新型コロナ感染拡大で見直し?マンション管理規約見直しのフローとその注意点

新型コロナウィルスの国内感染を受け、4月16日には緊急事態宣言が全国にまで拡大されました。

この事態を受け、多くのマンション管理組合がさまざまな場面でその判断に頭を悩ませています。

「理事会や総会は集まって行わなければいけないのか?」「今の管理規約で非常時の対応がどこまで許容されるものなのか? 」といったお悩みが多くのマンションで噴出、管理規約を見直すマンション管理組合もあるでしょう。

そこで、今回はさくら事務所のマンション管理士が管理規約・細則の見直しについて解説します。

マンション管理規約の変更、なぜ必要?

マンションの管理規約とは、分譲マンション(区分所有建物)において、定められたルールのことです。

マンション管理組合運営の基礎となる重要なルールですが、マンションを取り巻く状況や法令、住民の二ーズなどは時代によって変わります。

例えば近年話題になった民泊。

民泊で見知らぬ外国人旅行客が多数出入りすることで、マンションの居住環境が悪化すれば、資産価値の低下につながりかねないと考えるマンション管理組合もあるでしょう。

いずれにしても、民泊を認めるか否か、このとき多くのマンションで管理規約に盛り込まれました。

また、築年数を経たマンションの場合、専有部分のリフォームに関する規定など、当初は想定されていなかったがルールが必要になるというケースもあります。

新たに発生した問題に対処できなくなったり、管理規約がマンション管理の実情とあわなくなったりするなどの理由で、改訂を検討が必要になることもあります。

マンション管理規約変更のフローと注意点

では実際に、マンション管理規約を変更するにはどう進めればいいのでしょうか?

標準管理規約に準拠してアップデートするなどのような軽微な変更を除き、管理規約を大きく変更する場合のフロー一例とその注意点を上げていきます。

簡略版フロー図はこちらからもダウンロードできます。

委員会の立ち上げ

管理規約変更の専門委員会を立ち上げます。

理事会中心でつくった変更案を総会で決議に持ち込む方法もあるが、大幅な変更を検討する場合には、事前に住民の理解を得た方が合意を得やすいでしょう。

マンションの規模にもよりますが、3~5人程度の委員を選出するケースが多いようです。

専門委員会立ち上げのポイント

必要に応じて、外部専門家のアドバイスを受けることも大切です。

原始規約から大幅な変更がなされていない管理組合では、管理組合としての将来のビジョンをマンション内で共有できていないケースがほとんどです。

大きな規約変更に向け合意形成をスムーズに進めていくためには、「なぜ」「なんのために」検討・変更するのかという、その軸がポイントになります。

アンケートも闇雲に実施するのではなく、意見収集する趣旨や目的を明確する必要があるでしょう。

そのため、規約変更委員会と理事会だけでなく、当事者だけで検討が難しい事項については、マンション管理士や弁護士、司法書士など第三者の専門家に相談することにより変更案づくりを進めやすくなるケースがあります。

現規約の確認と変更案の作成

現規約の変更箇所をリストアップしましょう。

変更案の作成に際しては、国土交通省の標準管理規約なども参考にしましょう。

管理規約変更案作成のポイント

過去、冊子を改めるような大幅な変更をせず、軽微な規約変更を繰り返している場合には、変更履歴がしっかりと把握されておらず、現行の管理規約の状態が不明瞭になっている管理組合が見受けられます。

変更履歴は必ず残しておきましょう。

残念ながら、どれだけ周知を徹底しても、一定数「聞いてない」という方がでる可能性は否めません。

他方で、建設的にしっかりと意見表明してくださる方々とのコミュニケーションは大切です。

検討スケジュールや検討のプロセスを随時発信し、どのタイミングで素案が完成し、どの時点まで住民意見が反映可能なのかなどを明確にして、後戻りしないで済むようなスケジューリングをしましょう。

説明会の開催

変更案がまとまったら、住民への説明会を開催しましょう。

開催しない場合でも、変更案の内容を書類にして事前に配布したり、掲示板に貼りだしたりする等、総会に向けて十分に広めていくことが重要です。

説明会開催のポイント

管理規約という性格上、どうしても文字もボリュームも多い説明資料になりがちです。

変更趣旨の説明などを中心に、できるだけ簡潔な記載を心掛け、最新の標準管理規約に準拠する場合には、できれば国土交通省から出されている報道発表資料なども活用しながら、図解なども差し入れられるとより分かりやすく伝えることができるでしょう。

理事会での審議

住民への説明を行った場合は、住民の意見を参考に理事会と規約変更委員会で最終的な審議を行い、その後、規約変更案を作成します。

理事会での審議のポイント

理事会や諮問機関である専門委員会がある以上、住民意見はあくまで参考意見であって、住民意見のすべてを取り入れることは現実的ではありません。

そのため、合意形成をスムーズに進めていくためには、やはり「なぜ」「なんのために」検討・変更するのかという、その軸がポイントになります。

理事会や専門委員会として、目指すところや管理組合の将来像(ビジョン)を共有した上で、意見収集する趣旨や目的を明確にして、個々の住民意見に対応することが大切です。

総会での決議

総会に上程し審議します。

尚、総会決議には、出席議決権の過半数が必要な「普通決議」や組合員総数及び議決権総数の4分の3以上(原則)が必要な「特別決議」などがあります。

総会での決議のポイント

特に説明会などを経ていない場合には、趣旨説明が重要です。

現在、起こっている新型コロナウイルス感染症のような事態など、管理規約に今後起こりうるすべての事態を想定して記載することは現実的はでありません。

そのため、将来、明記されていない事態が起こった際、管理規約をどのように解釈するのかに関しては、総会決議時の変更趣旨に頼ざるを得ない部分がでてくることが想定されます。

そのような時に備え、趣旨説明も資料に併記し、総会で説明を行った上で決議を得ておくことは、規約に明記されていない解釈が必要になった際、その時の理事会にとって大きな手がかりとなります。

変更内容を区分所有者に通知

変更決議されたら、規約の原本は保管し、大幅な変更の場合には写しを冊子にして住民に配布しましょう。

区分所有者への通知のポイント

通知する段階で問題点が発見されることもあります。

規約変更だけに限らず総会決議全般にいえることですが、本文や変更内容はしっかりとチェックしていても「効力の発生日」などの論点や附則関係が見落とされるケースがあります。

いつの時点から変更した規約個所が有効になるのか、必要であれば経過措置、場合によっては遡及適用するのかなどは特に見落としがちであることから、専門委員だけではなく、理事会役員や管理会社の担当者とのダブル・トリプルチェックがある方が望ましいでしょう。

新型コロナ感染症対策を考える組合さまへ

一般的にマンションの管理規約は国土交通省の「マンション標準管理規約」をもとに作成されています。

そこには災害等の緊急事態に対する規定もありますが、具体的には地震や津波、水災などからの被災を想定しており、今回の新型コロナのような感染症についてはまさに想定外とも言えます。

その対応に多くのマンション管理組合の理事の方が、知恵を絞って対応されていると思います。

ルール通りに進めなければいけないのか?規約にないことはどう判断すればいいのか?とお悩みの方もいるでしょう。

正式な手順を踏むことがベストですが、新型コロナの感染防止対策は命を守るための対策もあります。

有事の際、ルールに拘束されたばかりに悲劇を生んでしまったという例は残念ながら過去にも発生しています。

可能と思われる範囲で柔軟に対応する必要もあるかもしれません。

ルール通りに動かなければいけないと考え、決断を遅らせてしまうことが賢明とは言えないケースもあるのです。

個別のケースに関しては、さくら事務所のマンション管理士にお気軽にご相談ください。

初回無料、オンラインでの相談も受け付けています。

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