年末年始特別コラムとして、長嶋修最新刊「100年マンション」発売記念に10月に行った「イニシア千住曙町」の名物理事 應田治彦氏とさくら事務所マンション管理コンサルタント土屋輝之の対談の模様を3回に渡ってご紹介します。
今回は、修繕積立金を均等積立に移行した経緯、長期修繕計画の見直しをさくら事務所に依頼した理由について伺っています。
最初からお読みになる方はこちらから・・・【特別対談】名物理事がマンション理事のリアルを語る!第1回
「均等積立」はマンションの良好な管理のスタートライン
土屋:私たちもいくつかの管理組合さんで均等積立方式への移行のサポートさせていただいているんですけども、イニシア千住曙町でもかなり早い時期に修繕積立金を段階増額方式から均等積立方式に移行されてるんですよね。
ほぼ組合の皆さんの力だけで均等積立に移行されたと伺っていますが、実際どうだったんでしょう?
應田:その時は管理士事務所とか入れていましたけど、積立金の増額というのは理事会だけで4期目にやりました。
土屋:今私たちがお手伝いさせていただいている管理組合さんで3期目で均等積立に移行したっていう大規模マンションがありますけども、4期での達成というのは当時は前例がないでしょう。
修繕積立金の均等積立への移行って、マンションの良好な管理のスタートラインというか、管理良好なマンションの前提条件と考えているんです。
これができてないとそもそも財務体質が不透明だよねってお話しています。
均等積立に移行されたとき、一番苦労したところ、印象に残っていることがあれば教えてください。
應田:理事会で均等積立にしようと提案したときは、住民が一人も知らない状況でしたが、2か月で90%以上の賛成を得て通っているんです。
とにかく状況を正確に伝えればわかってもらえると考えて無数に説明会などはしましたが、反対意見の人に苦しめられるような苦労はなかったんです。
「まず管理費を削って均等積立金にしたらいいじゃないか」という意見もありますが、日々の生活に使う管理費とお財布に貯金していく修繕積立金、一緒に考えるのはおかしいでしょう。だって全然違うものなんだから。
また、「今我々は月1万円しか払っていませんが、これからどんどん増額していって、年金生活者になった頃に3万円払えますか?厳しくないですか?」と説明して「そうだよね、無理だよね」って。
そういう意味では苦労したっていう印象はないんですよ。
土屋:イニシア千住曙町は一年目から非常に積極的に管理コストの削減に組まれていますね。
管理費の削減と積立金の増額を表裏セットにして進めるっていうケースが多いんですけれど、その辺はあまり意識してやっていらっしゃらなかったということですよね?
應田:積立金額って値上げするのにいい時期って5年目前後しかありえないんですよ。
10年目近くになると、「1回目の大規模修繕工事が済んでからその結果を参考にして値上げしよう」という人が必ず出てくる。
1年目2年目だとまだ管理組合に対する信用がないから難しい。
たいてい5年経過したところで一回目の値上げをすることになっているので、その時に一気に均等積立に移行しました。
管理費の削減もまだ途中でしたが、「管理費側はこれからもやりますけども、まず積立金の不足の問題を解決しましょう」という形にしたんです。
土屋:いつも組合の方にお話しをさせていただくときに、マンションにお住まいの方にとって管理費と積立金って税金みたいな感覚ですよねってお話しています。
積立金の増額ってまさしく増税に相当するものだと思うんですが、増税するときって今納めている税金ちゃんと使っているのか?っていう禊をしろみたいな話がついて回ると思うんですよね。
イニシア千住曙町では、まずは積立金の増額をさせてもらって、引き続き管理費についてはコスト削減の努力を鋭意続けますと、そういう流れということですかね?
應田:それまでに1500万くらい管理コストのダウンに成功していたからそれなりの信用があったと思うんです。
実際に修繕積立金って12年目まで鉄部塗装するくらいで最初はほとんど使わないんですよね。
だから、実際に使ってみるとか、安く済ましたところを見せるとか無理なんです。
かといって、「じゃあ大規模修繕工事やってから足りない額を増額」なんてやったら出遅れてしまう、それは避けたかった。
土屋:やっぱりそこで1500万の管理コストの削減の実績があったということが理事会への信頼を勝ち得た大きな理由だったってことですかね。
應田:積立金を上げるためにまず管理費を削減してその金額だけ積立金に回したうえで、足りない分を上げるっていうと結果として管理費の一般会計って収入と支出が同じになっちゃうんですよ。
私は黒字を残したかったです。今毎年1500万くらい黒字になるんですが、それがないと植栽がだめになったりしたときとか、グレードアップの工事とかできなくなってしまうんです。
積立金の均等割移行の後で管理コストを削減した分は組合の黒字になるようにしています。
今まさに、長期修繕計画見直し中
土屋:今まさに、長期修繕計画の見直しさせていただいているんですけども、さくら事務所の長期修繕計画の見直しってちょっと特徴的で、「管理会社と管理組合とコンサル会社が席を交えて修繕積立金について協議をしながら、一つずつ項目の洗い出しをおこなって精査して、最後の成果物はコンサル会社が作成するのではなく従来通り管理会社さんから出てくる」というかたちなんです。
長期修繕計画って管理会社さんから切り離したらいけないものだ、という認識のもとにこの形態を考えたんですけど、最初はご理解をいただくのが難しかったです。
最近はありがたいことにこの方式の見直しにご注目いただいてるんですが、わたくし共が選ばれた理由、ちょっと照れくさいんですけども・・何が良かったのかを教えてください。
應田:さくらさんが選ばれた理由は管理会社とあんまりケンカしないというか管理会社と今仲が良いという、うちのマンションにとてもフィットしていると思いました。
これまでにも、面積とかも積算して一応データは持っているんですよ。でも大丈夫かなっていう不安もある。
だからプロに見直してもらって3者でサッてやりましょうっていう提案がとても斬新だったんです。
あと管理会社を追い出してゼロから作りますっていう方がずっと高くついちゃう。コストパフォーマンスがいいっていうのも理由でした。
もう一つはうちの管理会社は毎年長期修繕計画を更新してくれるんです。さくらさんにあずけておいて毎年更新しろといったらお金かかりますよね。
管理会社さんにお金払ってるわけですから、その分ちゃんと働いてもらおういう考えもあります。
土屋:私たちがサービスを組み立てた動機がそのまま受け入れられたということで非常にうれしいですね。
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