【実例紹介】大規模修繕工事着工後に発見される不具合事例 その2

今回も前回に引き続き、実際に頂いたご相談の事例をご紹介します。
前回は、ご相談にいらした経緯についてのお話でしたが、今回は実際の調査内容とどのようなご提案をさせて頂いたか、についてです。

通常のタイル浮き比率2~3%のところ、30~40%も!

足場からの調査では、施工会社が行った外壁打診調査の報告書を基にして、大きな面積で浮いている箇所やタイル仕上げが膨らんできている箇所などを中心に確認します。

今回のケースでは、バルコニーの手すり外側に張られているタイルが広い面積で浮いてしまっていました。

階による大きな違いはありませんが、建物の方位による違いは明らかでした。
具体的には、南側と西側の外壁は1階から最上階までタイルが浮いていますが、北側と東側は浮きが少なく、特に北側についてはほとんど浮いていない状態です。
こうした現象は、外壁タイルの不具合としてよく見られるものですが、おもに太陽の日射による影響が原因であると考えられます。
バルコニー手すりの外側で、概ね30~40%のタイルに浮きが見られました。
一般的に、築後10年程度を経過した建物の外壁タイルの浮き比率は2~3%とされていますから、相当高い比率で浮いてしまっていることがわかります。

この一般的な比率をもとに、第一回目の大規模修繕工事の見積書では、外壁タイルの5%程度に部分張替やアンカーピンニング樹脂注入工法による補修工事が必要となることを前提に費用を見込んでいることが多くなっています。
ですが、大規模修繕工事の計画段階で、劣化診断(足場を架けずに通常に歩行できる範囲を対象)を実施した場合は、その結果によって7~8%程度のタイル補修費用を見込むことも少なくありません。

早急な結論を求められる管理組合

しかし、今回のように、通常歩行可能な範囲での調査では確認することができない大量のタイル浮きなどが発見されたケースでは、当初予算計上された補修工事費用(予備費を工事総額の10%程度見込んでいた場合でも)だと対応することは困難になります。

改めて、管理組合の臨時総会を開催し①補正予算について可決するか、②修繕積立金などの資金が不足し予算計上できない場合には管理組合として資金の借り入れを行うか、③予算に合わせ補修範囲や補修方法を限定された範囲にとどめるかなど、急ぎ検討し結論を出さなくてはなりません。

調査終了後、理事会・修繕委員会への提案

よって、ひと通りの調査を終了し、さくら事務所から理事会・修繕委員会の皆さんに以下のようなご提案をさせていただきました。

1) 大規模修繕工事の施工会社による外壁タイルの打診報告書と、本日の調査報告書を合わせて分譲会社・元施工会社に宛て不具合の具体的内容について知らせると共に、早急に現場を確認の上、補修対応の可否について回答を求めることを通知する。

2) 大規模修繕工事の施工会社に対し、補修工事が必要な範囲、方法ならびに費用と工期などについて急ぎ提案を求める。

3) 大規模修繕工事着工後に発覚した、外壁タイル不具合について速やかに管理組合の皆様に対し説明会を開催する。

結果として、理事会・修繕委員会が協議の上、上記提案をすべて実行することが決まりました。

次回、ついに分譲会社・施工会社とのやりとり、その結末に続きます。

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