近隣づきあいの多い戸建てとは異なり、隣に住んでいる人がどんな人かわからないといったケースもままあるマンション住まい。
ですが、万が一のときに頼りになるのは隣近所のひとかもしれません。
災害時、行政の組織的な救助が機能するまでには時間を要します。地震直後には警察や消防・管理会社など外部から、救助や支援がないことを前提に考えなければいけません。
では、その間、自分たちでどれだけのことができるのでしょうか?
災害時こそ、マンションのコミュニティの力が問われます。
今回は、災害時に備えて知っておきたいマンション居住者の安否確認方法について解説します。
安否確認のためのマグネットシート
災害時、居住者の安否確認は管理組合として欠かせません。
建物に大きな損壊はなくとも、動けない人が室内に残されているかも知れません。
お年寄りや小さなこどもなど要援護者たちは優先的に安全を保護する必要があるでしょう。
安否確認というと、各住戸を回る「声掛け」がスタンダードですが、タワーマンションなどの大規模マンションの場合、大人数を動員して行わないと、全戸確認するまでに相当な時間が掛かってしまいます。
2~3時間の間に全世帯ノックして回るのは現実問題として難しいかもしれません。
「その間、家具の下敷きになった人が放置されていた」なんて可能性も出てきます。できるだけ早急に安否確認を行う必要があります。
スムーズな安否確認を行うため、居住者が自分たちで意思表示できるような仕組みを作っておくことをおすすめします。
例えば、市販されている安否確認用のマグネットシート。
居住者は「救助求む」「無事です」といった安否を示すいずれかの面を表にして、各住戸の玄関にそれぞれ貼って使います。
無事であれば、玄関ドアに「無事です」を貼って、そのまま待機します。家
族の誰かが家具の下敷きになってしまった、高齢者がいる、といった場合「救助求む」を貼っておきましょう。
居住者側から各自で安否を発信することで、マンション全体の安否確認がスムーズになります。
マンションの防災対策として問題になるのが「居住者名簿」
現在、ほとんどのマンションで個人情報の観点から、理事会や委員会が利用可能な居住者名簿がありません。
管理会社で作成・所有しているものもあるかと思いますが、マンション管理会社は個人情報の扱いには大変デリケートです。その居住者名簿は、原則、理事会での利用はできないでしょう。
また、仮に管理会社の作成したものを利用できたとしても、災害時に利用することを想定した必要事項が網羅されているかどうかはわかりません。
ですから、管理組合が主導して安否確認を目的とした防災対策用に名簿作成することが急務です。
全戸分が理想ですが、プライバシーを表示することに抵抗を感じる居住者さんもいらっしゃると思います。
まずは、ご協力頂ける世帯の分から始めてもいいでしょう。
居住者名簿に必要な情報は?
居住者名簿に書いておくべき事項はこのようなことです。
□ 氏名
□ 性別
□ 年齢
□ 勤務先(通学先)
□ 連絡先
□ 血液型
□ 緊急連絡先
□ ペットの飼育の有無
※特定の場合に必要な情報
□ 介護や支援など、必要な内容
歩行が困難なのか、もしくは寝たきりで避難に担架などを要するのか等
□ かかりつけの医療機関など
介護が必要な家族がいることを積極的に組合に提示するというのは、抵抗があるという方もいらっしゃいますが、その抵抗を超えることでそのご家族の身の安全につながると考えてもらえるようになるといいでしょう。
管理組合でしっかりとご説明をして、その重要性をご理解いただいた上で、名簿作成に1軒でも多く協力してもらえるようにしましょう。
居住者名簿の作成とその保管の注意点
では、どのような点に注意して居住者名簿を作成すればいいでしょうか?
作成する際は、必ず紙媒体で作成しましょう。停電が長く続いて、パソコンが開けないということもあるかもしれません。紙媒体を基本とし、データ媒体(CD、DVD)は避けましょう。居住者に書いていただいた用紙をそのままファイリングしたものでいいでしょう。
作成した居住者名簿は、災害時以外の利用(閲覧)は禁止して、厳封して管理室に保管しておきましょう。
また、本当に開封されていないのか年に一度、総会などの席上で確認することをお勧めします。
厳重に保管されていることを皆さんに周知しておくことで、名簿作成にご協力いただける住戸も増えてくるかもしれません。
更新は1~2年程度に、内容に変更が生じた居住者の希望により差し替えてもらいましょう。
記入いただく用紙を管理組合総会で配布、若しくは総会の案内の際に一緒に配布し、変更・差し替えの必要がある世帯に関しては、総会当日にお持ちいただくかたちでもいいでしょう。
こういったことを習慣化することで、実態に沿った、災害時に本当に役に立つ居住者名簿が作成できます。
お住まいのマンションの防災対策に不安、より質の高いものにしたい、見直したい、とお考えの際は、他の多くのマンションの事例を知る外部の専門家にアドバイスしてもらってもいいでしょう。
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