2017年1月に、国交省が大規模マンションの大規模修繕工事の談合や悪質コンサルについて、その相談窓口の通知とともに、異例の警鐘を鳴らしました。
これを皮切りに新聞や雑誌などのメディアで、マンション大規模修繕工事の「悪質コンサル」や「談合」が取り沙汰されるようになります。
マンションの大規模修繕工事で行われる談合とは主に、施工会社選定を行うコンサルタントや管理会社が、実はあらかじめ決定している施工会社からバックマージンを受け取り、見積もり金額を操作させることで、かたちだけの入札を行うことです。
大規模修繕工事の悪質コンサルによる談合はその構造から、被害に遭っていても管理組合は気がつきにくく、長年貯めてきたマンションの修繕積立金を知らない間に何千万も無駄にしてしまっていることがあります。
修繕積立金の不足が叫ばれる中、知らぬ間に致命的な損害を被っているマンションもあるかもしれません。
被害に遭わないためにはまずその構造や手口を知ることが重要です。
ここでは、マンション大規模修繕工事の談合のカラクリについて解説します。
マンション大規模修繕工事の談合、バックマージンの仕組み
コンサルティング業務を破格な低価格で委託
マンションの管理組合では大規模修繕工事の発注先を決める際に、設計事務所などに設計管理業務全般のコンサルティングを委託する「設計監理方式」が主流になっています。
委託を受けたコンサルティング会社は、大規模修繕工事着工前の建物の劣化診断、施工会社選定や工事中の施工監理といったものまで、委託者であるマンション管理組合の利益を考え、管理組合をサポートする役割をもちます。
では、問題になっている悪質コンサルはどのように談合を行い、どのような流れで修繕積立金はムダになってしまうのでしょうか。
悪質コンサルはまず、他の競合コンサルタントに負けないよう、常識外に安い費用で設計管理業務を管理組合から受託します。
例えば他社が400~500万くらいのお見積りをだしているにも関わらず、この会社だけ「劣化診断から施工監理まで180万くらいの費用でやります!」と提案してくるのです。
見積り提示金額が安いので、当然、管理組合から受注できる可能性は高くなります。
通常、大規模修繕工事のコンサルティングは1年半、2年くらいかかりますので、これでは会社として生計が立たないと思われるような金額です。
いよいよ施工会社選定!のはずが、既に水面下で決まっていた・・・
コンサルティング業務を受注後、コンサルティング会社は大規模修繕工事の前に建物の劣化状況を確認するための「劣化診断」や「改修設計」を行います。
そして、マンション管理組合は、コンサルティング会社のサポートに基づき、大規模修繕工事の施工会社を公募、各々の見積もりを比較して、施工会社を決定します。
ところが、ここで悪質コンサルの罠「談合」が行われているのです。
つまり、事実上、この時点で既に施工会社選定は決まってしまっています。
本来なら公平に施工会社を選定するサポートを行うはずのコンサルティング会社自らが主導して、どこの施工会社が受注するかを、決めてしまっているのです。
見積もりに参加する施工会社同士で「今回のマンションの大規模修繕工事はAだから、次のマンションのときはBの受注ですね。」という風に、始めからそのマンションの大規模修繕工事を引き受ける会社は決まっており、その会社がちゃんと受注できるように、あらかじめコンサルティング会社により相見積もりが調整されています。
(受注予定の会社が、きちんと選定されるように少し見積り金額が低く設定されており、管理組合の要望に対して丁寧な対応が提案されている様に仕組まれています。)
マンション管理組合としては、もちろん公正な競争と思っていますので、相見積もりの中でも比較的金額の低い施工会社や丁寧な対応をしてきている施工会社に発注することになります。
悪質コンサルは、ここでその報酬(見返り)として、受注する施工会社からバックマージンを手にします。
ここで大きな利益が見込めれば形だけのコンサルティング業務で管理組合からもらう委託料で高額な提示をする必要がないため、そもそもコンサルティング業務を破格で受注することができるのです。
受注する施工会社からコンサルティング会社に流れるバックマージンは、大規模修繕工事の受注金額の15~20%になることもあると言われています。
受注金額というと他人事のようですが、マンションの居住者が何年にもわたって貯めてきたお金「修繕積立金」が施工会社に支払われ、その裏でその一部がコンサルタントに流れていってしまうのです。
結果、マンション管理組合は実際の施工金額にバックマージンをあらかじめ上乗せした金額を支払っているようなものになります。
まだある、施工会社選定の談合の手口
談合の手口は他にもあります。
受注予定会社が劣化診断も改修設計も!
受注が決まっている施工会社が、コンサルティング会社に代わり、劣化診断や改修設計も行っていたという例も国土交通省は通達と合わせて紹介しています。
施工会社選定の前段階から既に、この会社が工事を受注することが決まっていたのです。
受注予定の会社が、他社の分の見積もりまで作成
受注があらかじめ決まっている会社が、「かたちだけ見積りに参加する他社」の見積もりもあわせて作成していた、というケースもあるようです。
今回受注できない施工会社も持ち回りでいずれどこかで受注できることがわかっているので、お任せして「後からはんこを押すだけ」ということになります。
マンションの修繕積立金の残高が施工会社に漏洩している
中には、コンサルタントからマンション管理組合の修繕積立金残高を教えてもらい、その残高にあった「ちょうどいい感じの金額」を提案して受注する、なんてこともあるのです。お財布の中身を知られ、建物の状態から工事が必要と言われれば、マンション管理組合としても支払わざるを得ないでしょう。
あらかじめ予定された施工会社以外の応募がない!は談合の入り口
あらかじめ予定された施工会社以外応募がないという場合も要注意です。
大規模修繕工事を行う業界の中で「どこどこのコンサルが入っているなら、うちは応募しても無駄だから」と、既にその談合の実態を知っていることから、他社が応募してこないのです。
「これ、談合かも!?」と思ったら・・・
大規模修繕工事を進めるにあたり、「もしかしたら談合されているかもしれない!」と思った方からお問い合わせを頂くケースはよくあります。
第三者にまず相談するのがベストですが、その際に気を付けたいのが「計画中のスケジュールに拘りすぎない」こと。
もし今回、談合されていたら、本来の大規模修繕工事費用の15~20%分、割高な出費をしていることになるのです。
今回は切り抜けられても、次回の大規模修繕工事で資金不足に陥る可能性だってあります。
どうしても慌てて大規模修繕工事をしないと・・という状況でないのであれば、始めからやり直す覚悟を決めることも重要です。
まず、不安に思う方はお気軽にお問い合わせください。
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