管理会社から修繕積立金の見直しの提案がされたら、あなたのマンション管理組合ではそれを「値上げ」と考えますか?「増額」と考えますか?
もし「値上げ」と考えるようであれば、あなたのマンションは危険水域かもしれません。
今回は、修繕積立金の考え方と管理会社との付き合い方について、マンション管理士が解説します。
長期修繕計画を見直しても、修繕積立金は見直さないマンション
マンションの修繕積立金は長期修繕計画を根拠に算出されています。
国土交通省のガイドラインによれば、マンションの長期修繕計画は5年ごとの見直しが推奨されており、通常、管理会社の提案のもと管理組合の意向によって見直されるのが一般的です。
ですが、長期修繕計画を見直し、結果として修繕積立金が今のままでは不足することがわかっても、修繕積立金の見直しについては管理会社から具体的な提案が行われない、というマンション管理組合があります。
将来必要になるマンションの修繕費用を算出する長期修繕計画ですが、その結果をもとに修繕積立金も見直さないと「長期使用のために修繕の計画をたて、その費用を計画的に積み立てる」という本来の目的が果たせません。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか?
管理会社が修繕積立金の見直しを提案できないその事情とは?
管理会社は、マンション管理組合から管理業務を委託されているのですから、長期修繕計画の見直しの結果、今の修繕積立金で充分なのか?不足は出ないか?金額にどれほどの不足があるのか?を確認し、内容によって修繕積立金の見直しを管理組合に提案する必要があります。
長期修繕計画と修繕積立金の残高に乖離があっても、管理会社から指摘がなければマンション管理組合も気がつくことができないのです。
ですが、管理会社としてはなかなか提案しにくい事情があります。
その理由は「提案すると管理組合に嫌がられるから」というもの。
マンション管理組合には、「増額」や「見直し」という言葉に過剰に反応する人がいます。
中には、「管理会社が儲けようとして、値上げを提案してきた!」なんて言う人も。
管理会社からしてみれば、修繕積立金の増額はあくまで、管理委託業務を任されたマンションの将来のために必要なもの。
修繕積立金を増額することは、マンション管理会社にとっては、直接その利益に繋がるものでもなんでもありません。
(提供されるサービスの対価として支払う、管理委託費とは全く別物です)
ですが、ここを誤解した人が「金額の見直し」の提案に「値上げ、反対!」と反応してしまうのです。
これに対して管理会社では、「修繕積立金の増額に反対されて、管理会社の変更などに繋がってしまうかもしれない」と心配するあまり、修繕積立金の見直しの提案に消極的になってしまうのです。
修繕積立金の見直しは値上げではなく「前向きな取り組み」
先程も挙げたように、修繕積立金はマンションの管理組合が将来のために積み立てる、いわば「貯金」。
月々の貯金額を増やすのに「値上げ」と言う表現は適切ではありません。
「修繕積立金の値上げ」という言葉は、大きな誤解です。
マンションが長く安心して住めるようにするための修繕積立金ですので、金額の見直しは「将来に向けた前向きな取り組み」でもあるのです。
また、マンションの維持管理に必要なお金についてそもそも誤解している方が一定程度いるのも事実です。
定期的なメンテナンスや修繕など、安心して快適な生活ができる建物の状態を長く維持するには、どうしたって一定程度の金額が必要になります。
ですが、「戸建てのようにメンテナンスしなくていいから」とマンションを選ぶ方はまだまだいらっしゃいます。
マンションを適切に管理するためには一定程度のお金が必要になる、という認識はまだあまり浸透していないのです。
「お金がかからないように工夫するのが管理会社の仕事」とすら思っている人もいるようです。
マンションを健全な状態で長く保つには一定程度のお金が必要という認識の上で、修繕の計画や積立について検討するようにするべきでしょう。
「修繕積立金の値上げ、反対!」というマンションはその後どうなる?
管理会社が修繕積立金の「値上げ反対」を恐れて、具体的な提案がされないマンション管理組合は、その先どうなるのでしょうか?
長期修繕計画の見直しの結果、その不足分が判明したまま、必要な増額を先伸ばしにしても、いずれ必要になることはわかっています。いつかは支払わなければならないのです。
積立金の増額は先伸ばしにすればするほど、一度に大幅な増額に踏み切らなければならないという事態を招きます。
増額幅は大きい程、マンション管理組合での合意形成が難しくなるだけでなく、既に現役を退き年金生活されている高齢の方々にとっては死活問題となる可能性もあります。
修繕積立金の見直しに限らず、管理会社にとってさまざまな提案がしにくい雰囲気の管理組合(理事会)は、適切なタイミングで適切な提案を管理会社から受けられなくなるのです。結局は自分たちが損をすることにもなりかねません。
管理会社からの提案には、頭ごなしに反対するのではなく、目的や必要性、緊急性などを含め提案内容は適切なのか?を充分に検討した上で判断にすることが大切です。
そのような管理組合であれば、管理会社も適宜、必要な提案をしてくれるでしょう。
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