マンション機械式駐車場の未来のための「三位一体」の改革

昨今のカーユーザーの減少に、マンションの駐車場の今後について危機感をお持ちのマンション管理組合の方が急増しています。

「今後ますます駐車場の利用者が減り、駐車場使用料の収入も減るのではないか?」

「築年数が経つにつれ、修繕費用を考えると一部撤去など台数の見直しも必要になるのではないか?」

また、人手不足の影響もあり管理会社から管理委託費の値上げを提案されるケースも急増しています。

皆さんまず「金額を落とせるところはないか?」「無駄なものはないか?」管理委託費の確認をされますが、同時に収入源である駐車場使用料を今後どこまで見込んでいていいのか?と疑問を感じる、という方も。

ここでは、さくら事務所のマンション管理士が機械式駐車場のお金の問題と、その解決への道筋について解説します。

マンション管理組合の3つの収入

機械式駐車場について

付置義務条例が各自治体によって定められており、駐車場を必要とする購入層かどうか、という判断ではなく、条例を満たすために必要な駐車台数を確保するため、機械式駐車場が設置されているケースが多いです。

本来、駐車場を維持するのにいくらかかり、それをどれだけの使用料で賄えているのか?、駐車場単体でシンプルに考えたいものですが、一般的にマンションの駐車場のお金は、駐車場使用料、管理費、修繕積立金の3つが複雑に絡み合っており、駐車場の収入と支出が明確になっていないケースが多々あります。

マンション管理組合に入ってくるお金といえば、
①管理費
②修繕積立金
③駐車場使用料
の3つが大きな柱になるでしょう。

管理費は、管理会社に管理業務を委託するための管理委託費用や、共用部の電気代、共用部のために加入している保険料などで、主にランニングコストに充てる費用です。

修繕積立金は、建物の長期使用を可能にすべく大規模修繕工事などの計画的な修繕に使うお金です。

ほとんどの管理組合では、管理費は一般会計、修繕積立金は特別会計、とごっちゃにならないように別々の会計に分けられています。

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駐車場使用料は一般会計?特別会計?

多くのマンションの場合、駐車場使用料は管理費収入に入れられています。

管理費と修繕積立金はいずれも、購入後の月々の負担を少しでも安く見せて購入のハードルを下げるため、販売時は安く設定されているのですが、その金額では管理費(一般会計)が成り立たないので、駐車場使用料を見込んでいるのです。

逆に言えば、駐車場収入を見込まないと管理費会計は赤字になる計算、ということです。

尚、修繕積立金に関しては、お引き渡し後はマンション管理組合の問題で、分譲会社は足りなくなればお引き渡し後に金額を見直すればよいという考え方で、将来的な不足が予測されても、分譲会社があらかじめ対策する必要はないのです。

ですが、引き渡し後に管理委託費用を支払う先の管理会社は分譲会社の系列であることも多く、管理費は不足しないように配慮されています。

駐車場収入は管理費会計に、でも修繕費用は修繕積立金から

駐車場使用料は一般会計の収入になりますが、駐車場の維持費用はどこから出るのでしょうか?

一般的に、機械式駐車場のメンテナンス費用は一般会計から支出されますが、修繕費用は修繕積立金から支出されます。

機械式駐車場の修繕や入替えにかかるコスト、維持管理のためのメンテナンスにかかるコストなどと駐車場使用料の収支が単純に比較できないため、駐車場単体の実際の収支が見えないのです。

例えば、駐車場の付置率90%ですべて使用されている場合、駐車場を使用しない方がマンション全体の10%になります。

その10%の方々は、駐車場使用料は使用していないのでもちろん払いませんが、管理費はその駐車場収入を見込んだ金額から算出された額(つまり駐車場使用料のおかげで安い金額)を払っています。

駐車場のランニングコスト(点検)はそれほど大きくないので、駐車場のメンテナンス費用を出しても使用料が入れば、管理費として徴収される金額は下がります。

つまり、自分は払っていないが駐車場を使用している多くの方が払ってくれている駐車場使用料があるから、管理費の負担が低くなっている、ということです。

ここまでは、10%の駐車場を使用していない方々は、(駐車場にはかかわっていないのに、そのおかげで管理費の負担は低くなっているという意味で)少し得しているように見えるかもしれません。

ですが、次に問題になるのは、特別会計から出される機械式駐車場の修繕費、つまり修繕積立金です。

駐車場を使用していない10%の方々は、管理費の方は安く済んでいても、修繕積立金の方は、使用していない機械式駐車場の修繕費用までその一部を負担することになるのです。

ですが、この不公平に気がつくのは、後々のことです。

駐車場使用料は適切なのか?

そもそも、駐車場使用料の金額設定は妥当なのでしょうか?

例えば、駐車場の周辺相場が20,000円のエリアで、マンションの駐車場使用料が5,000円だったとします。

駐車場のランニングコスト(メンテナンス費用)自体は、さほど大きな金額ではありませんので、これくらいの金額でもいいと思うかもしれません。

ですが、修繕も含めた維持費を考えると、全戸駐車場付き、昇降横行式として、少なくとも1台月1万円くらいかかる計算です。

本当は周辺相場から外部に20,000円で貸せるところ、メンテナンス費用しか見ていないので、内部に5,000円で貸してる、という状態なのです。

本来、外部に相場の20,000円で貸し出せば修繕費用まで賄えますが、マンション内でメンテナンス費用しか考えていない金額5,000円で貸している場合、毎月5,000円もマイナスになっていくのです。

問題が明るみに出るのは、駐車場の空きが目立つ頃

例に挙げたような駐車場付置率が高いマンションにおいては、駐車場を使用しない人の方が少数派になります。

自分たちが恩恵を受けているわけでもない機械式駐車場の修繕費を修繕積立金から出すのはおかしい、私たちは損している!そんな風に思っても、損している方がマジョリティにならない限り、駐車場使用料の見直しは簡単ではありません。

また、駐車場の稼働率が高く、すべて埋まっている間は問題ない場合でも、年月とともに駐車場に空きが出てきたらどうなるでしょう?

今度は、空いているところのメンテナンス・修繕の費用もみんなで担うことになります。

必要なのは駐車場会計の可視化

機械式駐車場の修繕コストと日々のメンテナンスコストと、駐車場収入を全部計算しないと、どこをどう負担するべきなのか?は考えるのは難しいでしょう。

まず、駐車場に関わるお金をすべて把握する「見える化する」必要があります。

そのためには、駐車場会計を分離する必要があります。

駐車場会計を分離してはじめて、駐車場の収支の見える化が実現します。長期修繕計画から、機械式駐車場を除き、別途、駐車場専用の長期修繕計画を作成する、というのもいいでしょう。駐車場自体が「金食い虫」になることも考慮する必要もあります。

「見える化」ができたら、次は「誰がどれくらい負担するか?」です。

以下のこともあわせ、これからのマンションの駐車場問題について考えてみましょう。

  • 今の駐車場使用料は適切なのか?
  • 機械式駐車場と平置きで駐車場使用料に差をつけるのはもちろん、機械式駐車場でハイルーフが入るか入らないかでも金額に差をつけるべきか?
  • 近隣相場を考えたら、外部貸ししたらいくらで貸せるのか?
  • 台数は今のマンションにあっているのか?じゃあ、これからどうなのか?
  • 必要なのは駐車場会計の可視化
  • 機械式駐車場を埋め戻して平置き駐車場に変更することは出来ないのか?

駐車場使用料、管理費、修繕積立金の三位一体の見直しを


さて、駐車場使用料を見込んでいた一般会計はどうなるでしょうか?

駐車場会計を分離した場合、駐車場使用料を見込んでいた一般会計は赤字になってしまいますので、管理組合にとっての「収入=管理費」を見直す必要があります。

駐車場会計を解決することは、駐車場使用料、管理費、修繕積立金の三位一体の見直しにも関係しています。

「機械式駐車場の駐車場使用料は適切か?」
「管理費は、駐車場収入を見込まなければ赤字か?」
「修繕積立金は適切に見直されている?」

これらすべてが関わってきます。

駐車場会計の問題を可視化、解決への合意形成は時間を要するお話です。

また、取り組みとして、一度失敗したらまたチャレンジ、とはなかなかなりにくいものでもあります。

マンション内の駐車場利用者と非利用者で利害関係もあるでしょう。全員が利害関係者です。

機械式駐車場の使用料を見直す際には、合意形成に向けての第三者のコンサルティングを入れることも効果的です。

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