物言わぬ多数派、サイレントマジョリティから生まれるマンションのモンスターたち

マンショントラブルに関する取材のご依頼を多くいただきます。

かつて、マンション購入する人の中には「隣近所との付き合いがなくて気軽」という方もいらっしゃいましたが、実際そんなことはありません。

分譲マンションは住まいという一生ものの資産を他人と共有するもの。

良好なマンションを維持し、快適なマンションライフを過ごすためには、近所付き合いどころか、ともに所有するマンションを長く健全なかたちで維持するために、運命共同体としてさまざまな問題に一致団結していく必要があります。

とはいえ、さまざまな価値観の他人が住むマンション、さまざまな問題も生まれます。

日常生活のトラブルも頭が痛いものですが、ここでは特にマンションの管理組合運営に影響のある、マンション理事会でのモンスターについて解説します。

マンションの管理組合、よくあるのはこんな割合

物言わぬ多数派、サイレントマジョリティ

「お金さえ払えば、管理会社がやってくれるんでしょ」というような方は以前より減っていますが、それでもまだマンションの管理に無関心な方は多くいらっしゃいます。

さくら事務所がコンサルティングを行ったこれまでのマンションでも、管理組合の方々で圧倒的に多いのは、物言わぬ多数派「サイレントマジョリティ」です。

彼らは常識的で良識もありきちんとした方が多いのですが、マンションの管理に積極的に関わろうという気持ちがないのです。

また、総会には出席せずとも、委任状はきっちりだします。もちろん、管理費も修繕積立金も滞納などはなくきちんと払います。

最低限の義務はきっちり果たしますが、積極的に意見を言うことがないのです。

さくら事務所がこれまで関わってきた管理組合でも、サイレントマジョリティの占める割合は平均的に8~9割といったところでしょうか。

ごく少数、みんなを引っ張るイノベーター(改革派)

マンション管理組合の中には、管理組合全体を引っ張っていく力のある改革派「イノベーター」もいます。

彼らが、理事や修繕委員などを務めている管理組合では、サイレントマジョリティをうまく引っ張っていき、活発な管理組合活動がされ、組合運営も非常にうまくいっています。

ですが残念ながら、どこのマンションにでも「イノベーター」がいらっしゃるというわけではありません。

モンスターはどう生まれる?ありがちモンスター理事3例

モンスタークレーマーが生まれる背景には、圧倒的多数を占めるサイレントマジョリティの存在があります。

モンスターは突然現れることはありません。

最初は、小さな影響力しか持たないのです。

それでも、サイレントマジョリティがモンスター予備軍の意見に黙っていることで、その存在を受け入れるかたちになってしまい、徐々にモンスター化してしまうのです。

モンスター理事にもいくつかのパターンがあります。

①管理会社のミスは許さない!高圧系モンスター

清掃、点検、日常修繕などさまざまな管理業務を委託している管理会社に対して、必要以上に高圧的な態度に出るタイプです。

管理会社の失態を理由に、委託費の減額・返金を求める、上層部に長々とクレーム文書を送る、などなど。

このモンスター、実は優秀なビジネスマンだったりすることもあります。

自身の仕事のレベルと同じものを周りにも要求し、会社と同じレベルのシステムを要求してしまうので、管理会社の大小の失態が許せず、こういった行動に出てしまうのです。

本人の主張がまっとうなものであり、その指摘内容が正当なものであっても、過度にペナルティを要求したり、管理会社の担当を必要以上に叱責してしまっては、管理会社も行き場を失ってしまいます。

昨今の人手不足から、管理会社も、必要以上に手間のかかるマンションを敬遠する傾向があります。

最悪、こういった事態を背景として委託契約の更新を断られてしまうケースもあります。

②値上げなんて言語道断!!コストダウン系モンスター

本来、修繕積立金は管理組合や理事会で見直しを考えるのがベストですが、管理会社からの提案をきっかけに修繕積立金の見直し(値上げ)を検討する、というマンションがまだまだ多数派です。

ですが、ここで現れるモンスターがいます。

さまざまな屁理屈ともとれる理由をつけて、管理会社からの修繕積立金の見直しの提案を拒否するのです。

他のモンスターでもその傾向は見られますが、この種のモンスターは特に「自分が頑張っているおかげで、修繕積立金が増額されずに済んでいる」「自分はマンションの役に立っている」と、自身の行動をある種の功績のように思っているのです。

とはいえ、かねてからお伝えしているように、修繕積立金の不足はマンションの将来に大きなリスクをもたらします。

マンションを長く安心して住める建物の状況のまま維持するには、長い目で見て必要な資金に大きな違いはありません。

修繕積立金の見直しを先延ばしにすることで、将来的に自分たちの首を締めていることになるのです。

中には、管理会社からの積立金増額の提案に対して「自分たちが儲けようとしているんだろう」というようなことを言うような理事もいるようですが、修繕積立金はあくまで自分たちの貯金ですので、これは少し的外れなことは間違いありません。

理事会で提案を拒否してしまった場合、理事以外のメンバーは管理会社から「将来の修繕積立金不足の可能性や、そのための見直し」の提案があったことすら知らされません。

実際に、「なぜ早々に見直しをしなかったのか」と悔やむことになっている管理組合もあるのです。

③大規模修繕工事で突然現れる、修繕工事系モンスター

大規模修繕工事の施工会社選定から発注、契約などの一切を仕切るモンスターです。

通常の管理組合運営にはさほど興味がありません。大規模修繕工事の時期に突然、現れます。

大規模修繕工事の時期になると、理事や修繕委員に立候補し、コンサルタント会社の決定から施工会社の選定・契約まで強引に押し進めていくのです。

このケースで一番問題になるのは2つ。

まずは不透明な工事発注の疑惑です。

モンスター理事と施工会社で癒着があったのでは?仕様通りの工事をちゃんとしたのか?といった疑問が後からマンション内で起こり紛糾する例が少なくありません。

発注先の施工会社が知人や身内の経営する会社だったりする場合も同様です。

また、独断と偏見により強行された大規模修繕工事がオーバースペックだった場合、問題になるのが修繕積立金の不足

今ある修繕積立金を使い切ってしまうような、修繕計画だった場合、次回の大規模修繕工事までに積立金が不足するのは明らかです。

早急に大幅な修繕積立金の見直しが必要になるでしょう。

このモンスター、しっかりとみんなリードしてくれるイノベータータイプと大きく異なるのは、独断・偏見で工事に関わる全てを押し切ってしまうところです。

正論が通じないケースもあり、自分の思い通りに進めるために管理会社や周囲の理事を威嚇することもあります。

モンスターを生むのは住民の「無関心」

先にもお伝えしたように、このようなモンスター理事は、住民の無関心が知らない間に育ててしまうものです。

モンスターを生まないためには、少しでも多くの人がマンション管理に関心を持ち、積極的に発言していけるようになることです。

まず、管理組合総会には可能な限り出席すること。

どうしても出席できない場合は、委任状ではなく、議決権行使書を使用し、きちんと自身の意見を表明する。

委任された人が、参加した総会でモンスターに気圧され、その場の雰囲気に圧倒され、取り込まれてしまうこともあります。

やむを得ずどうしても出席できない場合は、議決権行使書を必ず使いましょう。

既に積極的に組合活動を行っている方は、管理組合を引っ張っていけるようなイノベーターを目指してもいいでしょう。

管理組合運営にはともに活動できる仲間づくりも重要です。

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