大雨に備えるマンション水害対策、まず確認すべきはそのリスク

九州・本州を襲う豪雨災害。

今後も土砂災害、浸水被害が懸念され、引き続き警戒が呼びかけられています。

昨年も5月以降10月まで集中豪雨や台風など、多くの水害に見舞われた年でした。

気候変動の影響もあり、こういった大雨は今後毎年のように繰り返される可能性もあります。

ここでは、これから長く続く大雨警戒の季節、マンション住まいなら知っておきたい水害リスクとその確認方法についてマンション管理士が解説します。

タワマンだけじゃない。マンションは想像以上に風水害に弱い

昨年の台風被害では、タワーマンションの浸水被害を伝える多くの報道もあり、「タワーマンションだけが水害に弱い」という誤解が一部で広まってしまったようです。

ですが話題にこそなりませんが、タワーマンション以外のマンションも規模関係なく大小さまざまなマンションが昨年は浸水・強風により被害を受けています。

昨年の台風を受け「自分たちのマンションはタワーマンションではないから大丈夫」とお思いの管理組合の方も、ぜひ対策を考えていただきたいと思います。

素朴な疑問、水害リスクが高いエリアでも地下駐車場が設置されているのはなぜ?

もともと、マンションは災害に強いというイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるでしょう。

実際に地震に対しては非常に強く、更に最近ではマンション管理組合としてしっかりとした対策を取っているところも非常に多くなってきています。

ですが、地震に比べ(これはマンションに限った話ではないかもしれませんが)、大雨や強風へは意識が向いていませんでした。

過去、マンションで水害にあい地下駐車場に止めてあった車が水没して廃車になってしまったとケースは度々起きています。

「そもそもこういった水害リスクのあるエリアにおいては、万全の対策がない限り、地下駐車場の設置を許可することが問題だろう」といった声も寄せられます。

ですが、そもそも地震への対策は、建築する上で建物の構造耐力についてなど建築基準法やそのほかの規則でしっかりと制限が設けられていますが、水害への対策は制限らしい制限は実際に行われていません。

これは、過去数十年間にわたって日本が行ってきた治水対策が功を奏した結果、首都圏において河川の氾濫などが激減していたからです。

また、水害が地震に比べ立地による個別性が高く、またそれに応じて被害のレベルも多様であることも関係しているでしょう。

水害からマンションや自分たちの命、生活を守るためには、まずお住まいのマンション個別の「立地によるリスク」をを知ることが大切になります。

立地のリスクを知るための2つのハザードマップ

水害リスクを知る上で確認しておきたいのが、2つのハザードマップです。

洪水ハザードマップ(浸水想定区域図)

西日本豪雨で注目を集めたのが、洪水ハザードマップ(浸水想定区域図)です。

多くの地域が冠水した岡山県倉敷市真備町では、ハザードマップで危険を示していた場所と浸水被害エリアはほぼ一致していていたことで、その重要性が再認識されました。

洪水ハザードマップについては、多くの行政ですでに公開・着手されていますので、ご覧になったことがあるという方もいらっしゃるでしょう。

ここでは、あるエリアの洪水ハザードマップを参考にその見方を解説します。

想定最大規模として2日間で792ミリの降雨という条件のもとで、想定される浸水の高さにより「50センチ未満」「50センチ以上3メートル未満」といった風にエリアが分けられています。

「50センチ未満」の浸水が想定されている場合、「50センチくらいの浸水であれば大丈夫だろう」と考えになるかもしれません。

例えば、地下駐車場のあるような場合は、安心できません。

水は低いところに向かって流れていきますので、50センチの浸水が起きているような場合、地下には相当な量の水が流入します。

地下スロープでおりていくような入口であれば、スロープの入り口を浸水想定以上の高さの止水板で対策しない限り、地下は完全に水没してしまうでしょう。

内水ハザードマップ

もう1つ水害リスクを知る上で重要なのが、内水ハザードマップ。

こちらは残念ながら、洪水ハザードマップほど、まだ一般的に普及はしていません。

内水ハザードとは、大雨が降ったときに排水設備で下水が処理しきれなくなった際に水があふれる「内水氾濫」の際の浸水被害を指します。

こちらもあるエリアの内水ハザードマップを一例に見てみましょう。

洪水ハザードマップと同様に、浸水エリアが「2センチ未満」「2~20センチ程度」「20~50センチ程度」などと色づけてされて分けられており、ご自身のお住まいのエリアの想定被害がはっきりとわかるかと思います。

ですが、気になるのが想定されている条件です。

このエリアのハザードマップの想定条件は、1時間降水量を76.5ミリと想定しています。これは、平成16年の実績降水から30年に1度起こる可能性がある、という想定でした。

ですが昨今、この降水量は「30年に1度」と呼ばれるような珍しいものではありません。

1時間で76.5ミリとされていますが、これを10分間で計算すると、13ミリ程度。最近では、ゲリラ豪雨などで10分間に30ミリ、40ミリという雨が降ることもあります。

リスクを知った上でどうすればいいのか?

エリアの水害リスクを確認するだけでは、残念ながら対策にはなりません。

リスクに応じて、洪水・内水が起きた場合、自分たちのマンションはどういった対策を取ればいいのか?また、その対策をする備えが十分にされているのか?をしっかり確認しておきましょう。

もし、十分な備えがそろっていたとしても、水害の際にそれは使える状態にあるのでしょうか?

「止水板は備えてあるが置いてある場所がわからない」「置いてある場所に鍵がかかっていてすぐに出せない状況にある」「使える状態にはなっているがそもそも使い方がわからない」といったことも考えられます。

地震に対する訓練は大規模なマンションでは多く実施されていると思いますが、水害に関しての訓練はまだあまりされていないでしょう。

「いざというときに、どう動けば被害を抑えることができるのか?」水害を想定した訓練もお勧めしています。

できることから水害対策を

今年は、新型コロナ感染拡大の影響もあり、理事会や総会を開くことができなかったという組合の声も寄せられます。

今年の梅雨前に取り組もうとしていたが話し合いを進められなかった、という組合もあるかもしれません。

感染防止には十分注意し理事会や総会は工夫して開催された上で、まずできる手近な対策から考えてみてはいかがでしょうか?

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