災害時、マンションの生活⽤⽔を確保するための秘策 

ここ数年多発する地震被害から、最近のマンションでは免振、制振等、地震対策に配慮されたものが多くなっています。

想定外の大災害を除けば、比較的築年数の浅いマンションでは、躯体の損傷はさほど大きくはないでしょう。

ですが、そんなとき、皆さんが直面するのはマンションのライフラインの停止です。

今回は、地震の際に想定されるマンションの設備の被害、その対策についてご紹介します。

液状化で埋設配管が折損!

建物そのものは大きな損傷がなくても、設備配管が折れてダメになってしまうケースです。建物の中での折損もありますが、問題なのは埋設された土の中での折損。

地震の際、地盤が大きく動きます。その動きに耐えられずに、埋設されている配管とマンション内への引き込みの固定された部分が折れてしまうのです。

特に液状化が心配されるエリアは地盤の移動が大きくなりますので要注意です。

対策としては、埋設された配管と建物をつなぐジョイント部分を、フレキシブルな動きに耐えられるものにしておくといいでしょう。接続部がゴムの蛇腹でできていて、動いても折れないようになっているのです。

この工法、最近の免振マンションでは採用されていますが、それ以外のマンションではあまり取り入れられていません。

緊急遮断弁の活用

受水槽に貯留された生活用水を管理組合で計画的に利用するためにおすすめなのが、緊急遮断弁。

地震を感知した際に強制的に断水させ、計画的に水を使えるようにするものですが、建物内で排水管の折損が起きた際にも有効です。

例えば、建物の中で途中で配管が折損するとそこから漏水してしまいますが、緊急遮断弁が働けば貯留水が流れ出るのを防ぎます。

限りある水をムダにしないだけでなく、設置してある場所によっては配管からの漏水で浸水被害をもたらすリスクを避けられますので、ぜひ導入を検討されてみてはいかがでしょうか?

トイレの洗浄水を別系統にする

海外ではトイレの水は全然違う雑俳水を別ルートで取っている国もたくさんあります。ですが、日本は大変恵まれた国で、トイレもお風呂も台所も同じ上水を使っています。

もちろんマンションで、トイレの洗浄のための水が別系統になってはいません。

災害時、問題になるのがトイレの使用。これを解決できるだけでも、ストレスはだいぶ軽減されるでしょう。

そこで、生活用水とトイレの雑排水の系統を災害時には別系統に切り分けられるような仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。

トイレの水だけ、中の配管に異常がなければ外から別系統で送り込むのです。

その際、トイレの水はそれほどキレイな水でなくても問題ありません。川の水でも池の水でも雨水でもいいでしょう。雨水を貯蔵してそれをトイレに使っているという一戸建ての方もいらっしゃるでしょう。それと同じようなことができるようにしておくのです。

とはいえ、給水系統の変更は大がかりな工事になりますので、大規模修繕工事や設備の更新など、配管に係る工事を行う際に検討されることをおすすめします。

連結送水管から水が取り出せるようにしておく

お住まいのマンションでも皆さん、目にされたことがあるのではないでしょうか?

例えば、高層階で火災が起き、消防車のはしごなどからの放水では消火活動に限界があります。そこで、消火活動の際に消防署の方がここにホースをつなぎ、放水活動を行いまうのです。

連結送水管には、あらかじめ水を配管内に張っている「湿式」と、配管が通っているだけで必要なときだけ水が送られる「乾式」のものもありますが、もしお住まいのマンションの連結送水管が湿式であれば、非常時の生活用水としてこの水を活用する手もあります。

飲料水にはなりませんが、トイレに流す水として十分使えます。連結送水管を使えば、各フロアまではトイレ用の水を持ち上げることができるのです。

とはいえ、イレギュラーな使い方になりますので管轄の消防署と事前に災害時、こうゆう使い方も検討したい、と打ち合わせしておくことをおすすめします。


マンションの躯体そのものの耐震化はだいぶ進んでいますが、それにくらべ設備の耐震化はあまり進んでいません。

とはいえ、ライフラインが使えないようでは、災害時、マンションは雨露をしのぐだけのただの箱にもなりかねません。

マンションにお住まいの皆さまは災害時、自助共助の考えが基本になります。ある程度のルールや災害時の対策が整っていればスムーズに連携して動くことができるでしょう。

今お住まいのマンションの災害対策に不安のあるかたは一度、外部の専門家を交え、ご相談されてみてはいかがでしょうか?

お役立ちコラム 関連記事