今検討すべき、マンション駐車場の維持管理

1990年から2000年ごろ、『全住戸 駐車場 付 使用料無料』や『駐車場100%完備 使用料1000円/月~』といった新築分譲マンションの広告をよく見かけました。

購入後に駐車場が必ず利用できる点や、使用料が近隣の賃貸駐車場に比べて格安な点をセールスポイントにしたものです。

当時、新築マンションでは駐車場利用は抽選によって決められることが多く、抽選に外れた場合、外部の賃貸駐車場を利用するしかありませんでした。

それだけに全住戸駐車場付きや格安の使用料という条件は、購入者にとって大きなメリットの一つでした。

マンション収支にひびく駐車場管理費

しかし、この当時に分譲されたマンションで、駐車場をめぐって管理組合が今後の収支計画の目処や方針を立てることができないケースがあります。

長期にわたる健全な維持管理を実施していくためには管理費や修繕積立金を大幅に増額する必要にあるにもかかわらず、使用料の有料化や増額が歴代の理事会で先送りされ続けたのです。機械式駐車場の使用料が無料もしくは著しく定額であると、その後はどうしても料金を上げづらくなります。

こうした背景には、駐車場ニーズの著しい低下があります。分譲後すでに15~25年が経過した現在、高齢化した入居者が車を手放し、駐車場を必要としなくなったケースは少なくありません。さらに、社会現象ともなっている車離れの影響も追い打ちをかけます。

実質的に駐車場を利用しない住戸が相当数増加しているために、利用料の増額が困難になっているのです。

利用者に合わせた使用形態を

こうした場合には、全戸が利用する形態から希望者だけが利用する一般的な形態に変更すると良いでしょう。

空き区画については外部に賃貸するか、賃貸のニーズがなければ駐車場を廃止するといった方法により、収支の改善を図る必要があります。

管理組合の収入は管理費と修繕積立金、そして駐車場や駐輪場の利用料に限られているため、収支改善のためには支出の削減が何よりも大切です。

利用希望者がなくメンテナンス費用の出費だけが続くような事態は、避けなければなりません。

自動車規格の変化も一要因

また、駐車場の空き区画が増加している原因として、入居者の保有する自動車のサイズや重量がマンションの機械式駐車場の規格に合わないというケースがあります。

現在人気のある車種はミニバンやSUV・ワンボックスなどのファミリーカーです。自宅マンション駐車場に空き区画があっても車高や車幅が合わずに利用できず、やむなく外部の賃貸駐車場を利用するという方もいます。

現在の機械式駐車場が3段式や4段式である場合には、パレットの位置を変更することで改善可能です。

3段式は2段式、4段式は3段式となり、駐車可能な台数は減少しますが、高さの制限を緩和して利用者を増やせます。

比較的手ごろな費用で対応できる場合もあるので、駐車場の製造メーカーやメンテナンス業者さんに問い合わせてみると良いでしょう。

機械式駐車場の更新(交換)時期が近い場合、現在の装置を撤去後に導入する装置については、導入台数とともに車高や車幅の規格など居住者のニーズの再確認をおすすめします。

その際、将来的なニーズの方向性にも十分に配慮して頂きたいと思います。例えば高齢化が進んだマンションでは、車いすなど介護機能の付いた自動車の利用などが見込まれます。

また、現在分譲されている新築マンションの中には、電気自動車の普及に伴い充電装置が設置されている物件があります。

既存のマンションでも駐車場の利用を見直す場合には、検討の余地があるでしょう。

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