マンションの理事になったら何からすればいいの? 

分譲マンションの管理は、区分所有者全員からなる管理組合主体で行われます。

ですが、その中でも重要な役割を果たすのが、管理組合の代表者で構成される「理事会」です。

マンションの管理力は、理事会の活動が活発かどうか?によって大きく左右されます。

とはいえ、「輪番制で回ってきたけど、何をしたらいいかわからない」「何事もなく自分の番はつつがなく終えたい・・・」なんてお思いの方もいらっしゃるでしょう。

そこでここでは、マンションの「理事」の役割と理事になったらやっておきたいことについて、さくら事務所のマンション管理士が解説します。

マンション管理組合の役割は?

そもそも、マンションの管理組合は具体的にどんなことをするのでしょうか?

国土交通省から発行されている「マンション標準管理規約」によれば、マンション管理組合が通常行う業務として、敷地や共有部分の保全・保守清掃、長期修繕計画の作成や変更、図面の保管、修繕の履歴の管理、火災保険・地震保険などに関する業務、防火や防災に関わることが主に挙げられています。

随分と幅広く負担も大きいように思いますが、これらの大半は通常、管理委託契約を結んだ管理会社に委託されていますので、実際に自分たちが行うわけではありません。

マンションの理事の役割は?何をするの?

マンションの区分所有者で構成される管理組合ですが、その組合員の中から選ばれるのが理事。

その理事によって「理事会」が設立されるのです。

次に、理事会の主な業務をご説明します。

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①総会決定事項の執行

理事会は総会で決定した計画に基づいて、事業を執行していきます。

原則としてマンション内の意思決定は総会で行われますが、細かなことまでいちいち総会を開いて全員で決議するのは手間が掛かります。

代表者を集め、総会で決定した事項に基づいて進めていくために必要な事柄を代表者からなる理事会で決定し、執行していくのです。

②管理会社の業務のチェック

先程、管理業務の多くは管理会社に委託するとしましたが、この管理会社の業務をチェックすることも重要な仕事の1つ。

管理会社から提出される月次報告の検討を行い、管理費・修繕積立金の納入状況の確認や、清掃や設備の点検などの管理会社の業務がきちんと行われているかの確認を行ったり、一定の範囲内で日常的な維持管理を行います。

委託しているからといって、管理会社にまるっきりお任せしていい、というものではないのです。

あくまで、本来は自分たちが気持ちよく暮らすために自分たちがやるべき業務であり管理会社には委託しているに過ぎない、という認識をしっかりもち、管理会社によってきちんと業務が行われているかチェックすることが重要です。

③総会の準備

年に1回以上、マンション管理組合で行われる管理組合総会。

新会計年度が開始されてから2か月以内に開催する規定になっていることが一般的です。

これからのマンションの管理をどうするか?やるべきことはなんなのか?どこにお願いするか?を決める重要な意思決定の場面です。

大規模修繕工事についてや、前年度会計の更新の承認、理事会の役員の(半数)改選も総会で決定されますが、その準備を行うのも理事会の重要な仕事です。

「決議案の確認」「予算案の検討」「次期役員選出の検討」を管理会社と打合せしておきましょう。

尚、理事は1、2か月ごとにこれらの業務を進めるために理事会を開催しますが、定例の理事会以外にも、共用部分における備品の破損、住民からの苦情など緊急性を要する事案が起こった場合は、管理会社からの要請で理事会が開催されることもあります。

(管理会社からの提案に対しても、住民にとって本当に必要な提案なのか、まずは鵜呑みにせず、十分に検討する姿勢も重要です。)

理事になったら意識したい3つのコト

では、もし自分がマンションの理事になったら、何を意識してどう臨めばいいのでしょうか?

①自分のマンションをよく知ろう

まずは、マンションをよく知ることから始めましょう。

管理規約をしっかり読むことはもちろん、安全な範囲において共用部を一通りチェックしてみるのもいいでしょう。

鍵がないと立ち入れない場所もありますので、管理会社にも声かけておくといいでしょう。

管理会社の点検報告書を見ながらその現場を実際に確認したり、もし協力してくれるようなら管理人さんと一緒にまわるのもいいでしょう。

危険な場所なのに立ち入りができそうな場所や、清掃が行き届いていない場所など、改良すべきポイントがあるかもしれません。

②管理会社と上手に付き合おう

管理会社との上手な付き合い方も知っておくといいでしょう。

管理会社の満足度はその担当者の資質に大きく左右されますが、その業務の特性上、どうしても属人的になりがちです。

担当者への不満から「管理会社を変更しよう」という声も上がるかもしれません。

ここで重要なのが、担当者の資質と管理会社については分けて考えておくこと。

もし担当者の対応に満足できない場合も「管理会社」を変える方向ではなく、管理会社に「この担当者の対応についてどう考えるのか?」相談してみましょう。

あらかじめ、担当者の上席とも面識を持っておくとよりスムーズです。

管理組合が最大のパフォーマンスを出すためには、管理会社の協力は必要不可欠。

コストやクオリティを追求しすぎると、長期的にみて管理組合運営に支障をきたされているケースが少なくありません。

過度な要求をつづけた結果、「委託業務契約の更新を管理会社に断られる」というケースも相次いでいます。

管理組合運営が素晴らしい管理組合ほど、管理会社を敵視しすぎず、管理会社との距離感をうまくとって上手にお付き合いしています。

③理事会の活動をみんなに知ってもらう

理事会の活動を、マンション居住者(管理組合員)の皆さんに知ってもらうことも重要です。

マンションで何が起きているのか?理事会で一体何が話し合われているのか?日ごろからきちんと伝えておく必要があるのです。

マンションでは年に1度以上、マンション管理組合総会を開き、事前に通知された議案について管理組合員で決議を行うことになっています。(それ以外にももしなにかあれば臨時で総会を開きます。)

日頃からどんなことを話し合っているか共有しておかないと、いざ緊急で総会を開くという事態になっても、皆さんすぐに判断できなくなってしまうからです。

議事録を配布する方法もありますが、滞納者の個人名など明記するのもはばかられるものもある場合、ダイジェストを広報誌のようなかたちで配布してもいいでしょう。

また、賃貸に出していてご自身が居住していない区分所有者もいますので、電子掲示板にアップロードして共有する方法も有効です。

できればベター!コミュニティ醸成のためのイベント

マンションの防災訓練

議事録や広報誌などの書面だけでは、伝わらないこともあります。

年に1度の総会でしか顔を合わせないようだと、おのずと総会出席者も減っていき、発言も少なくなってしまいます。活発な論議も難しくなるでしょう。

お花見やクリスマスなど、季節の行事を利用して、皆さんが参加しやすいイベント開催して、マンション内でコミュニケーションを図れる場を提供するといいでしょう。

また、昨今相次ぐ災害に、防災への関心も高まっています。

防災はマンションに住むすべての方にかかわることなので、防災訓練などはマンション全体のことを自分ごととしてとらえてもらういい機会になるでしょう。

自分たちのマンションに関心を持つきっかけにもなります。

自然なかたちで管理組合の活動に参加してもらうことで、自分のマンションに対する意識も高まってきます。

理事だけなく、多くの方がマンション管理に対して意識を持てば、いずれ理事が変わっても組合の業務をスムーズに引き継ぐことができます。

いっとき活発な理事会活動が行われていても、理事の交代とともに空気が変わってしまうこともあります。

良好なマンション管理には、長い目で見たその継続性も重要なポイントです。

マンション理事はやりがいある仕事

「マンションの理事の経験は初めて」という方がほとんどでしょう。

マンションの理事は、苦労もありますが大変やりがいのある仕事でもあります。

もし理事になられたら、今回挙げたポイントを意識して前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか?

管理組合運営におけるお困りごとや、他のマンションはどうしているんだろう?というお悩みについてはさくら事務所のマンション管理士にご相談ください。

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