タワーマンションの長期修繕計画で発覚したまさかの不足額

さくら事務所では、多くのマンション管理組合から長期修繕計画の見直しのご依頼をいただきます。

実際に第三者に長期修繕計画の見直しを依頼されるようなマンション管理組合ですから、「このままでは修繕積立金が足りなくなる」ということは皆さん薄々気がついています。

ただ実際に見直してみると、こんなに足りないとは思わなかった・・・というのが多くの方の感想のようです。

ここでは、さくら事務所で見直しを行ったタワーマンションの長期修繕計画の実例をマンション管理士が解説します。

新築当初の修繕積立金の設定、さすがに安いのでは?という懸念から見直し

長期修繕計画のご相談にみえたのは、1回目の大規模修繕工事を控えた港区のタワーマンションの管理組合でした。

当初の長期修繕計画によれば、月々の修繕積立金はあたり、100円強。

平均的な70㎡の住戸で、月に7000円ちょっとの負担でした。

新築当初から皆さん「さすがに安いのでは?」という印象もあり、管理会社による長期修繕計画の見直しも定期的に行ってきたようです。

項目の見落としもなく大きな数量の間違いもないように見受けられましたが、問題はその「単価」にありました。

新築時から、それぞれの工事の単価の見直しがされていなかったのです。

1回の大規模修繕工事で1.5~5億円の不足が発覚

大規模修繕工事の施工費用は、さまざまな背景からここ年々上がっています。

リーマンショックで次々と建設会社が経営破綻に追い込まれ、2011年の東日本大震災で増加した需要で人手不足が深刻化。

もともとの高齢化もあり、リーマンショックで現場を離れた職人さんも、現場に戻ることはなく、その後も東京オリンピックに向けて需要は高まっていき、価格が大きく高騰しました。

大規模修繕工事の施工費用も例にもれず、2013年の秋ごろに2014年の消費税増税前の駆け込み需要をきっかけに大幅に値上がりしました。

管理会社としてももちろんそれを知らないことはないでしょうが、15年前の工事の相場そのままで長期修繕計画の見直しをしていました。

現在は高騰する前の2013年の春夏に比べると足場が4割、塗装は2割程度、平均にして20~30%工事費が上がり高値安定が続いています。

ですが、何度も見直されたはずの長期修繕計画も、この値上がりが考慮されておらず、新築当時の工事単価で大規模修繕工事費用を見積もっていたのです。

結果、このタワーマンションでは、1回あたりの大規模修繕工事で1.5~5億円の不足が発覚しました。

月々の修繕積立金、必要額の四分の一しか払ってない?

修繕積立金の金額は、長期修繕計画をもとに算出されますので、長期修繕計画自体に大きな誤算があればそれをもとにした、修繕積立金も不足することが容易に考えられます。

さくら事務所がこれまでに見直した実績から、60年の長期修繕計画をもとに均等積立方式で徴収した場合、タワーマンションであれば修繕積立金は㎡あたり、430円程度は必要と考えています。

今の100円強では、必要な金額の四分の一しか徴収できていないという計算になります。

現在の修繕積立金 ※70㎡
100円×70㎡=7000円

本来必要とされる修繕積立金 ※70㎡
【60年間の長期修繕計画のもと、均等積立方式で徴収した場合】
430円×70㎡=30100円

また、別の考え方をしてみれば、毎月330円/㎡の赤字を先送りしていることになりますので、70㎡の住戸で10年間で先送りした修繕積立金は270万円にも上ります。

10年間で先送りした不足額
(430-100)×70㎡×12×10=2,772,000円

修繕にお金がかかるのは3回目の大規模修繕工事から

更に、その長期修繕計画では3回目以降の大規模修繕工事はまだ入っていません。

マンションで修繕費用が掛かるのは、3回目以降の大規模修繕工事です。

エレベーターや機械式駐車場、給排水設備など、大掛かりな設備の交換も検討が必要になる時期です。

竣工時の30年分の長期修繕計画では、エレベーターや機械式駐車場などの費用の掛かる設備の修繕費用が入っていないこともあります。

それらは、3回目(36年目)の大規模修繕工事に見込まれているからです。3回の大規模修繕工事を終えて、やっとマンション全体に手が入ることになります。

特にタワーマンションは、建物の階数が高くなればなるほど必要な設備が増えるといわれ、一般的なマンションよりも設備の修繕の負担の割合が大きくなります。

3回目以降の大規模修繕工事の負担はより一層大きくなると考えておくべきです。

自身の老後や後の世代に負担を先送りしない

マンションの経年とともに、修繕積立金の不足額はどんどん膨らんでいき、必要になる修繕費用も上がっていきます。

同時に居住者の高齢化に伴い、各住戸の積立金の負担能力は落ちていくでしょう。

年金暮らしになり、増額されたら修繕積立金の負担に耐えられない、なんてこともありうるのです。

将来の修繕積立金不足を薄々感じていた、というマンション管理組合の皆様も、今回の長期修繕計画の見直しの結果、1回当たりの大規模修繕工事で1.5~5億円という金額の不足に、まさかここまでとは思っていなかった、とおっしゃっていました。

「今のままでは足りないのでは・・・?」という根拠ない不安をそのままにせず、長期修繕計画を見直すことで、将来的な不足額をしっかりと把握することが重要です。

自身の老後や後の世代に負担を先送りしないことです。

また修繕積立金の見直しを検討されるのであれば、均等積立方式への切り替えがおすすめです。

お住まいのマンションの長期修繕計画にご不安がある方は、お気軽にご相談ください。


さくら事務所では毎月8日スタート、先着10組合さま限定で、長期修繕計画の無料簡易チェックキャンペーンを実施しています。

①修繕周期は適切か? ②修繕項目の設定は妥当か? ③工事費用の算出根拠は? ④今後、修繕積立金はこのままでいいのか? といった長期修繕計画の基本となる4つのポイントを確認し、その結果を報告、今後に向けたアドバイスを行います。

将来の修繕積立金不足を防ぐための最初の一歩をまずは無料でお試しください。長期修繕計画無料簡易チェック

マンション管理のプロがアドバイス! おすすめのサービスはこちら

九州圏 長期修繕計画見直し(検証・提案)

お役立ちコラム 関連記事