老朽化マンションの出口戦略 -その3

建て替えが困難な場合、残された選択肢は?

前回までに、分譲マンションで現実的に建替えが可能な物件はごく一部に過ぎず、ほとんどのマンションでは、建替えが困難であるというお話をしました。

今回は、それを踏まえて、マンションを維持管理する上で他にどのような選択肢があるのか考えてみましょう。
建て替えることが困難である場合の残された選択肢は、大きく分類すると

①建物の利用期間を100年以上とすることを目指し、長寿命化の改修工事を行い快適に住み続ける
②建物の利用期間を60~70年程度と割り切り、区分所有を解消して土地を売却、所有者は売却代金の分配金を受け取る

という方法の二者択一となります。

長寿命化か?区分所有法の解消か?方針を決める

まずは、方針を決定する時期について考えてみたいと思います。

一般的なマンションでは、大規模修繕工事の周期を12年から15年程度として、長期修繕計画が作成されているものと思われます。
計画通りに大規模修繕工事が行われるとして、2回目の大規模修繕工事の実施時期は24~30年頃、3回目の大規模修繕工事の実施時期は36~45年頃ということになります。

理想的に言えば2回目と3回目の間に長寿命化による改修工事を行い、利用期間を100年以上とするか、区分所有を解消して敷地を売却するかの方向性について検討し、方針が決定されることが望まれます。

随分と気が早い話だと思われる方があるかもしれませんが、仮に長寿命化の改修工事を選択した場合、工事に要する費用は少なくとも一般的な大規模修繕工事費用の3倍から4倍程度必要になると考えられますので、資金の準備には15年~20年程度の期間が必要になります。

言い方を代えれば、長寿命化の改修工事を行うためには、3回目の大規模修繕工事の実施時期頃までに方針が決まり、資金準備のために積立金を大幅に増額していなければ現実的ではないということです。

早期決断が鍵!長寿命化に向けた改修工事

建替えることなく快適に住み続けるための長寿命化を目指した改修工事では、構造躯体、断熱性、防火などの安全性、給排水設備、その他の共用設備などを対象として工事を行います。
実施する時期は、45年目から55年目頃までを目安として計画すれば良いと思います。

大切なことは、コンクリート躯体の耐久性向上や防火や避難などの安全性、給排水管の交換などと合わせ、玄関ドアやサッシなどの断熱性を高めることにより快適性の向上、通信インフラなども時代にマッチした状態にすることです。
こうしたことによって、若い世代の方々が住まいとして選んでくれるようになれば、管理組合の運営も活発になりスラム化を防ぐことができるのです。

また、所有者が自ら居住せずに賃貸物件として運用する場合でも、長寿命化改修を実施することにより空室となるリスクを大幅に低減させることができるだけでなく、賃料についても同様に改善できるようになります。

次回は、区分所有を解消して土地を売却する選択肢について考えます。

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